表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『社交界の毒花』と呼ばれる悪役令嬢を婚約者に押し付けられちゃったから、ギャフンといわせたいのにズキュンしちゃう件  作者: 江崎美彩
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/105

第九十二話 事の顛末2 ただなしがない役人でも伯爵家のご令嬢を幸せにしたい

「違うんだネリーネ! 貴女との婚約の話ではない!」

「そっそうですわよね! いやですわ。わたくしったら心配性なものですから、つい取り乱してしまいまして」

「信じてくれ」


 俺はネリーネのもとに駆け寄りひざまづいた。

 扇子を閉じたネリーネが俺を見つめる。


「……もっ……物語の王子様みたいですわ……」


 この場にわが国の本物の王子様である王太子殿下がいらっしゃるにも関わらず、ネリーネはそんな可愛い独り言を漏らす。


 クソッ。可愛いすぎて困る。


 俺はたまらず小さな愛らしい手を取り握りしめる。胸元に輝くネリネの花のブローチが光を反射して輝いていた。


「本当に、私のためによろしいの?」


 皺くちゃな顔で睨みつけ、涙が溢れるのを我慢するネリーネに胸を撃ち抜かれる。


「もちろん」


 俺は力強くうなづいた。


「お前達の茶番はいつ終わるんだ」


 呆れた声に周りを見回すと、錚々たる面々から生暖かい視線が送られていた。

 視線に気がつくと居心地が悪い。


「失礼しました。えっと、その、ネリーネと結婚したいのです」

「婚約者なんだから、結婚するに決まっているだろう」

「そうではないのです。侯爵家の跡取りになるための条件としてネリーネと結婚をするのではなく、心からネリーネとの結婚を欲しているのです」


 マグナレイ侯爵の眉がピクリと動く。


「閣下がロザリンド夫人とお会いするための口実なら十分なほど役割は果たしたではありませんか。私は愛するネリーネを、自分が侯爵家の跡取りになるための道具として使うなんて我慢できません! 養子縁組の話を白紙にしていただけませんか? 俺は俺の力でネリーネを幸せにしたいんです!」

「ステファン。お前は何を言ってるんだ」


 眉間を押さえるマグナレイ侯爵を尻目に、お坊ちゃんが口笛を吹く。


「冷やかさないでください。俺は本気なんです!」


 俺は立ち上がり、今度はデスティモナ伯爵の元でひざまづいた。


「私は侯爵家の跡取りではありません。ただのしがない役人ですが、ネリーネと結婚させてもらえないでしょうか」


 そう言ってこうべを垂れる。


 頭の上からデスティモナ伯爵のため息が聞こえる。恐る恐る顔を上げると困惑した様子のデスティモナ伯爵と目があった。


「ステファン君。ちょっと待ってくれ」

「待てません! お願いします!」


 再び頭を下げる。


「ハロルドと投資先の視察から帰ってきたらこの大騒ぎで、何が何やら。ステファン君が侯爵家の跡取り? ネリーネとの結婚が条件? マグナレイ侯爵閣下と母が会うための口実? 一体どういうことだい?」


 困惑顔のデスティモナ伯爵からそう言われ、俺も困惑した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ