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転生と知識の整理

 たしかオレは死んだはず。家で仕事をしていて息苦しくなって死んだような気がする。

 あと、さきほどからなぜか目の前にものすごく美人な女性が立っているのだが……この状況がよくわからない。


「はじめまして、地球の方。私はクラリシア、このセントリムの創造神になります」

「創造神? あの、自分はどういう状態ですか?」

「あなたはいま魂の状態です」

「そうですか、やはり死んだわけですね。オレはなぜここにいるのでしょうか」

「あなたには私が作った世界セントリムに転生して世界の整理をしてもらいたいの」


 地球とは異なる世界か……これって異世界モノで良くあるパターンかな。


「神様はむやみに介入できないからとかですか?」

「えぇ、察しが良くて助かります」

「ちなみに整理するというのは?」

「この世界は混沌としています。争いが多く世界へのダメージもあり、また同族でありながら侵略などが頻繁に行われています。今までは、生物がある程度集まれば仕方ないと思っていましたが、私としてはもう少し穏やかな世界であってほしいのです。そのため、争いなどを減らすような整理を行っていただきたいとあなたを呼び出しました」


 創造神様が目的を説明してくれたが……全然、具体的じゃない! 「争いなどを減らすような整理」って何? 仕事としてゴールがふんわりしてるからダメなやつな気がする。


「なるほど……なかなかアバウトですね」

「申し訳ありません、具体的にどうすればいいというのがなくて」

「この世界は魔物とかもいるんですか?」

「そのあたりの基本的な知識はいま与えます」


 創造神様が指を軽く振るうと、今まで知らなかったことが頭に入ってきた。――――なるほど、これは助かるな。地球の科学の代わりに能力というのがあるのか。同族や種族間の争い、ダンジョンとかもある。よくある異世界モノのような気もするけど、この神様的にもう少し穏やかにしてほしいってことなのかな。


「ありがとうございます。この世界の基本的な知識は頭に入ったと思います。この仕事の期間ですが、死ぬまでにという感じですか? それとも何年以内とか?」

「あなたが死ぬまでで問題ありません」


 とりあえず仕事の期間はOKと。基本的な知識はもらえたからあとは能力周りがどうなるかだが。


「すいません、能力とかはもらえたりしますか?」

「言葉や生活魔術などは使えるように、また能力は優れたものを与えておきます。あと、名前はヒーロ。体ですが、15才ぐらいに転生させます。転生後はある程度の期間そこで問題なく暮らせるようにしておきましょう」

「お気遣いありがとうございます。なるほど、ヒーロですか。家族とかはいない状態ですね。まぁ、目的がそれだとそのほうが動きやすいかもしれませんね」


 経験上、ゴールがふんわりしているような仕事は受けたくないが、もともと死んだ身このまま消えるという選択肢はないから転生するで問題ないかな。あとはなるようになるで大丈夫でしょ。

 趣味もなく仕事ばっかりしてたら40でポックリ、ようやく人生終わったかぐらいの感じだったけど死んだ先でも仕事するとは本当に何があるかわからないな。


「ほかに聞きたいことなどあれば質問していただいてかまいませんが」

「それでは、なぜ私が選ばれたのでしょうか? たまたまですか?」

「地球の神に依頼したところあなたが選ばれました」

「そうですか……」


 地球の神様ってどの神様だろう? 八百万の神様だったらかなり多いけど、どの神様に選ばれたか気になるな……。


「あの、地球のどの神様に選ばれたんですか?」

「創造神です」

「ん? 地球に創造神という神様が具体的におられたのですね」

「おそらくあなたが知っている神は人族に伝わっている限りだと思います」

「なるほど、そういうことですか」

「もし他に質問がなければそろそろ転生させてもよろしいでしょうか」

「う~ん、まぁ、そうですね。とりあえずいろいろとありがとうございます。転生お願いします」

「いえ、こちらこそ巻き込んでしまって申し訳ありません。では、転生させます」


 創造神様が魔法陣のようなものを出し、それに自分が吸い込まれていく――――始まるのか新しい人生が。


「それではお願いしますよ、ヒーロ」


 オレが魔法陣に吸い込まれたあと徐々に意識が消えていこうとしていた。

 

(痛った! 今の何?)

 

 意識が消えかけていたが、突然【何か】に刺されたような痛さを感じた。体を形成するときに起こる痛みとかかな…………。










「ん……」


 目を覚ますと家の天井が視界に入ってきた。ここは家の中か……問題なく暮らせるとは言ってたけど家までくれたのか? とりあえず起きて状況整理からかな。

 起きてあたりを見渡すとベッドのみがある部屋だった。自分は……良かった裸ではないな。きちんと服まで着てる、ロングパンツにTシャツ、下着もか服一式はありそうかな。


 体の調子も良さそう、何より軽い! これが15才か……懐かしいな。よしっ、とりあえず家の中調べますか。

 寝室から出て家の中を調べていくと間取りは1LDKぐらいだった。――食料も置いてあり、魔石を利用した冷蔵庫もある。――水周りは魔石に魔力っぽい力を込めると地球とほぼ変わりなくいける。創造神様からもらった基本的な知識と生活魔術のおかげで生活する分には当面問題はなさそうだな。


 家を一通り確認したあと、リビングっぽい部屋に机とイスが4脚置いてありそのイスに座ると、机の上にB6ぐらいのサイズの丈夫な紙が伏せてあることに気づいた。

 これは何かな……これって、オレの名前が書かれてるけど――もしかして、これ冒険者カードか!? あの創造神様、異世界モノの定番かつ重要な冒険者登録のイベントまで済ましてくれてるぞ。イヤー、シンセツダナー。

 

 ま、まぁとりあえず、自分のチェックをしよう。能力は――――な、何かわからない。どうしようかな、何の能力が使えるかってかなり重要な気がするけど。もしかしてお決まりのアレ言うとわかるとか……。


「ステータスオープン!」


 オレがそう言うと、しばらくの間静寂が続く。


「ですよね……知識にステータスとかなかったからね」

 

 結局何の能力を持ってるのかわからないな、とりあえず先にこの世界のことを整理するか。


 この世界は獣人、エルフ、ドワーフを含む人族、妖精・精霊族、魔物、魔族、神族が存在する。大陸は人族・魔族・神族と分かれていて、人族と魔族の大陸間の移動には転移門を使用するのが普通、神族の大陸には行くことができない。妖精・精霊族は人族・魔族の大陸のどこかにおり、魔物はどちらにも存在する。

 魔族と魔物の違いは知能の差であり簡単に言えば会話ができるかどうかで見るのがわかりやすいらしい。また、魔族は人族、妖精・精霊族、神族以外のことを指し体のつくりが人族のものと異なるケースがほとんどとのこと。

 能力は、剣術や格闘術、魔術などがあり、生活魔術や基本的な魔法はだいたいの能力者が使えたりするが、本格的な魔法は魔術の能力をもっているものが使う。また、この世界では能力者の力を魔力とは呼ばず「気力」と呼んでいる。

 さきほど家のチェックのときに台所で水や火を出してみたが、あれは一定の強さの魔物からとれる魔石を加工した石に触れることで出すことができた。

 

 創造神様の知識によるとこの家は「闇の森グーモンス」というところにあって、場所は人族大陸の南のほうにあるらしい。また、このあたりは四季というのがなく人族には過ごしやすい気温をしている。

 オレは外の様子を見るため家の出口のほうに向かうと靴が置いてありそれを履いて扉を開けた。


「これは完全に森の中だな」


 まぁ、闇の森っていうぐらいだから当たり前か。ちょっとした庭っぽいのがあるだけでその先は見える限り木、家のある場所は日が当たるのでそこまでジメジメはしていない。庭と森との境界のところに何か柵的なのがあるけど、創造神様の力で魔物とかが入ってこない感じになってるのかな……そうであって欲しいな。


 一通り確認し終えて、部屋へ戻りイスに座って頭の中で仕事について整理を行うことにした。

 この世界は、人族の王国同士での領土争い、魔族と人族での領土争い、などがある。かと言って、魔族全体が人族と仲が悪いわけではなく一緒の街で暮らしている人たちもいる。あとは冒険者が魔物を討伐したりダンジョンを攻略している。


 この世界を整理するという目的はふんわりしているが、少なくともある程度戦えないと話にならないのは間違いない。おそらくこの森にも魔物はいるだろうし、そのうち食料を調達する必要があるからやはり戦えないと話にはならない。ということは、能力が使えないとどうしようもないが、その能力が何なのかわからない。

 今できることとしたら、能力に必要な基本的な気力の量を増やして、その気力をうまく扱えるようになることだけか。その過程で能力が何かわかれば……ぐらいに思っておくか。


「とりあえず、何か食ってからトレーニングの仕方を考えよ」




 セントリムは時間の流れが地球とほぼ同じなのだが、オレは転生してから1カ月の間死に物狂いでトレーニングをしていた。

 能力が分からない以上基礎力しか鍛えることができなかったが、幸か不幸かトレーニング以外何もやることがないのでものすごくトレーニングに集中できた。そして、このころには気力を目に見える形で出すことができていた。


 今日もいつも通り庭先でトレーニングをしていると、庭の向こうにカエルっぽい30cmぐらいの魔物が現れた。

 以前から戦闘に慣れるまでは何かしら遠隔での攻撃が欲しいと考えていたので、試しに気力を圧縮して作った塊をその魔物に投げてみたところ跡形もなく吹き飛んだ。


「あとあと魔物から食料などを取ることを考えると気力の使い方を工夫しないとダメだな」


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