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第六話 青天の霹靂6 そういうわけでいまからお見合いだ

「閣下が相応しいと思う人物を焦らせるための当て馬にでもされたいのでしょう。協力しますよ」

「素直じゃないな。お前を気に入ってると言っているだろう」


 不敬である事は分かっても俺は胡乱な眼差しをマグナレイ侯爵に向ける。


「閣下ともあろう方が一族に不満を抱かせる様な差配をされるとは到底思えませんから。何か裏がおありなんでしょう」


 仮に本気で俺なんかを跡取りにしようなどとした日には反発が起きる事は想像に難くない。巻き添えを食いたくない俺は協力体制にある事を伝えた。

 マグナレイ侯爵はそんな考えはお見通しなのか鼻で笑う。


当主()の考えは一族の総意のはずだが? それに私の顔に泥を塗る様な奴等に気を使う必要があるか?」


 モーガンにすら物申せない奴らがクソジジイに物申せるわけがないか……


「ただ、まぁ、当主の私がステファンを気に入っているというだけで家督を継がせる訳にはいかない。ステファンにはこちらの交換条件は飲んでもらうがな」

「交換条件ですか……?」


 ほらやっぱり裏があるじゃないか。

 俺は身構えた。


「ということでステファン。今からお見合いだ」

「はぁ? お見合い? 今から⁈」

「もちろん。今から紹介するご令嬢と婚約するのが条件だ。せっかく跡取りにしたのだから、栄光あるマグナレイ一族の発展のために、いつまでもステファンに独身でいられては困るからな。どうせ仕事ばかりで愛人どころか恋人の一人もいないんだろう?」

「……愛人なんか必要ありません。私は心に決めた女性一人いれば結構です」

「まぁ、それは人それぞれだからな。でもその心に決めた恋人もいないんだろう?」

「そりゃ……そうですけど。でも、今からなんて急すぎます!」


 侯爵家に訪問するからと着た一張羅は暑いからと脱いで小脇に抱えていたためしわくちゃだ。顔の汗は拭ってはいるが寝不足でクマも酷い。髪の毛も乱れてボサボサである。


「急なものか。用があるから顔を出せと手紙を出しているのを無視し続け、今日だって屋敷で用意をさせようと朝早く馭者を向かわせたのにそれを追い返したのはお前だ」


 俺は言葉に詰まる。


「悪い話じゃないさ。すでに応接室で素敵なお嬢さんにお待ちいただいている」

「えっ」

「ステファンは王太子の婚約者が好みなんだろ」


 したり顔でマグナレイ侯爵は俺をみる。


 まさか⁉︎


「お待ちください閣下! 王太子殿下のご婚約者様は、それはもう王太子殿下のご寵愛を一身にうけていらして、いくら閣下でもどうにかなるものでは……」

「……お前は賢いくせに大馬鹿者だな。お前のお見合い相手に王太子の婚約者を用意する訳がないだろう」

「……そっそうですよね。失礼しました」

「本人は用意できないが、好みはわかってるから任せておけと言う事だ。ほらいくぞ」


 そう言ってマグナレイ侯爵は心の準備ができていない俺を席から追い立てた。

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