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エルメリン・リリタニス(前編)

 魔巧少女屋さんを出てから真っすぐ塔に向かって10分も歩くと塔の入り口付近まで来た。

 塔自体は100mを超えるぐらいの高さをして周辺が外壁で囲まれており、その外壁を気配から魔巧少女と思われるメイド服に防具を身に付けている女性たちが警備をしていた。

 あとなぜか塔に向かって膝をつき祈りをささげている人も周辺に数人おりエルメリンさんへの信仰度具合いがうかがえた。


 オレは入り口と思われる門で警備をしている魔巧少女に用件を伝えることにした。


「すいません、エルメリンさんに会いに来たんですが」

「主様にご用件ですね、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」

「ヒーロです」

「確認します」


 話しかけた魔巧少女は確認すると言ったがその場から動かず表情1つ変えずにじっとしている、もしかして通信機能も持っていたりするのだろうか。


「――確認が取れました、念のため証明書を確認させてください」

「冒険者カードで大丈夫ですか?」

「はい――――ヒーロ様ご本人で間違いございません。では、ご案内いたしますので少々お待ちください」


 初めて魔巧少女と話をしたが全く違和感がない。ここにいる魔巧少女はエルメリンさんが作ったやつだろうから最高峰の魔巧少女とは思うけど人と全然変わらないな。

 これなら買いたくなる気持ちもわかるが1億以上するから普通は手を出せないか。


 それから数分待っていると門が開き中から見た目が似ている別の魔巧少女の方が出てきた。


「ヒーロ様、お待たせいたしました。主様の元までご案内いたします」

「直接会えるんですか?」

「はい、ロリアデラ様のご紹介でしたのでお会いするそうです」


 おぉ、何度目かのさすがリア。この世界はリアが回していると言っても過言じゃないような気がする。

 案内してくれる魔巧少女の方の後についていくとリアの城にもあったエレベーターらしきもので結構上のほうまで上がってきていた。


「この建物は何階まであるんですか?」

「こちらは47階まであります。これからご案内する階層は主様がお客様とお会いするための部屋があるだけの階層になります」

「ここって結構お客さん来るんですか?」

「いえ、主様が外の方とお会いするのは約500年前のロリアデラ様以来です」


 なかなかな引きこもりだな。ただ周りにこれだけ話せる魔巧少女がいれば外に出る必要もないか…………というか、リアも500年ぐらい会ってないんかい!


『この前ヒーロさんが伺うことを伝えたときに久しぶりに話しましたが500年も会っていなかったんですね』

『そんなに会っていなかったら人となりも変わるんじゃないのか?』

『あの子は何も変わっていませんでしたよ。それに私は元々あの子の見た目を見たことないですし』


 リアは見た目にとらわれずに人と接するだろうからリアが変わっていないというならそのまんまなんだろうけど、寿命がないと人と会う間隔も自ずと長くなるのかな。


「ヒーロ様、着きました。こちらの階層に主様がおられます」


 エレベーターから降りると目の前に扉が1つだけあって玄関のような感じになっていた。

 魔巧少女の方が扉をノックでもするのかと思っていたら門のところにいた魔巧少女の方のようにその場でしばらくじっとしている。これは中にいるエルメリンさんか他の魔巧少女の方とやり取りをしていそうだから間違いなく通信機能が付いているな。


「ヒーロ様、許可が下りましたので中にお入りください、主様がお待ちでございます」


 魔巧少女の方が扉を開けてくれたのでオレはそのまま中に入っていくと、1階層を1部屋にしたような感じの部屋に椅子が向かい合って2脚だけあり1つにはエルメリンさんと思われる方が座っていた。


「ヒーロ殿、遠いところよく参られたのだ。わっちがエルメリンだ」

「初めまし……コホッ……て、ヒーロ……コホッ……といいます」


 ここものすごく煙い……たぶんエルメリンさんが右手にキセルのようなものを持っているのでその煙だろうけど、それにしてもかなり煙い。

 エルメリンさんはオレが想像していたハイエルフの感じでキレイなエメラルドグリーンのロングの髪の毛に透き通るような肌をして美人な方だった。

 ただ、オレがイメージしていたのと異なる部分があった……キセルを吸っているのはイメージになかったがそれは個人の趣味なので何も思わないが、着ている服がおかしい……オレが来ることがわかっていたのになぜ競泳水着のような服を着ているんだろう、ハイエルフの公式の服装なのだろうか。


「何もないところで申し訳ないが、その椅子にかけてほしいのだ」

「ありがとうございます。あの……すいませんが、この部屋の煙キレイにしてもいいですか?」

「ん? ああ、すまないのだ、最近吸う量が増えたのだ。匂いがこべりついていると思うのだが……」


 オレはこの部屋の中の煙を消滅させ、それなりの力で生活魔術を使って部屋をキレイにすると匂いもなくなった。


「おお――――新品同様になったのだ。さすがロリアデラ様の恋人の方なのだ」


 とりあえずこれで落ち着いて会話ができるな。それにしてもこちらに来てタバコみたいなのがあることは知っていたがその類に出会ったのは初めてだな。


「エルメリンさん、失礼になるかもしれませんが1つ質問してもいいですか?」

「ああ、かまわないのだ」

「エルメリンさんの着ている服はハイエルフの方特有の服なんですか?」

「おお、この服に気づくとはさすがヒーロ殿なのだ! これはわっちが長年かけてたどり着いた形の服なのだ。わっちは普段から魔巧少女などを作るため工房で作業をしているのだが普通の服だといろいろと邪魔だったので無駄を省いていった結果この形になったのだ! それにこの素材、水を弾いて空気抵抗も最小にする素材を作り上げたのだ!」


 いや、いろいろと省きすぎな気がするし生活する上でその機能はいらない気がするんですが。上半身がその形になるのはまだわからなくてもないが下半身がその形になるのも意味がわからない。

 それにオレを前にして恥ずかしくないのかな。プールとか海とかでその服装なら納得するが部屋の中でそれは恥ずかしいと思うんだけど。


「…………なるほど、効率を求めた結果なんですね」

「そうなのだ!」

「それにしてもここの魔巧少女は凄いですね。普通の人と変わらない感じがしたんですけど」

「ふっふっふっ、わっちが作る魔巧少女は特別だからなのだよ。わっちにしかできない技術が使われているからほぼ人と変わらないのだ」

「能力でそんなことができる感じですか?」

「そんなところなのだ」


 能力か、となるとエルメリンさんが作る魔巧少女は1億とか値段が付けられる感じの代物ではないかもな。


「それじゃ世の中に広まってる魔巧少女とか魔石の技術とかは……」

「わっちが皆が使えるぐらいに技術レベルを下げて広めているのだ。わっちのすべての技術を広めても皆が付いてこられないから意味がないからなのだ」


 能力も関係しているだろうけどこの人は天才なんだな。リアがエルメリンさんのことを変わっているって言っていたけどそれは天才特有のものなのかもな。


「ヒーロ殿、さっそくなのだが……」

「魔巧少女の件ですか?」

「いやそれもあるのだが、それよりもわっちの初めてをもらってもらう件なのだが……」

「え!?」


 いきなりエルメリンさんが意味のわからないことを言い出したのだが……。


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