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魔女の呪い - 各国の褒賞

 魔女の呪いの薬が出来てからリア経由で薬が配られいい感じに世界に広まっていた。


 今年の1の月には魔族大陸で魔女の呪いに罹っている方に薬が行き渡りすべての人が問題なく完治に至ったらしい。

 そして魔族大陸の成功を見て2の月には人族大陸にも薬が配られることになり各国の王家が主導し無料で対応することでその時点でわかっている限りの病人は全員完治したらしい。

 

 現在は3の月に入っているのだが、オレはルベルバック王国のお城の一室でファイゲンベルト国王とルーティーナ女王の二人と話をしていた。


「あの……オレは何もしていないんですが」

「またまたヒーロさんご冗談を。わかっていますよ、ロリアデラ様の恋人のヒーロさんが何もしていないわけないじゃないですか」


 魔女の呪いの薬の件でオレはルベルバック王国から呼び出されていた。


「だとしても、何もいらないですよ」

「そういうわけにはいかないんですよ。巷ではあの病気の薬にロリアデラ様の恋人である人族が関わっていると噂になっています。人族が関わっているとなると国として何かしらしないと少なくとも貴族が口うるさくてね」

「なるほど……」


 一般の国民は噂程度だからいいけど貴族に関しては口出ししてくる人がいるのか。まあ全員が性格のいい貴族ばっかりじゃないだろうから仕方ないのかな。

 オレが褒賞の件をどうかわそうか考えているとルーティーナ女王のほうがオレのほうを向いた。


「というわけで、ヒーロさん」

「はい?」

「ジーアンナはいらないですか?」

「はあ!? ジーアンナさんですか?」

「あの事件以来、近衛騎士団に入れて一から鍛えなおしました。金遣いとかは普通になっているのでいかがでしょう?」

「いやいや、本人の気持ちもありますでしょうし自分はちょっと……」

「あの子はスタイルもいいし、我が娘ながら見た目もいいのでヒーロさんを満足させられるかと」


 母親がそういうこと言っちゃダメな気がする。


「自分は恋人も十分いますしジーアンナさんに関してはオレはちょっと遠慮しようかな……」

「やっぱりブールトワ王国のミュー王女を取るんですか!?」

「えっ……いやミューさんも取らないですけど」

「ミュー王女は最近ヒーロさんに娶ってもらうと言いふらしているようですよ」


 相変わらずあの人は面倒ごとばっかり増やして。


「それは本人が言ってるだけで娶る予定もないです」

「そうですか……」

「ルーティーナ、ヒーロさんの気持ちもあるだろうからその辺にしなさい」

「はい……」

「ただヒーロさん、何かしらはしたいのですがどうでしょう」

「そうですね、であればお金で大丈夫ですかね? 額は少なくてもいいので」

「それが無難ですね。わかりました、用意させます」


 そしてオレはルベルバック王国からお金が入った袋をもらって家に帰ってきた。


「ヒーロさん、お金持ちですわ」

「いやオレは少なくてもいいですよと言ったんだけど……」


 オレの目の前には合計で3億リシアが入っている袋があった。


「お金に関してはあっても困らないからいいんだけど、こんなにもらっても使い道がないんだよな。それにインベントリに入れておいても邪魔だし」

「ヒーロよ、それであればダンジョンコアに入れておくか?」

「えっ、お金もコアに入れられるの?」

「もちろんだ。しかも必要なときに必要な分だけ取り出せるぞ」


 ダンジョンコアってATMみたいな使い方もできるのか。


「それじゃお願いできるか」


 こうしてルベルバック王国についてはお金をもらうことで魔女の呪いの褒賞の件は何とか落ち着いた。

 そして問題となるのが次である……オレはこの翌日にブールトワ王国を訪れていた。


 いきなり王家の方に会いに行くのは気が引けたのでとりあえず訓練場にいるゾフィさんのところに来た。


「ゾフィさん、こんにちは」

「ヒーロさん、こんにちは! 聞きましたよ! もうヒーロさんのほうが勇者みたいですね」

「ははっ、実際オレは大したことはしていないんだけど……」

「一時期は皆さんヒーロさんの話題で持ち切りでしたよ」

「その時に来なくて良かったよ」

「お城の中にはヒーロさんを狙っている女性が多いですから気をつけてくださいね」

「皆さんってミューさんたちだけじゃなくて城の中の女性陣のことなのか……」


 ブールトワ王国は女性優位の国だからお城の中も女性の割合が高いから結構な数の女性がいる。

 前世のオレからしたら考えられないぐらい羨ましい状況だけど、これ以上恋人が増えても一人一人の時間を作ったりするのが難しくなるからどうしても断るしかない。


「あっ、ヒーロさん。あの……ダーヴァさんってどちらにいるかわかりますか?」

「ダーヴァか……」


 ダーヴァはいまだに世界を放浪しているけどゾフィさんがかわいい女の子に成長したからここに来ることがなくなったんだよな。


「えっと、ちょっと待って――――――ああ、グラストル王国の北、ここはたしか獣人の里あたりかな……」

「ナウエですね! わかりました、さっそく行ってきます」

「えっ!? いまから行くの?」

「はい、待ってられないのでこちらから会いに行きます!」


 ダーヴァもいい子に好かれたな。ただ本人が変な趣味を持っていることだけが問題だけど。

 

 オレはゾフィさんと別れ女王のエリノエルさんに会いに行くため謁見の間に向かった。

 謁見の間にはエリノエルさんだけが女王の椅子に座っており他の王族の方はいなかった。


「ヒーロさん、この度は来ていただきありがとうございます」

「エリノエルさん、自分は何もいりませんよ」

「ふふっ、まだ何も言ってませんよ。ただルベルバックからは受け取られたみたいですから我が国としても渡さなければいけません」


 くっ、昨日の今日でもう話がいっているのか。


「それでは少額のお金で結構です」

「ふふっ、ヒーロさんは何を急いでらっしゃるんですか?」

「えっ、いやぁ……嫌な予感がしているんで早く帰ろうかなって」

「ヒーロさんにはこちらを用意しています――――入りなさい」


 エリノエルさんが合図をすると王女の2人ニーチさんとミューさんが物凄く豪華なドレスを着てさらに化粧もしっかりした状態で現れた。

 はぁ、気配で2人が隠れていることが分かっていたから早く帰りたかったのに……。


「ヒーロさん、私を含めてどうぞ」

「いや、どうぞじゃないんですけど!? というより、少なくともエリノエルさんはダメでしょ!」

「私は未亡人です。まだまだ若い者には負けませんよ」

「国王に申し訳ないんで遠慮しておきます」

「くっ、やはりですか……」

「ヒーロさん! 今までアピールしてきたんだから少なくとも私はもらってくれるよね」

「ちょっとミュー、第一王女の私が先でしょ!」


 ルベルバック王国もそうだったけどなぜ王女を渡そうとする。


「えっと、ルベルバック王国でもジーアンナさんを断ったのでこちらも物のほうがいいかなって思うんですけど」

「あの国め、ヒーロさんにあんな見た目だけの女を渡そうなんて」

「ミュー、あなたも見た目だけよ」


 この人たちのやり取りは傍から見てると面白いんだけどな……。


「だから自分としては深淵の姫真珠ディープ・クイーン・パールで結構ですよ」


 深淵の姫真珠ディープ・クイーン・パールはおそらく紫龍さんの涙から出来ていると思うのでナーナさんに言えば手に入ると思うがこの場を収めるためには以前もらった優先権以上を要求するかない。


「それでニーチさんとミューさんに関してはとりあえず友達からでどうですか?」

「えっと、私友達じゃなかったんだ……」

「ミューさんは一応王女ですからね」

「今まではミューほどヒーロさんと関わってきませんでしたからこれを機会にお近づきできるのであれば私としてはそれで構いません」

「くぅ、私もいったんは我慢するか。絶対にお姉様より先にヒーロさんと愛し合うんだから」

「負けないわよ、ミュー」


 こうしてオレは実物はもらっていないが薬の功績の褒賞をブールトワ王国からも無事に受け取ることができた。
















 魔女の呪いの薬の功績を称えるため人族であるヒーロにブールトワ王国とルベルバック王国から褒賞が渡された。

 そしてその後しばらくしてグラストル王国でも褒賞を渡すため王城では爵位の授与式が行われようとしていた。

 

 授与式が行われる王城の大広間には王族が勢ぞろいしており、今回授与されることになったヘルミー・ハウラプトが王族の前で片膝をついて跪いていた。

 爵位の授与式で王族が勢ぞろいするのは珍しくヘルミー1人に全員が出席するのは異例のことだった。


(うぅ、わたくし何もしていないのですが……)


 ヘルミーはヒーロから説得されこの場にいた。


「ヘルミー・ハウラプト、貴女には男爵を授与する」

「はっ! ありがとうございます」


 司会をしている男から男爵の授与が言い渡されヘルミーが了承すると、国王自ら話を始めた。


「ハウラプトよ、魔女の呪いの薬の完成とあれば世界全土に貢献したと言える。本来であれば男爵ではなくもっと上の位を渡すのだがな」

「いえ、十分でございます。あの、失礼ながらお伝えしないといけないことがあるのですがよろしいでしょうか」

「うむ、よいぞ」

「魔女の呪いの薬に関してですが、わたくしは関わっていないのですが……」

「はっはっはっ、せっかくの爵位の授与というのに正直に申すか」

「も、申し訳ございません」

「よいよい。実はそのことに関してはロリアデラ様から聞いておる、だから何も気にすることはない」

「で、では、どうしてわたくしに」

「お主は自分で手柄をたてないと爵位がもらえないと思っておるのか」

「…………」

「夫婦と同じように考えればわかりやすいだろう。お主はヒーロ殿の恋人であろう、その時点でお主は爵位をもらう権利を有しておる。それにお主はヒーロ殿との縁が出来た時点で他の者では届かないところまできていたのだ」

「では、ヒーロさんにも爵位は?」

「ま、まあ、それをしてしまうと我が国が消えてしまうらしいからの、それはちょっとできないな」


 ヘルミーの問いに国王だけでなく周りの王族も全員苦笑いをしている。

 実際ヒーロの扱いに関してはロリアデラが先回りで各方面に面倒にならないように手を打っているのでロリアデラが許可しないことはヒーロまで届かなくなっている。


「とにもかくにも、お主の持つ縁は物凄いということだな。今後もその縁を大事にするのだぞ、そして我が国に何かしらで貢献してくれれば我々も嬉しい限りだ」

「はっ、承知いたしました」


 こうしてハウラプト家は改めて男爵を授かることになりグラストル王国の貴族に戻ることになりヘルミーの目標が達成された。

 授与式を終えたヘルミーは王城から家に戻りヒーロと2人きりで話をしていた。


「わたくしは魔女の呪いになったことでヒーロさんと出会い、そしてヒーロさんたちが魔女の呪いの薬を完成させたことで貴族に戻ることができました。魔女の呪いがあったから今のわたくしがいるというのは何とも表現しづらい気持ちですわ」

「何が縁になるかなんてわからないよ。それに今度はヘルミー自身の力でもっと上の爵位をもらえるように頑張ればいいんじゃないかな」

「そうですわね」

「ところで貴族って何かしないといけないの?」

「いえ、何もいたしませんわ」

「えっ?」

「本来であれば王都に居を構え何かしらするのでしょうが、わたくしの場合はヒーロさんのところで今まで通り生活していればいいと言われましたわ」

「へぇ、それでいいんだ」

「わたくしがヒーロさんといると自ずと王国にも利があるということでしょうね」

「そういうもんか」


とりあえずこれでヘルミーの夢が叶えられました。

次から短めですがこの作品の最後の話になります、ヒーロの恋人で唯一まだ枷がある子がいますがそれを解決します。

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