表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/208

魔王会議

 6の月の15日、毎年この日は魔族大陸で4人の魔王が集まり魔王会議が開かれる。

 場所も毎年同じで各魔王の領土の境界上にあるジュリヤックノールと名付けられた場所で行われるのだが、ジュリヤックノールは誰かが住んでいるわけではなく小高い丘にこの魔王会議のための建物があるだけである。


 この日、日が暮れそうな時間になりジュリヤックノールに1人の魔王とその側近2人が入ってきた。


「やはり最初に来たのは私ですか」


 一番最初に来たのは中立派の魔王イレイリスである。

 イレイリスは背丈が2mぐらいある妖艶な女性で種族はヴァンパイアになる。魔王としては4人の中で一番力が劣るため表向き中立派ということになっているが実際はロリアデラに憧れているため穏健派である。


「イレイリス様はいつも30分前行動ですからね」

「あれだけこの時間に行っても待つだけと進言したのに」

「う、うるさいわね。時間を守ってなんで文句を言われないといけないのよ!」


 イレイリスの側近はニ羽暗嬢(ふうあんじょう)と呼ばれており、イレイリスと同じくヴァンパイアの女性2人組である。

 そして次にやってきたのは強硬派の魔王の1人イージウス・コココだった。


「おやおや、いつも通りあなただけですか?」

「イージウスと一緒に待つのはいつまで経ってもなれないわね」

「時間ギリギリにこればいいだけの話ではないですか?」

「くっ、それはそうだけど……」


 イージウスは魔王歴が約800年とロリアデラに次いで長く実力はバンジャックよりも上である。

 イージウスもイレイリスと同様に2mぐらいの背丈をしており浅黒い肌に紳士のような格好をしている男性で種族はサタンになる。


「それよりイージウス、側近はどうしたの? 1人だけしか連れてないじゃない」

「他の部下は仕事が重なってしまいましてね、今日は空いていた1人だけ連れてきました」


 イージウスの側近は十悪獄奴(とあごくど)と呼ばれており、魔王の中で一番多い10人を側近としている。


「イレイリス様、お初にお目にかかります。セイヤ・ギゼンインと申します。お噂でキレイとは聞いておりましたが実際にお見受けすると想像していたより何倍もおキレイで」

「ふん、そんな白々しい挨拶はいいわよ。それよりイージウスの側近に人族なんていたかしら」

「たまたま縁がありましてね。セイヤは実力もありましたので昨年の魔王会議のあとに側近に加えました」


 セイヤ・ギゼンインは人族の男性である。実はセイヤは「戯善院聖夜」という日本人でイージウスによって日本からセントリムに召喚された転移者だった。

 このセイヤには召喚された際にイージウスによって力が与えられているのだが、その際に発現した能力が【剣聖】というユニークな能力でイージウスからグングングラムという強力な魔剣も渡されている。


「面倒な話をしてやがる」

「おや、バンジャックではないですか。いつも一番最後なのにどうしたのですか?」

「けっ、イージウスにとやかく言われる筋合いはない!」

「相変わらずですね。それよりバンジャックも側近はタンの1人ですか?」

「ちっ」


 バンジャックの側近はヒーロに消されてタン1人になった。そのあと側近を新たに加えようとしたがヒーロから忠告を受けてから側近を選ぶことに慎重になっており未だにタン1人のままだった。


「おや、これは失礼しました。私が最後だったのですね」

「「!?」」


 一番最後にロリアデラと三蛇華姫の3人がジュリヤックノールに入ってきて、ロリアデラが1つだけ空いていた席に座ったがイレイリスとイージウスがロリアデラを見て驚いた表情をしている。


「ん? どうかされましたか?」

「ロリアデラ様……いや、三蛇華姫も何か変わりましたか?」

「もしかして……あなたたち以前と比べて相当強くなっていますか?」

「ええ、そうですね。私たちは昨年より間違いなく強くなっていますよ」

「ロリアデラ様でもまだ成長されるのですね」

「良い出会いがありましたので。それよりちょうどバンジャックの側近の話をしていましたので共有したいことがあります」

「ちっ、さっそくかよ」


 バンジャックはロリアデラが何を話そうとしているかはわかっている。


「六魔天人ですが、そちらにいるオポルヴェヴェタン2世以外はすべて亡くなりました」

「えっ!? 何かあったんですか?」


 イレイリスとイージウスだけでなくそれぞれの側近も驚いている。


「隠していても偽りの憶測を生むだけですので正直に言いますが、1人の人族に関わったため5人は消されました」

「人族!?」

「先に言っておきますがその方は決して悪くありません。ただ六魔天人の5人が悪さをしようとしてその人族によって消されただけです」

「悪さですか……そこにいるタン以外の側近はたしかに悪さをしそうな奴等でしたがそれでも実力者の端くれ、特にラロジエを倒すほどの人族がいるとは聞いておりませんが」


 イージウスが言うように人族の実力者でも六魔天人、特に中でも一番強い龍族のラロジエを倒すには1人では無理である。


「そうですね。その人族は特別な方です……なにせ私の恋人ですから」

「「!?」」

「私の恋人は本当に強いですよ。さきほどの話ですがこの子たちもその方に鍛えられているので強くなっています」

「ロリアデラ様に恋人ができたという噂は耳にしておりましたが、誰かが適当な噂を流したのだと思っておりました」

「イレイリスの耳にも届いていましたか。あの方は私の石化も効きませんから私もフードを取ることができるんです、あの方はそれはもう最高でして「ロリアデラ様」――はい?」


 ここでロリアデラが暴走しそうになったところをすぐにシーが止めた。


「ほどほどにしておいたほうがよろしいかと」

「……コホン、そうですね。とにかくそういうことです」

「なるほど、人族にもそのような者がおりましたか」

「ですので、イージウスも悪さをすれば消されるので気をつけたほうが良いですよ」

「ははっ、そうですな。目立つようなことはできませんな」


 イージウスはヒーロの強さがどの程度か知らないのでロリアデラの指摘を冗談半分に聞いている。


「それよりイージウス、あなたどこか疲れているように視えるのですが」

「えっ、ええ……最近は少し立て込んでおりましたので」

「そうですか。まぁ、いいでしょう」


 今回の魔王会議はバンジャックがおとなしくなったことでそこまでそれぞれが文句を言い合うこともなくあっさりと終わった。











 イージウスは魔王会議から自身の城に帰ってきてから苛立ちを少し表に出していた。


「くそっ、少し予定を変える必要がありそうですね」

「イージウス様、やはり今のままではロリアデラ陣営には」

「それもそうですが、ロリアデラが言っていた人族が気になります」

「俺と同じ人族ですか……」

「当初予定していたより時間を要しますがもっと贄を増やして2柱を召喚して力を分けてもらいましょう」


 イージウスの能力には【召喚】というものがありセイヤもその力によってこちらの世界に来ていた。

 さらにイージウスの召喚は生贄を捧げることによってより強力な力を持った対象を召喚できるようになり、今はどこかの世界の神を召喚することを計画していた。


「2柱も召喚すれば我々十悪獄奴も万全になりますね」

「ええ、そうですね。あなたたちもおそらく想像以上の力がもらえるでしょう」

「ははっ、これでこの世界は我々の物。これで気に入った女を自由に手に入れられる」

「セイヤも変わった人族ですね。まあ私もそのような人族を選んで召喚したんですが」


 イージウスが他の世界の神を召喚しようとしていた理由はその神の力を利用してセントリムを支配しようと計画していたからである。

 ただ今回の魔王会議でロリアデラ陣営の実力が上がったこと、さらにロリアデラから聞いた人族の存在のために1柱ではなく2柱を召喚する方針に変えたことでイージウスの計画は実行までにしばらく時間を要することになっていた。


イージウスと十悪獄奴で11人。

ロリアデラと三蛇華姫だと足りない……あと7人ぐらいどこかのダンジョンにいないかな()。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ