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魔女との邂逅 - 4

本年もよろしくお願いいたします。

 ジュリーティアさんがなぜこの世界に来てどういった経緯でこの島に1人で暮らしているのかは聞くことができた。

 それにジュリーティアさんが魔女の呪いの薬の研究をしていることもわかったのでこちらのことも話をして薬に関して協力を得られれば非常に助かる。


「ジュリーティアさんのことはだいたい聞けたので約束通りどういう方法であの乗り物から情報を得られたか説明しますね」

「お願いします」

「信じられないかもしれませんが、オレの中にはある神様がいます」

「えっ!?」


 ジュリーティアさんは研究者だからかものすごく怪訝な表情をしている。


「まあ信じられないかもしれませんが事実です。証明するのはなかなか難しいですが……そういえば2年ぐらい前にある魔王が世界に宣戦布告をしたことはご存じですか?」

「ええ、何か声が聞こえたので何かしら起こっているんだろうなとは思っていましたが私には関係ないので気にはしませんでした」

「あの対戦のときに凄まじい力を感じなかったですか?」

「凄まじい力……そういえば数秒だけ動けなくなるぐらいの何かは感じましたね」

「あれはオレの中にいる神様が表に出てきてほんの少しだけ力を使った影響です」

「はあ?」


 さすがにそれでもピンとこないよね。


「えーと、とりあえずジュリーティアさんが不死身である原因はその神様から聞きましたよ」

「そ、それは?」

「状態保存の一種らしいですよ。ジュリーティアさんにとってマイナスになる状態は元の正常な状態に戻るらしいです。オレの中の神様の話だとどこかの神が気まぐれに与えた力みたいです」

「気まぐれですか……でも、その力であればたしかに今まで試してきた結果に納得できます。ただ、いきなり神族の話が出てきても何とも……」

「まあそれはそうですよね。ちなみにオレの力はオレの中にいる神様の力の一部を使っています。使いこなすのに苦労しましたけど」

「さきほどの結界を消したときの力のことですね」

「ええ、オレの力は消滅の力です。オレよりも強くなければ対象を消すことができます」

「はあ……なかなか凄まじい力ですね。でも、その力であればたしかにお二人に放ったあの攻撃もキレイに消されるわけですね」


 とりあえずこれぐらい伝えたら薬の話も聞いてくれるかな。


「ジュリーティアさん、折り入って1つ相談があるんですが」

「はい?」

「魔女の呪いに関してですが……いまはオレが近くにいれば完治できる状態です、ただそれはオレが病気になっている人に気付く必要があります。おそらくこの世界にはまだ魔女の呪いになっている方がいるかもしれませんが、その人たちをすべてオレが見つけていくのは現実的ではありません。そこで本当の意味で魔女の呪いの解決には薬が必要になります」

「薬の作成を私に、という話ですか」

「はい」

「私もあの病気の薬を作成するのに何千年と使っていますので薬の完成はさせたいと思っています。ただ、依頼を受けたとしてもヒーロさんが生きている間に完成するかは可能性は低いと思いますよ」

「その点に関しては大丈夫です。オレもこのミコもですが寿命の概念はありませんのでジュリーティアさん同様寿命で死ぬことはありません」

「ははっ、さすが神様を中に入れているだけありますね。そうですか……」

「もちろんオレでよければ薬の作成には協力します。必要な材料があれば探しますし、オレの恋人には魔王やダンジョンマスターがいますのでいろいろできると思います」

「……ヒーロさんは何者なんですか。ま、まあ、そうですね、私も協力者はいるに越したことはありませんのでそのあたりの協力はお願いしましょうか」

「そういえば魔女の呪いを一時的に治すモノがありますけど使えますかね?」

「ほお?」

「レインボー・オブザイヤーの蜜というモノなんですが」

「それの成分などを調べても大丈夫ですか?」

「ええ、もちろん」


 ジュリーティアさんが蜜の成分をさっそく調べるということでオレたちも見学させてもらうことにした。

 ジュリーティアさんの研究室は実験室のような器具や見たこともない機械が置いてある一方でいろんなデータが表示されているモニターも壁一面に貼られていた。


「やっぱりジュリーティアさんの世界の技術は進んでいますね。オレが元いた世界よりも技術が進んでいるし」

「元いた世界?」

「ああ、実はオレは転生しているんですよ。元の世界は魔法などはなかったんですが、その一方で科学技術は進んでいまして」

「なるほど、ヒーロさんは転生者だったんですね」


 ジュリーティアさんは会話をしながらある機械にレインボー・オブザイヤーの蜜を少し入れ何やら操作を始め、すぐに画面にいろいろとデータが表示され始めた。


「うーん、これはすごい治癒効果を持っていますね。ただ、これだけ強いと薬には向いていないですね」

「向いていない?」

「ええ、他の素材と組み合わせたときに他の効果を消してしまうと思うのでこれは単体で使用するのが一番だと思います」

「なるほど」

「それに成分だけ抽出してもそれ単体では役に立たないと思います」


 この短時間でそこまでわかるのはすごいな。まあ、複製できる技術があるぐらいだから成分を調べるぐらいは大したことはないのかもな。


「そういえばジュリーティアさんがいま作っている薬はどんな感じなんですか?」

「現段階では進行を遅らせるのが限界ですね。2000年近くかけて何度がブレークスルーがありましたがそれでもあと一歩決め手がありません」

「決め手ですか?」

「ちょうどいい素材がないんです。いい感じの適度な治癒効果の素材があると何とかなりそうな気もしているんです」

「いい感じの治癒効果ですか?」

「ええ、この世界の薬草よりも弱くていいんですが、こう……何と言いましょうかちょうどいい感じのやつです」


 いや、さすがにそれではわからない。いい感じの適度な治癒効果の素材なんてそうそうな…………1個あるな。


「えーと、治癒に関してはかすり傷程度を治してくれるぐらいなんですが疲労回復効果がある素材なら持ってます――「ちょっとそれを見せてください!!!」――けど!?」


 ジュリーティアさんは急にオレの両肩をガシッと掴んで目の前に迫ってきた。


「わ、わかりましたから落ち着いてください」

「あっ……す、すいません」


 オレは手のひらサイズの紙に包まれた粉薬のようなモノをインベントリから取り出した。

 この粉はホーが作ってくれたモノである。ホーは自身の力によって生成した粉のようなモノを対象に振りかけるとそれが対象に吸収されていき疲労回復などの効果をもたらすが、その粉のようなモノを粉薬のような状態にもできオレはそれを1つだけ持っていた。ちなみに1つだけというのはオレ自身が強制的に疲労を回復させる場面がないと思ったからである。


「これです。粉薬みたいな感じですね」

「ほお、これも調べていいですか?」

「ええ、どうぞ」


 ジュリーティアさんはレインボー・オブザイヤーの蜜を調べるのと同じ手順で手際よく作業をしていく。


「こ、これは……」

「やっぱりダメですかね?」

「ヒーロさん! これをもっとください!」

「えっ!?」

「これです、私が求めていた素材は! これがあれば現状を打開できるかもしれません」

「えーと、どのくらい必要ですか?」

「わかりません!」


 ええええ……どうしようかな、とりあえずホーを連れてきて適当な量を作ってもらうか。


「それですが実はオレの仲間にいるアウラウネの子が作り出すんですよ」

「ということは、花粉のような感じですか?」

「オレもそう思ったんですが本人に聞いたら花粉ではないらしいんですけど、とりあえず一度出直してその子を連れてきましょうか」

「いいのですか、アウラウネなのに」

「まあその子はオレがいれば結構ウロチョロするので大丈夫ですね」

「では、お願いします!」


 次にやることが決まったのでさっそくオレとミコはジュリーティアさんの家を後にした。

 オレたちはもともと走っている途中だったので家までは走って帰ることにした。


「ミコ、今回も途中で捕まってしまったな」

『はいぃ、残念です』

「これが落ち着いたらまた走ろう」

『はい』

「それにしてもジュリーティアさんの家ってオレたちの家から北東の方角にあるんだな」

『そうですね?』

「セシリアの占いって、まさかここまで占っていたのかなと思って」

『北東に突き進むという占いですね』

「まあまだ問題は解決していないけど、もし魔女の呪いの薬が出来たらこの世界の問題を1つ解決できることになるからな」


 もしそれが本当に叶うならセシリアの占いはもう占いのレベルを超えて一種の神託だよな。


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