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バンジャックの配下(中編)

 頼りないバンジャックはさておきそろそろ面接を始める時間が近づいていた。


「タンさん、この書類の9人はもうどこかで待機しているの?」

「はい、すでに待っていただいています」

「面接自体もそこまで時間かからないだろうけど、待たせるのもなんだしそろそろ始めようか」

「わかりました」

「ところで、オレとリアはどこに座ればいいの?」


 見たところこの部屋にある椅子はバンジャックが座っている一脚と少し横にある一脚だけだった。


「ロリアデラ様はあちらの椅子にお座りください。ヒーロさんは申し訳ないんですが立ったままお願いできますでしょうか」

「全然いいんだけど、オレに椅子がないのはバンジャックの指示?」

「ち、違います! 俺はそんな指示をしたらすぐに消されるぐらいわかっているからそんな指示はしません!」

「ヒーロさん、すいません。建前上、この領地の魔王様と隣の領地の魔王様という位置づけで椅子はご用意してあるのですがヒーロさんは人族ですので同等に扱うのは難しく、ロリアデラ様のうしろにいていただけると助かります」

「なるほどね、まあそういうことなら仕方ないか。それに立ったままの方がバンジャックを蹴りやすいから都合がいいか」

「俺だけ違う緊張感があるんですけど……」


 さて、オレたちは指定された位置につき1人目をタンさんが呼びにいきしばらくしてその方を連れて戻ってきた。

 書類によると1人目はアルイレンという名前の龍族の方で全身黄色っぽい肌をしていた。実力は龍族だけあってそれなりで以前ヘルミーと戦ったラロジエよりも間違いなく強い。


「では、アルイレンさん志望動機からお願いします」

「この時は待っていたぞ! バンジャック、俺のほうが強いということを証明してやる!」

「ふん、お前が来たときからこうなると思っていたぞ」


 2人は知り合いか……ただ1人目から雲行きがあやしいな。


「いくらバンジャックとはいえ力を使いこなした俺の光の速さにはついてこれまい!」

「講釈はいいからさっさと来い、お前など座ったままで十分だ」


 来いではないんだが……これ面接なんだけど。あとこんな喧嘩っ早い人は側近にいらないよね、前回の二の舞になることがわかりきってるでしょ。

 オレがそんなことを考えているとアルイレンさんがバンジャックに殴りかかろうとそれなりの速さで動き出したのでオレが対処することにした。


「一発で決めてや――」

「不合格!」

「――ぐぎゃああああ…………」


 バンジャックに突っ込んでいくアルイレンさんを蹴り飛ばすとアルイレンさんは城の壁を突き破ってそのままどこかに飛んで行った。

 不合格は確実なのと面接であることを理解していないのでここから強制退場でいいだろう、それに龍族だからあれぐらいでは何ともないはず。


「おい、バンジャック。龍族はあんなのしかいないのか?」

「い、いや……それは……」

「ヒーロさん、私の知っている限りですが少なくとも龍王は大丈夫です」


 リアの知ってる限りで龍王だけって龍族は大丈夫なのか。


「ヒーロさんすいません、自分が選んだばっかりに」

「タンさんは悪くないよ、それより次の人にいこう」


 タンさんは申込にある最低限の情報だけで判断しているだろうからこういう結果は仕方ないが、だからこそ1回の面接で決めるのは良くないんだけど。


 タンさんが次の人を呼びに行っている間にアナにお願いして壁を治してもらいオレは元の位置に戻った。そしてしばらくすると次の人が部屋に入ってきた。

 次は書類によるとエットンというインキュバスの人らしい……1人目を考えるとすでに嫌な予感しかしないんだが。


「では、エットンさん志望動機からお願いします」

「志望動機だと、そんなこと決まっているだろう。魔王様の側近になったらもっと上玉の女を抱けるからに決まっている」


 はぁ、こいつも以前の側近のインキュバスと同じ感じなのか。というか、インキュバス自体がそういう種族なのかもしれないな。


「バンジャック、この人は不合格でいいか?」

「ヒーロがそういうならそれでいいですよ」

「な、なんでなんだ! 魔王様、なんで人族の言うことなんて聞くんだ!」

「文句があるなら実力で示してみよ」


 いや、なんでやねん! お前がそういうスタンスだから面接がおかしくなるんだぞ。


「よしっ、そこの人族、悪いが死んでもら――」

「汚らわしい!」

「――ぐぎゃああああ…………」

「ふんっ、汚らわしい輩はヒーロさんに近づかないでもらいたいです」


 エットンさんがさきほどのアルイレンさんより遅い速さでオレのほうに向かってきたので同じ対応をしようと思ったが、今度はリアが殴り飛ばし壁を突き破ってどこかに飛んで行った……これ面接が終わるまで壁は治さないほうがいいのかな。


「タンさん、もしかして今日ってこんな奴ばかりなのか? 書類を見る限り残っているうちの2人は確実に違うような気もするけど」

「すいません……でも可能性の低い順に来ていただいているんで徐々に良くなっていくかと」


 最初に評価が高い人が来たらその後が大変だからその順番にしたのはわからなくもないが最初が低すぎる気もする。

 そしてその後の3人目、4人目も同じような感じの喧嘩っ早い人が来てバンジャックが煽るのでオレが蹴り飛ばして退場していただいた。


「おい、バンジャック、お前やる気あるのか?」

「い、いや、どうしてもあのような奴には強気になってしまうんで仕方ないですよ」

「仕方ないじゃダメだろ……」


 まあ書類の順番だと次の人は間違いなくそういう感じにはならないから大丈夫だろうけど。

 そしてタンさんが5人目の方を連れてきた。


「では、ニンナ・ハンさん志望動機からお願いします」

「おい、タン! その前になんで人族を連れてきているんだ!」

「い、いや、今回は……」

「バンジャック、今回は種族関係なくってオレが言ってたから問題ないだろ」

「いやしかし、こいつは全然実力が足りないような」


 目の前にいるニンナさんからは全く戦闘面の実力を感じず、それは書類上からもオレはわかっていた。


「側近というのは戦えるだけが必須というわけではないだろ、とにかくニンナさんのことを知ろうとしろよ」

「うっ……」

「ニンナさん、この魔王が失礼しました。では、志望動機からお願いします」

「あ、ありがとうございます。えーと、私はニンナ・ハンと言います。ご存知の通り人族で戦うような力もありません、先日まではグラストル王国の教会でシスターとして働いていました」


 元シスターのニンナさんは今の恰好もなぜかそのシスターの服を着ている。


「私は小さいころから龍族の方が好きでその中でもバンジャック様に憧れておりました。そして先日側近の募集があることを知りダメもとで応募いたしました」

「しかし、戦うことができないと俺の側近は……」

「バンジャック、ニンナさんには面白い能力があるんだよ」

「ほお、それは?」

「はい、【戦術】を持っております」

「戦術?」

「つまりニンナさんは戦略を立てるポジションで使えるということだよ。それにお前にはない頭を使うこともできるだろうからそれ以外でも使えるんじゃないのか」

「俺に戦略なんていらないんですけど」

「いやお前自身というか何かあったときにどう配下を動かすとかはお前では無理だろう、そこでニンナさんの能力が生きるんだよ」

「ぐっ……ただ側近にしたら狙われるのでは? 俺の領地はさっきの奴らみたいなのが多いから」

「側近でも三蛇華姫みたいな感じじゃなくてお前の補佐とかでいいんじゃないか」

「うーむ……」

「バンジャック様、恐縮ですが私からもよろしいでしょうか」

「なんだ、タン」

「今の領地の運営の仕事に関しても人手が必要な状態です。ニンナさんの戦術も運営において使えるかと思います」

「なるほど……よしっ、ニンナ、お前を俺の補佐として置いてやろう」

「あ、ありがとうございます!」


 ほぼ即決だな、こういうときの判断が早いのはいいけどもうちょっと頭を使って考えて何とかしてほしい。

 ただそこは今更言っても仕方ないので今後はニンナさんがそのあたりを補えばマシになるだろう、あとはバンジャックに聞く耳があるかどうか次第だけど。


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