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『社交界の毒花』と呼ばれる悪役令嬢を婚約者に押し付けられちゃったから、ギャフンといわせたいのにズキュンしちゃう件  作者: 江崎美彩
最終章

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第九十三話 事の顛末3 大富豪が俺を買ってくれている

「ステファン。デスティモナ伯も戸惑っている。何が起きたというんだ。事の顛末を詳らかにしろ」


 王太子殿下の命令により、俺はネデスティモナ伯爵に向けリーネとの見合いから今日までの経緯を説明する。


 ネリーネだけでなくデスティモナ伯爵も、俺が侯爵家の跡取りになるなんて話は初耳のようだった。俺の説明に目を丸くしていた。


 デスティモナ伯爵が知らない振りをする必要なんてない。つまり本当にご存じなかったという事だ。


 そうか。

 いくらクソジジイが元宰相の侯爵閣下で立場が上だとはいえ、貴族であるデスティモナ伯爵に虚偽の申告をすることなんて流石にできない。

 最初から俺を侯爵家の跡取りにする気なんてなかったから、そもそも話なんてしていなかったのか。

 合点がいった俺は、一人でクソジジイの手のひらで踊っていた自分の愚かさを嘆く。


 ……ああ。一人ではないか。

 呻き声をあげているモーガンを見てため息をつく。


 ターナー子爵の夜会に持たされた封書に、『ネリーネとの婚約が侯爵家の跡取りになるための条件』なんて事が書かれていなければ、いくらモーガンだってここまでの振る舞いはしなかったはずだ。

 一体クソジジイに何の思惑があったというのだ。


 真実を知りたくてもクソジジイは俺の説明に眉間をつまみ、これ見よがしにため息をつくばかりだ。自己弁護すらせずに黙秘している。


 最初は驚きを隠せない様子だったデスティモナ伯爵も俺の説明に思案を始めた。


 説明を終えると、嫌な沈黙が続く。


「で、結局ステファンがマグナレイ侯爵家の跡取りになるの?」

「私の話を聞いていましたか」


 場の雰囲気に耐えられなくなったのか、お坊ちゃんが暢気そうな声で問いかける。

 俺が睨むと肩をすくめた。


「……そうだな。ステファン君が侯爵家の跡取りにならないのは、こちらとしては好都合だ。これからは海を越えた国々との貿易も活発になる。今までは思いもよらなかった商売の好機が転がっているはずだ。これからの時代、うちの事業を発展させるのには、君のような多国語を理解し、他国の歴史にも造詣が深い優秀な男が必要だ。侯爵家の跡取りなんて話は、元々こちらは知らなかった話だ。ステファン君が侯爵家の跡取りにならないのであれば、実業家になればよい。ネリーネと結婚するなら、君にいくらでも投資してやろう」


 デスティモナ伯爵は沈黙を破ると、跪いていた俺の前に立ち、手を差し出す。

 俺がその手を取ると、引き上げられて肩を抱かれた。


「我が家がステファン君を独占できるなら安いもんさ」


 デスティモナ伯爵は俺を評価してくださっている。


 自分の愚かさに打ちひしがれていた俺の耳に、デスティモナ伯爵の言葉は甘く響いた。


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