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『社交界の毒花』と呼ばれる悪役令嬢を婚約者に押し付けられちゃったから、ギャフンといわせたいのにズキュンしちゃう件  作者: 江崎美彩
最終章

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第九十五話 事の顛末5 俺の好みと青天の霹靂

 クソジジイが俺の好みを考慮した……?


 何か引っかかる。


 ああ! そうだ! クソガキがふざけて胸の大きい女が好きだなんてクソジジイ相手にうそぶいたんだった!


「閣下! 閣下はわたしの好みを勘違いしてらっしゃいます!」

「……そうですわよね」


 揶揄われる前に牽制せねばと慌てた俺の言葉を聞いて、ネリーネの顔が皺くちゃになる。


「違うんだ! ネリーネ! 泣かないでくれ!」

「いいえ。わかっておりますわ」

「だから、わかってない! これは言葉のあやで、俺が言いたいのはそういうことじゃないんだ!」


 ネリーネの瞳から涙がこぼれ落ちる。胸が苦しい……


 クソッ。クソジジイのせいでネリーネをまた泣かせてしまった。


「さっきからやかましいな。お前は、物言いのはっきりしていて、自分の信念をしっかり持っていて、しかも自分を慕ってくれるようなお嬢さんがいいんだろ? 間違っているというのか?」


 あれ?

 揶揄われると思った俺は拍子抜けする。


「……違いません。勘違いしてらっしゃるというのが、私の勘違いでした」

「そうだろう?」


 鷹揚にそう答えたクソジジイは優雅な仕草で給仕されたお茶を飲む。ここにいる誰よりも偉そうな態度だ。


 俺の好みを考慮してネリーネが選ばれたとして、もう一つまだ疑問は残る。


「あの、では、ロザリンド夫人とは……」

「何もない……とは言えないな」

「そうですわね」


 目配せをし合って二人は笑う。まるで秘密を共有する間柄のように。


「ロザリンド夫人とは昔、恋敵だったからな」


 ほらな。


 ん? 恋敵……?


 マグナレイ侯爵の発言に普段動揺などしないだろう錚々たる面々が取り乱し、食器がガチャガチャとぶつかり合う音が響く。


「ふふ。うちの旦那様はね、若き侯爵様を自分の情夫にしてしまうようなとんでもない人だったの。マグナレイ侯爵閣下とは因縁の仲なのよ」

「ロザリンド夫人には何度も呼びつけられて別れを迫られてね。そこから私が夫人に熱を上げてるなんて噂がでたんだろうな」


 青天の霹靂だ。


 そんな衝撃の事実を、二人は楽しい思い出話でもしてるかのように笑って話す。


「もともと私は自分の血を引く跡継ぎはできないのはわかっていた。だから昔から一族で優秀なものがいれば投資して後継者にしてやろうと思っていたんだ。ステファンはやっと見つけた跡取りだ。お前らが偉そうに取り合ったって無駄だ。ステファンは俺の恩義に応える必要があるからな」

「恩義……ですか?」


 そりゃ、ネリーネと見合いの席を設けてくれたことは今となっては感謝しかないが……


 恩義どころか振り回された徒労感しかない俺はクソジジイを冷ややかに見つめた。

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