何も起きない初依頼
虹色の花を見つけた場所から数時間走り、ようやくレトナークの外壁が見えるところまで来ていた。
着いた! やっと着いた。いやー、ここまでイベント盛りだくさんだったな。
レトナークは5mぐらいの外壁で囲われておりオレが来た方角から街の中に入るための門は1つだけあった。
さてと、入口に衛兵っぽい人がいるけど、これはどこから来たとか聞かれるやつかな。グーモンスの森から人が来るなんてないだろうから聞かれたら適当に東から来たとか言っておくか。身分証は冒険者カードで何とかなるけど、15年前に作られたやつで大丈夫なのかな……まぁ、創造神様が作ったから問題ないか。
東から来たように見せるため東のほうに一瞬で移動しそこから入口に近づいていくと、2人いる衛兵のうち1人がオレに気づき声をかけてきた。
「見かけない顔だな、すまんが身分証を拝見してもよろしいか?」
「はい、冒険者カードでもいいですか?」
「あぁ、問題ない」
外套の中でインベントリから取り出した冒険者カードを出して衛兵に渡した。
「第7級か……この街には仕事で?」
「えぇ、冒険者ギルドで仕事をこなそうと思って」
「そうか、ようこそレトナークへ」
「ありがとうございます」
レトナークの街に入っていくとき、2人の衛兵が話していたのがちらっと聞こえた。
「あの年齢で第7級だと苦労してそうだな」
「さっきの冒険者って第7級なんですか?」
「あぁ、冒険者カードにそう記載されていた」
「20代後半ぐらいですかね? それでも第7級で冒険者続けてるっことは何かしら事情があるんすかね?」
「だろうな」
いやー、人が好さそうな衛兵で良かったな。なんかその年で第7級だと苦労してるんだなって思われてた気がしたけど、あながち間違ってないからいいか。
立て看板に街の地図があったので冒険者ギルドの位置を確認し移動する。レトナークという街は結構大きく人の往来もそれなりにあった。
よく考えるとこんな多くの人のところに来るのってこの世界で初めてだな、改めて30歳までをトレーニングに充てたって考えると凄いな。
そうこうしているうちに冒険者ギルドに着き、中に入っていくとこのギルドは酒場と併設で食事をしている人や朝から飲んでいる人がいた。
酒場は結構繁盛してそうだからここで飯とかも食えそうだな。依頼は――とりあえず、受付にいくか。
受付に向かうと、受付の2人の女性が話をしていた。
「はぁぁぁ。ねぇ、リリー、なんで冒険者は言葉使いとか素行の悪い人が多いんですかぁ? このままだといい人に会えないんですけど」
「知らないわよ。仕事柄戦うことが中心だから荒々しくなるんでしょう」
「でもでも、アウレーゼ様は丁寧ですよね?」
「それも知らないわよ、会ったことないんだから」
そのアウレーゼ様は豪快な性格の人でしたよ。そんなことより丁寧そうなデマリリーさんのほうに依頼のことを聞くか。
名前は机のところに三角席札があり、だるそうにしているのがダニエマさんで、丁寧そうなのがデマリリーさんである。
「すいません、依頼を受けたいんですが、こちらのギルドは初めてでして」
「え? あぁ、冒険者登録はお済ですか?」
「はい、カードはこちらに」
「第7級ですか……依頼自体はあちらにありますよ」
「ありがとうございます」
オレは依頼書が貼られている掲示板のところに行くと受付の2人が話し始めた。
「エマ。丁寧な口調の方が来ましたよ」
「いやぁ、でもぉ、あの年で第7級でしょー」
「はぁ、あなたって人は……それだといい人見つからないですよ」
「それはリリーもでしょ」
「あなた殺すわよ」
「ヒィー」
もう少し小さい声で話したほうがいいと思うけど……。とりあえず依頼書を一通り見ますか。第7級だから受けられるのも簡単なやつしか無理そうか。薬草採取にゴブリン討伐……まぁ、定番だな。
オレは薬草採取の依頼書を掲示板から取り受付にもっていった。
「こちらを受けたいんですが」
「――薬草採取の依頼ですね。大丈夫です。それでは採取しましたら、こちらの袋に薬草を入れて持ってきてください。ちなみに、こちらの薬草ですが、レトナークの南の門から出て右手に1時間くらい行ったところに森があるのでそこがお勧めです」
「そうなんですね、ご丁寧にありがとうございます。あと、魔石ってどこで売れますか?」
「え? 魔石ですか? それでしたら、魔石屋がここを出て右にまっすぐ行ったところにありますよ」
「場所までありがとうございます」
丁寧に対応してくれたデマリリーさんに礼を言って、さっそく依頼をこなすために出口のほうに向かった。
「ねぇ、リリー」
「はい?」
「あそこまで丁寧に教えてあげる必要ないんじゃないんですかぁ? 薬草採取ぐらいで」
「いいでしょ。丁寧な方に丁寧に対応しただけです。もしかして、素行が悪い人が多いのはエマの対応が悪いからじゃないかしら」
「うっ……そ、そんなわけないじゃん」
「あなたももう少し丁寧に対応しなさい」
「はぁーい」
もう少し小さい声で話したほうがいいと思うよ……というより、ダニエマさん、オレが外に出てから話し始めなさい。
オレはギルドの外に出て薬草採取のことを考えながら街の門へ向かっていた。
この薬草なら家の近くでも取れるけどせっかく教えてもらったからそっちで取りますか。先に薬草を取って、納品する前に魔石屋に寄って魔石を少しだけ現金化しておくか。
「お? さっきの冒険者さん。さっそく依頼か?」
「はい、薬草でも取ってきます」
「気をつけてな!」
オレはデマリリーさんに教えてもらった森まで歩いて行き必要な薬草8本を探し始めた。しかし、7本はすぐに見つかったのだが、あと1本がなかなか見つからない。家に帰って採ったほうが早いかもしれないがもう少し森の奥まで見に行くことにした。
森の少し奥まで歩みを進めたところオレより少し大きいぐらいの岩の下から薬草が生えていた。
――うーん、薬草が千切れるのも嫌だしこのぐらいの岩なら消してもいいかな。
岩の下から生えている薬草を取るために邪魔な岩を消滅させると、岩があった場所に薬草がたくさん生えていた。
えっ!? なんでこんなに薬草が下敷きに。ということは、消した岩は最近ここに持ってこられたとかか? ……ま、まぁ、考えても仕方ないな。下敷きになってた薬草を助けたということにして1本だけ取って帰ろう。
その後何事もなくレトナークの街に帰ってきて、事前に決めていた通り魔石を現金化するため魔石屋に向かった。魔石屋に入っていくとひげを生やしたドワーフの人が店番をしていた。
「すいません、魔石を売りたいんですが」
「おう、どんな魔石だ?」
あまり大量に売ると店も困るし出処も聞かれるから売るのは程々にしておく。外套の中に手を入れインベントリから魔石の入った袋を出し机の上に魔石を並べた。
魔石も冒険者やダンジョンみたいに階級が設定されており、大きさや純度、キレイさなどで級が決まるが、今回売ろうとしているのは真ん中ぐらいの6つ。
「――うーん、そうだな、第5級が4つと第4級が2つ、ってとこだな」
「いくらぐらいになるんですか?」
「合わせて4万5千リシアだな」
この世界のお金の基準は地球とほぼ同じぐらいで、硬貨は1000、100、10、1リシアがあり、紙幣で10000リシアがある。
「それでは、それで買取をお願いします」
「おう、それじゃ、金だ」
「ありがとうございます」
そのあと参考のためにお店で加工されている魔石を一通り見たあと冒険者ギルドに依頼の報告のため戻ってきた。
受付に採取した薬草が入った袋と依頼書を持っていくとデマリリーさんが対応してくれた。
「こちら依頼の薬草になります」
「――大丈夫そうですね。こちらの依頼は完了で問題ありません。では、報酬の1800リシアです」
「ありがとうございます」
さてと初仕事もこなしたし、とりあえずみんなに飯でも買って家に帰るか。
街で食べ物を買ったあと、ヘルミーの様子を見に行くため直接ダンジョンの10層に移動するとミコが目の前で待っていた。
『マスター、おかえりなさいませ』
「おう、ただいま」
ウィネはここにはいないみたいだが、ダドさんがヘルミーの前で座って様子を見ていた。
「ダドさん、調子はどう?」
「ヒーロさん、今日は引き続きどの程度魔法が使えるのかと基礎力の向上の訓練しかしてないですね」
「土台は大事だからな。そういえばヘルミーってどのくらい魔法は使えるの?」
「人族の学校で基本をやっていただけはあって全体的に使えますね、得意な属性は風みたいですよ」
「へぇー、風か」
「ヘルミーさん、集中が乱れていますよ」
「す、すいません!」
オレとダドさんが話し始めたことでヘルミーが気になって集中が途切れたようだ。
『マスター、もしかして今日マスターに攻撃するような輩でもおりましたか』
「ん? あぁ、気づいてたか。実際消したのはただの岩だよ」
『そうでしたか、安心しました』
それからオレはミコをモフりながらヘルミーのトレーニングが終了するのを待っていた。
うーん、さっきからずっとレインボー・オブザイヤーがこちらを向いてキラキラしているんですけど……なかなか主張が強い花だな。
レインボー・オブザイヤーが気になったので近くに見に行くとますます花びらがキラキラして輝いていた。
「ダドさん、この花触っても大丈夫?」
「えぇ、ヒーロさんであれば触っても枯れないので大丈夫ですよ。ヒーロさんか私以外が触れば枯れますが」
おいおい、触っただけで枯れるとかどれだけデリケートなんだよ。それにしても、このキラキラした花びら不思議だよな、触った感じ普通の花びらなのに常に色が変わってる。多少の気力を感じるからそれが影響してるんだろうけど――ん? なんか水滴が……蜜か?
ダドさんがあげた水かと思ったが、指に触れたときこの花の気力が感じられたのでこの花が出したものだと思った。
蜜なら舐めても問題ないかな――――あっま! この量でこの甘さはすごいな。
このタイミングでヘルミーのトレーニングが終わったみたいなのでオレはレインボー・オブザイヤーの元を離れようとした。
『――――』
ん? 何か聞こえたような気がするけど………………気のせいか?
そのあと、ダドさんに街で買ってきた食べ物をいくつか渡しオレらはいったんウィネの部屋に移動した。
「ウィネにも食べ物渡しておくよ」
「我はヒーロからもらえるものは何でも喜ぶぞ! それと、依頼されていたベッドだがこれで良いか」
「おぉ、ちょうどいいな。さすがウィネ」
「ふふふっ、もっと褒めても良いぞ」
『ウィネ、ありがとうございます。マスターと私が寝るベッドを作っていただいてありがとうございます』
「くっ! なんだその引っかかる言い方は。事実だがなんか腹立つぞ」
またミコとウィネがなんかやり取りを始めたが、オレはそれを無視してベッドをインベントリにしまう。
とりあえずこのベッドはリビングに置くしかないか。さすがにヘルミーと一緒の部屋でミコと一緒に寝るのは申し訳ないからな。
「ヘルミー、さっきのベッドはリビングに置いてオレらそっちで寝るから」
「え? わたくしがリビングで寝たほうがよろしいのでは?」
「まぁ、そうだけど。それでいいのか?」
「はい! ベッドで寝られるだけも十分ですわ」
ヘルミーのおかげで今までと同じように生活できるな。音に関しては空間の力でどうとでもできるし。
ウィネから受け取る物を受け取って、一方的にウィネを殺そうとしていたミコを止めヘルミーとともに家に帰ってきた。
3人そろってテーブルで買ってきた食べ物を食べているとヘルミーが心配そうな顔をして質問してきた。
「あの、ヒーロさん。少し気になっていたのですが、もしウィネさんのダンジョンに冒険者が攻略にこられたらどちらの味方をするんですの?」
「うーん、そもそもあのダンジョンなかなか入れないと思うよ」
「えっ!?」
「ダンジョンの入口、オレの力で誤魔化してるから」
「そうなんですのね……」
もしかしたらアウレーゼさんなら気づけるかもな。ただ、そのときはオレが間に入って止めるしかないかな。
〇今日の虹花
ヒーロ様、今日もお姿を見られて幸せです。
あの魔物のように私も触れてもらいたいです。
えっ!? 私なんかを触っていただけるのですか!?
きゃぁぁぁ、ヒーロ様に触れてもらいましたぁ!!!
――――あぁぁぁ、出るぅ、出ちゃいますぅ!
あぁぁぁ、今日は最高です。
ヒーロさまぁぁぁ…………ヒーロさまぁ……ヒーロさまぁ……あぁぁぁあぁ……




