はじまりの原因
ここはセントリムという世界の神界。
洋風の庭園を思わせるようなこの場所は、草花が生き生きと育っており、キレイな小川が流れている。
その場所に一人の女性が白色の装束を身にまとい荘厳な姿で立っていた。この女性はクラリシアといいセントリムの創造神である。
「もう少し穏やかな世界になってほしいんですが」
地上の様子を見ながらどこか諦めたような表情をしてクラリシアが呟く。
クラリシアは優しく穏やかな神であり極力無駄な争いごとは避けてほしいと常々思っていた。
「仕方ありませんね。私が直接介入することは最終手段なのでできませんが、ここは別の手を使いましょう」
ここは地球の神界。真っ白で何もない一室で地球の創造神である女神ガイアが何かを心配している表情をしながら立っている。
「ガイア! お願いします、助けてください!」
なぜかセントリムの創造神であるクラリシアが切羽詰まった感じでガイアに助けを求めていた。
「落ち着いてください、大丈夫ですよ。あなたから緊急ということを聞いたのでこの部屋を用意しました。他の神には聞かれないので安心してください。で、あなたの世界で何が起こったんですか? 手に負えない邪神でも生まれましたか? 他の世界から介入でもありましたか?」
「実は――」
クラリシアが自身の世界の状況をガイアに伝えた。
「は!? それのどこが緊急なんですか? それぐらい普通だと思うのですが」
「だってぇ~、私には争いが多いと思ったんですよぉ~」
今のクラリシアには荘厳さなんて欠片もなく、頼りなさそうな雰囲気をものすごく出している。
「それぐらいあなたの世界内で何とかしなさい!」
「もう無理ですよぉ~。ちなみに、地球ってどうなんですか?」
「地球でも少なからずどこかの国家間で争いは起こっていますよ」
「地球でもそうなんですか? でもでも、私的にはもう少し少ないほうがいいかなって」
ガイアは困っていた。他の世界の神から相談されること自体稀なことなのに相談される内容のレベルが非常に低い。
(クラリシアは優しい神ですから悩んでしまうのもわかります。しかし、世界を管理する上でこれぐらいは普通なのですが……)
ガイアがそんなことを考えていると、クラリシアが今にも泣き出しそうな顔でガイアを見続けている。
(はぁ、仕方ありません――――私も昔からこの子には甘いですね)
ガイアが諦めてクラリシアに1つの案を提示することにした。
「本来はあなた自身の世界内で完結してほしいところですが、地球から1人転生させてその人間に調整をさせてみるとかどうですか?」
「うわぁ~ん、ガイア~! ありがとうございます! それでお願いします!」
「あの……もう少し考えてくださいね。自分の世界のことなんですから」
クラリシアが泣きながらガイアに頭を下げているが、ガイアは面倒そうな顔で部屋の天井を見上げている。
(1つ魂を選定しなければなりませんね……セントリムのレベルであれば地球から転生させても問題ないでしょうが)
地球の人間には戦う上での能力やスキルというものがない。そんな人間を戦闘に関してレベルの高い世界にすごい能力やスキルをセットして転生させても苦労するだけである。ガイアは我が子にあまりそのような苦労をしてほしくなかった。
ただセントリムはあらゆる世界から見てもいたって普通レベルなので、クラリシアさえうまいことやれば転生させても問題ないだろうと判断した。
(クラリシアはこのような神ですが大丈夫でしょう……おそらく)
そんなこんなで本来転生しなくてもいいはずの魂が、情けない神のせいで転生させられることになった。
「よっし! これで万事解決です!」
「クラリシア……あなた本当に大丈夫ですか?」
ガイア「どの魂にしましょうか……異世界モノに慣れているほうがいいですね。うーん、この方が良さそうですね」
クラリシア「なになに……働きすぎて40で突然死ですか。でも管理職だったんですね。では、この方で!」
ガイア「いや、我が子なので私が選ぶんですが」
クラリシア「てへぺろ(。・ ω<)ゞ」
ガイア「(怒)」