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龍族の里オウマ - 1

 アレクルトさんからの指名依頼で婚約指輪の素材探しをすることになったが、珍しい素材が欲しいということなので知識のないオレ1人ではどうしようもない。

 ということでオレの恋人で一番人生経験が豊富なリアにいい素材がないか聞くことにした。


「指輪を作るための珍しい素材ですか?」

「何か心当たりある?」

「うーん、そうですね…………」

「まあ指輪だから宝石かアームの部分の素材になるとは思うけど」

「宝石でいうと、ヒーロさんもご存知の深淵の姫真珠ディープ・クイーン・パールが一番に思いつきますがあれはまだ見つかりませんからね」


 オレは以前にブールトワ王国から深淵の姫真珠の優先権をもらっていたがまだそれは出現していないらしい。


「でも、あれを今回の素材に使うにしてももらう方はものすごく気を使うよね」

「ふふっ、たしかにそうですね。何せ10億リシアぐらいですからね」


 そんな高価な宝石の指輪、保管の仕方に気を使って日々が休まらなくなるな。とはいえ、珍しい素材の時点で高価になる可能性は高いからそこを考えても仕方ないか。


「婚約指輪ですので、1つ適した宝石がありますね」

「ほお、それは?」

碧空石(エンドレススカイ)という宝石です。これを手にしたものは一生家庭円満になれるという噂があります」

「へえ、それはいいな。どうやったら手に入るの?」

「それがですね、たしかな入手経路はなくて聞いた話では空から降ってきたという話だけですね」


 名前からして空に関係してそうだからその話を否定できないけど、それだとどこから探せばいいかもわからないな。


「うーん、なかなか難しいな」

「あっ、そういえば世の中には流通していませんが龍族の里オウマに適した素材がいくつかありますね」

「おっ」

「メインストーンだと白王石(プラチナキング)、アームの部分だと迷宮石(ラビリンストーン)がいいと思います」

「白王石のほうは良さそうだけど、アームの部分の石が名前からして不穏なんだけど……」

「この2つの名前を付けたのはケイコですよ。というより、龍族の素材をまともに加工したことがあるのもケイコだけだと思います」

「へぇ。で、その石はなんで指輪に適しているの?」

「白王石は現龍王の涙からごく稀に手に入るらしいので婚約指輪にするには文句はないと思います。あと迷宮石に関してですがケイコの話では一定量の気力を与えると柔らかくなって加工できるらしく、さらに一定量以上を与えると固まるらしいです。しかも、その硬さは与えた気力の量で決まるとのことです」

「ふぅん…………あっ、もしかしてオレが最後の気力を与えたらという話か?」

「そうですね、ヒーロさんなら絶対に壊れない指輪ができそうですし」

「迷宮石はどこで手に入るの? 流通していないという話だけど」

「これはさきほどの碧空石(エンドレススカイ)より現実的です。迷宮石は岩龍のうろこからごく稀に手に入るらしいです」


 どちらもごく稀とはいえ入手方法がわかっているだけ現実的なのかな。


「それじゃ、龍族の里に行ってみるか。前々から行きたいとは思っていたからな」

「あの件ですね。では私もついていきます、龍王には事前に話を通しておきますので」

「助かるよ」


 とりあえず目星がついたので、龍族の里に行くメンバーを誘おうと思いいったん家に帰ってきた。


「ただいま」

「ヒーロさん、おかえりなさいですわ」

「今はストリースとエルミナか、なかなか拮抗してるな」

「さすがにあのお二人は凄いですわね。ところで、ヒーロさんはもう依頼を完了されたのですか?」

「いや、実はアレクルトさんから指名依頼があってアレクルトさんの婚約指輪の素材を探すことになってな」

「ほぉ、婚約指輪ですか。ということはアレクルトさんとエリナさんがとうとうご結婚されるのですね」

「時期は聞いていないけど来年にはするんじゃないかな」

「それにしても婚約指輪の素材ですか……」

「そう、それでちょっとこのあと龍族の里に行ってくるよ」

「えっ!? 龍族の里に行かれるのですか?」

「リアの紹介でな。で、イーリスさんに声をかけるために戻ってきたわけ」


 今回龍族の里に一緒に行くメンバーはイーリスさんである。イーリスさんにはちょっと龍族の里に用があり以前から機会があれば行く話をしていた。

 今回の実戦のトレーニングにはイーリスさんも参加していたのでちょうど近くにダドさんと一緒にいた。


「イーリスさん、このあと龍族の里に行こう」

「とうとうこの日が来てしまったのですね」

「リアもいるしそこまで重く考えなくてもいいけどね。ダドさんもついてくるでしょ」

「そうですね、ついていきたいという気持ちはありますが10層を空けてもよろしいのでしょうか」

「大丈夫だろうけど、一応ウィネに伝えておくか」


 ウィネはミコと遊んでいると思うからミコに連絡するか。


『ミコ、ウィネは近くにいる?』

『ええ、目の前で騒いでいます』

『ちょっと伝えたいことがあるから連れてこれる?』

『承知しました』


 ミコにそう伝えると数秒もせずミコがオレたちのいる層にウィネを咥えてやってきた。


「おぉい! 咥えなくても言ってくれれば黙ってここまで来るわ! ヒーロぉ、こやつを何とかしてくれ」

「まあウィネのためだと思ってやってることだからな」

「我はもう十分強いと思うのだが」

『私に黙って咥えられている時点でマスターの横に立つには足りません』

「ハードル高くないか!?」

「それはそうとダドさんの外出許可が欲しんだけど。ちょっと龍族の里に行きたくて」

「それぐらいいいぞ。誰か来てもここにいる誰かが対応できるだろうし」

「助かるよ」

「そんなことより我はいつまで咥えられたままなのだ……」


 ウィネのことはミコに任せて、オレはダドさんとイーリスさんを連れていったんリアの城の入り口にワープホールで移動した。

 何も言わずともしばらくするとリアがオレたちのところに来てくれた。


「お待たせいたしました。龍王には連絡してありますので早速向かいましょう」

「どこが一番近い?」

「そうですね、魔王会議を行っている場所から行きましょうか」

「了解」


 魔王会議が行われている場所はジュリヤックノールと呼ばれており、オレは去年一度行っているのでワープホールで移動ができる。

 龍族の里はジュリヤックノールから北のほうにあるらしくオレたちは北に向かって空を走ることにした、ちなみにイーリスさんはダドさんの肩に座っている。


「ヒーロさん、事前に連絡はしたのですが龍王からちょっとした要求がありまして」

「要求とは?」

「習わしみたいな感じなんですが、お三方が里に入るのは初めてですので実力を確認したいと」

「オレとダドさんは全然大丈夫だけど……」

「誰かの実力が確認できればいいとのことですのでヒーロさんだけでも大丈夫と思います」

「それでその確認方法は?」

「里に入ると里の者が何人か出迎えてくれるそうなのでその方と戦うことになると思います」

「それぐらいなら全然大丈夫だな」

「一応ですが、相手を消さないでいただけると」

「オレは相手が何も悪いことしていないのに消さないからね」


 そのまましばらく走っていると全体が把握できないぐらい大きい山っぽいところのふもとに着いた。

 山っぽいというのは見える限りほとんど木々はなく岩肌が見えておりところどころ平らになっていたりと普通の山という感じではないからである。


「リア、もしかしてここか?」

「はい、ここがオウマになります」

「気配からして散り散りに暮らしているのかな」

「ここの龍族は基本的に龍の状態で生活していますのでほどんどが巨体ですからね、自ずと生活するところがバラバラになるんでしょう」

「なるほどね」


 これまで会ってきた龍族にはあまりいい印象がないけど、どんな龍族の人に会えるのかは楽しみである。

 もしかしたら龍の背中に乗って空を飛ぶというオレのちょっとした夢も叶えられるかもしれない。


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