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バンジャックの配下(後編)

 ようやくバンジャックの配下の面接で補佐という形だが1人目が決まった。

 その1人目のニンナさんはこのあといろいろと説明を受けるらしくバンジャックの配下の人にどこかに連れられて行った。


 そしてタンさんは続いて6人目を連れてくる予定だったが、誰も連れてこずタンさん1人が戻ってきた。


「すいません、6人目の方は辞退だそうです」

「辞退なら仕方ないな」

「ふん、辞退する奴なんてそもそも必要ないな」

「お前は魔王を辞退しないのか」

「なぜに!?」

「ヒーロさん、まだ4人目の魔王候補もいませんのでここでバンジャックに辞められると面倒なことになります」

「なるほど」

「おい、それだと俺は仕方なくみたいな感じになっていないか……」


 バンジャックの話はさておき、続いて7人目の方をタンさんが呼びに行った。

 書類によると7人目の方はゴトフリーさんというゴブリンの方らしいけど……。


「なあリア、次の人ゴブリンみたいなんだけどゴブリンって会話とかできるんだな」

「ええ、上位種のゴブリンは会話ができますね」

「ゴブリンキングとかか」

「そうですね」

「でも、書類にはゴブリンとしか書いていないんだけどな」

「ただ省略しただけとか?」

「まあそれならいいんだけど」


 ここでタンさんがゴトフリーさんを連れてきたが、ゴトフリーさんはオレと同じぐらいの背丈をしておりすらっとした体形でなぜかスーツっぽいフォーマルな服を着ていた……全然ゴブリンっぽいくないんだけど。


「失礼します。わたくしゴブリンのゴトフリーと申します」

「うむ。その前にお前は本当にゴブリンか?」

「はい、間違いなくゴブリンです。ゴブリンキングなどではなく純粋にゴブリンです」

「お前みたいなきっちりしたゴブリン見たことないんだが」

「おっしゃりたいことはわかります」


 ゴトフリーさんは肌の色とか顔を見るとゴブリンっぽいが話し方や姿勢などはどこかの貴族を思わせるような雰囲気を醸し出している。


「私は普段冒険者をしておりまして第2級になります。ただ今のままだと将来に不安がありまして安定した定職をさがしておりました。しかしゴブリンということもあってなかなか見つからずそんなときに魔王様の側近の募集を見まして応募した次第です」

「お、おう」


 バンジャックもこんなまじめなゴブリンを見るのは初めてらしく戸惑っている。


「魔王様の側近としてはまだまだ実力は足らないと思いますが日々の鍛錬を怠らずに頑張っていきますのでよろしくお願いいたします」

「ゴトフリーさん、オレから質問してもいいですか?」

「はい、何でしょうか」

「ゴトフリーさんは生まれたときからそのような感じだったんですか?」

「物心ついたときにはなぜか会話や文字を扱うことができほかのゴブリンとは異なることは理解しておりました。そのためある程度成長したときに集落から離れ、なんとか魔族の方の中に入るように日々努力し今に至ります」

「なるほど、ありがとうございます」


 普通の人族よりきっちりしてるな、というより今までで一番面接っぽいな。


「ヒーロさん、ゴトフリーを鑑定しましたが【人知】という能力を持っているみたいです」

「へぇー、そんな能力あるんだな。まあそれならゴトフリーさんの振る舞いに関してはわからなくもないか」

「ロリアデラ様、私を鑑定していただきありがとうございます。自分も今まで謎だったことが明確になって助かりました」

「バンジャック、どうする?」

「戦えるなら問題ない!」


 いい加減そのシンプルな選考基準辞めてほしい。


「では、ゴトフリーさんは側近として合格ということで」

「ありがとうございます! 側近として恥じぬよう精進していきます」


 その後ゴトフリーさんもさきほどのニンナさんみたいに配下の方に連れていかれた。


「いやぁ、やっぱり後半になってくるといい人材が残っているな」

「良かったです。一次選考をした身として誰も決まらないのではと内心ひやひやしていました」


 さて続いて8人目の方の面接になったので、タンさんがその方を連れてきた。


「でっか……」


 8人目はジェカシモンさんというサイクロプスの方で10m以上の背丈をしていた。初めてこんな大きな場所で面接している意味を感じた。


「初めまして、僕はジェカシモンといいます」

「では、ジェカシモンさん志望動機をお願いします」

「はい……僕は小さいころから誰かの役に立ちたい、困っている方がいれば助けたいと思い続けていました。昔は自分に力もないので思うだけで実行に移せませんでしたが、大きくなって力もついてからは実際に行動に移せるようになりました」


 おお、見た目からは伝わらないけどものすごくいい人。


「ただ実際に行動に移しても僕の見た目から逆に怖がられることが多いのです。それが悩みの種でしたが今回魔王様の側近の募集を見たときに、側近という立場であれば怖がられずに自分の力が役に立つのではということで応募しました」

「合格で!」

「おい、ヒーロ。それは俺のセリフだから」

「いや、こういう方が側近であれば以前のことは間違いなく起きないでしょ」

「実力は……」

「オレの見立てだとタンさんといい勝負かなと思うけど」

「ほお、ヒーロさんの見立てで私と同じと……それでは勝負しましょうか?」

「おい、タンさんがそれじゃダメでしょ!」

「はっ! す、すいません、つい……」

「合格にするんだからあとでいくらでも実戦のトレーニングとかできるでしょ」

「そ、そうですね!」

「おい、俺は合格なんて一言も言ってないんだが」

「では、ジェカシモンさんは合格で。このあともろもろの説明がございますので」

「あ、ありがとうございます!」

「タンまで俺の扱いが雑になっていないか……」


 これでバンジャックの側近が2人増えてタンさん含めて3人になった。ただ最後に残っている人はオレが書類を見た段階で間違いなく合格するだろうと見ていた人である。

 タンさんがその最後の1人を連れて部屋に入ってきた。


「ん? なんだ、お前か」

「バンジャック、久しぶりね」

「噂ではボロボロにやられてダメになったと思っていたぞ、ジョナード」


 最後の1人はイージウスの側近だった元十悪獄奴のジョナードさんである。

 蜥蜴人のジョナードさんの名前を見た時点でこの人の実力は間違いないし、以前戦ったラーからもジョナードさんの話は軽く聞いていたので側近として雇うには問題ないと見ていた。


「ええ、ラーと戦ったあとしばらく旅に出て自身を鍛えなおしていたわ。ただ、最近1人だと限界を感じていたのよ、このままだとラーにすら勝てないと」

「ふん、なるほど。で、俺のところにきたのか」

「龍族であるあなたなら、私を強くしてくれると思ってね」

「まあいい、俺の側近になりたければ好きにするがいい」

「助かるわ」


 なんだろ、初めてバンジャックがまともに感じたな。

 側近になることが決まったジョナードさんも説明を受けるためにどこかに行き、これにて今日の面接が終了した。


「いやぁ、一時はどうなることかと思ったけど4人そろったから良かったな」

「ヒーロさん、ありがとうございます。これで私も楽になります」

「タンさん、まとまった休み取ったほうがいいんじゃないかな、もしくは側近辞めるとか」

「おい、それだと意味が……」

「それでバンジャックの側近が4人になったけど名前とか決めるのか」

「ああ、たしかに。そうだな――――炎天四子(えんてんしし)にでもするか」

「まあ、名前に関してはオレはなんでもいいけど、今度はオレに消されないようにな」

「それは俺に言われても……」

「いや、お前管理者だからな」


 こうして約2年もの間タンさん1人だったバンジャックの側近がようやく増えることになった。

 しかも頭脳担当の補佐の人も決まったのでバンジャックも少しずつ管理者らしくなってくれるだろう。


次話からアレクルトの婚約指輪の話……という名の龍族の話になります。

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