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世界の端

 11の月に入り数日が経った日、オレはリアの城でリアと三蛇華姫の3人と話をしていた。


「リア、前々から何とかしないといけないなって思っていたことがあるんだけど」

「はい?」

「魔女の呪いを根本から解決しないといけないんじゃないかなと思って」

「根本から……ということは薬のことでしょうか?」

「そうそう、この前のエルメリンさんもオレがたまたま寄ったから良かったけど会わなかったら治せなかったわけだからね。この世界にもまだまだ魔女の呪いにかかっている人はいるだろうし」

「そうですね……」

「ヒーロさんさすがです! 世界のことを考えているなんてさすがです!」


 世界のことは考えていないけど、単純に自分だけ正確にはアナだけが治せる状況はあまりよろしくないなとは考えていた。


「でもぉ、どうやって薬を作ればいいんですかぁ?」

「そこなんだよな、薬に関する知識は何もないから取っ掛かりがないんだよね。リア、魔女の呪いの薬って誰かはチャレンジしてるよな?」

「ええ、いろんな時代にいろんな者がいろいろと試していましたね。先代も長い期間魔女の呪いだったのでいろいろ飲んでいましたが効果はありませんでした」

「となると飲むという意味ではレインボー・オブザイヤーの蜜が一番効果があるわけか」

「やはりキーマンはヒーロさんですね、私の恋人の」

「シー、みんなのヒーロさんです」


 シーは2年前に恋人になってからオレの前では視野が狭くなるというか少しポンコツになる。オレがいないときは以前のままらしいので周りも気にしていないが、みんなの話を聞く限り恋愛慣れしていないからではないかとのこと。


「レインボー・オブザイヤーの蜜は一時的にしか治せないのと飲んだ次の日にはまた発症するからそのままは使えないけど、もしかしたら薬を作るときに役にたつ可能性は高いよな。今の時代に優秀な薬師みたいな人はいるのか?」

「うーん、薬師ですか…………たしか100年前ぐらいに私の耳にも入るぐらいの薬師はいましたがその方が亡くなってからは聞いたことがありませんね」

「そっか……なかなか材料が揃わないな。ま、すぐどうにかしたいという話ではないからまた機会が来るでしょ」

「そうですね、我々も薬に関しては実現させたいので日ごろから何かないか注意はしておきます」

「頼むよ。それじゃ、オレはミコと世界の端を走る約束をしているから帰るよ」

「「「「!?」」」」


 ミコがまた思いっきり走りたいと言っていたので今度はこの世界の端を走ろうという話になっていた。

 この世界は地球のように丸くなく世界の端は何かしらの壁があり進めなくなっている。なので、オレとミコは海の上をその壁沿いにひたすら走って一周しようとしていた。


「世界の端とは?」

「リアって世界の端に行ったことないの?」

「ええ、ありませんね。というより行こうと思ったことがありませんね」


 普通世界の端がどうなっているか気になると思うんだけど、この世界の人はそのあたり気にならないような配慮でもされているのかな。


「まあ行ったところで何もないから気にしなくてもいいけどね」




 その後リアたち4人との会話を切り上げ、オレはミコと一緒に家を出るためにいったん家に帰ったきた。


「ミコ、走りに行こうか」

『はい!』

「また何か起こるのではないだろうな」

「ん?」

「また世界を揺るがすようなことが起きますわ」

「いや、ただ散歩に行くだけだけど……」

「以前も走りに行って世界を左右するようなことがあったろう」

「たまたまでしょ」

「セシリアさん、占いでなにか出ておりませんか?」

「ヒーロさんに関しては今のところ何も出ていないわよ」

「セシリアの占いが何もないということは今回は何か大きなことは起こらないでしょ」

「我は若干の不安があるのだがな」


 そうそう世界を揺るがすようなことは起きないだろう、しかも今回は世界の端で海の上を走るわけだから誰にも会わないだろうし。


『ウィネはマスターとの散歩が羨ましいだけですよ』

「イチャイチャするならそうだがそんなわけのわからん散歩は羨ましく思わんわ」

「まあまあ、とりあえずミコ出発しようか」

 

 ということでオレとミコはダンジョンからずっと南に行き今回のスタート地点とする海上の世界の端まで来た。


「相変わらずよくわからない壁だよな」

『マスターなら壁の向こう側に行けるんですよね』

「まあ壁を消せば行けるみたいだけど、アースターの話だと向こう側はダーク・アビスと同じらしいからオレが行っても仕方ないらしいよ」


 オレにはまだこの世界や他の世界がどういう位置関係になっていてどうすれば世界間を移動できるのかさっぱりわからない。というか理解できる日が来るのか、もしくはそもそもオレが思っているような概念ではなく神族のような力がないと移動などは無理なのかもしれない。


 オレとミコはさっそく世界一周を走るためにスタート地点から東の方向に出発した。

 この世界の海には当然魔物もいるのだが、海の中で生活している魔族や龍族の方もいるらしい。オレたちが全力で走ると海の中にまで影響がでるが世界の端あたりは魚や魔物すら住んでおらずそのあたりの心配をする必要はない、しかもそもそも全力で走ってしまうとこの世界一周の散歩がすぐに終わってしまうのでほどほどの速さで走ることにしている。

 

『マスター、楽しいです!』

「何も障害物がないから気にすることが少なくていいな」

『マスターと私の行く末には障害物なんてありませんね!』


 それは意味が違う気がするが、たしかにこの世界はかなり落ち着いていると思うのでオレたちの前にはそうそう障害が発生するとは思えないのも事実である。

 

「そろそろ端かな。直角に曲がるよ」

『はい!』


 この世界の南の端をまっすぐ東に向かって走っていたオレたちは東の端が近づいてきたので北に曲がるためにスピードを調整して曲がり今度は北に向かってまっすぐ走る。

 

「今回は何もなさそうだな」

『そもそも走っているところがここですからね』

「たしかにな」

 

 この前は大陸を横断していたから人と会う可能性は十二分にあったが、今回は海の上しかも世界の端だから誰かに会う可能性はまずない。しかもリアに話をしたときの反応を見る限りこの世界の人は端に行こうと思わないはず。

 オレたちはそのまま順調に北上していき世界の真ん中あたりを通過し数分が経ったとき。

 

「ん?」

『マスター!?』

「えっ!?」

 

 走っているオレたちに向かって相当な威力のエネルギー砲みたいなモノが前触れもなく飛んできた。


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