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『社交界の毒花』と呼ばれる悪役令嬢を婚約者に押し付けられちゃったから、ギャフンといわせたいのにズキュンしちゃう件  作者: 江崎美彩
第六章 可愛い婚約者にズキュンさせられっぱなしの俺

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第七十四話 ドレスのオーダー6 毒花令嬢の可愛さに俺と侍女だけ撃ち抜かれる

「弟子の一人が独り立ちを希望しておりましてね。ネリーネ様のドレスのデザインを弟子に任せてよろしいかしら? 師匠として弟子の巣立ちに何かしてやりたいと、ずっと思案しておりましたの。ネリーネ様の婚姻用のドレスを担当させていただければ弟子にも箔がつき独立のはなむけになりますわ。もちろん生地や縫製はこのメゾン・ド・リュクレールが責任を持つてやらせていただきますのでご安心ください」


 そう言ったクソババアは作業机で刺繍をしている女を呼んだ。近寄ってきた女は迷惑そうな顔を隠そうともしない。


 どう考えても師匠の顧客である毒花令嬢を奪ったなんて「独立のために手段を選ばない」といった噂をたてられるだけでいいことなんて何一つない。弟子の独立の出鼻をくじきたいのだろう。

 あからさまにネリーネを厄介払いした上で弟子を貶めたい目の前のクソババアと、迷惑そうにしている感じの悪い女に腹を立てる。

 二人の目の前に、預かってきたマグナレイ侯爵家の蝋印が押された封筒を叩きつけたらどうなるだろう。

 そんなことをしても、今俺が一人痛快な気分に浸れるだけだ。


 ネリーネはロザリンド夫人に口止めでもされているのか、俺が侯爵家の跡取りだなんて言って回ったりすることがない。それはロザリンド夫人がことの真相を理解しているからなのか、ネリーネが素直だからなのかはわからない。

 ただわかっているのは、俺がマグナレイ侯爵家の跡取りになるはずなんてないということだ。自分で墓穴を掘って俺が笑われるだけならまだしも、ネリーネにまで恥をかかせるわけにはいかない。


 ネリーネの後ろに控えたままのミアが視界に入る。口角だけを辛うじて持ち上げた気持ちの入っていない笑顔と、上品な街着のスカートを力一杯握って血管の浮き出ている手の甲からひしひしと怒りが伝わる。

 俺もミアもネリーネを侮辱された怒りで気が狂いそうなのに、目の前のネリーネはクソババアの協力のお願いを嬉しそうに聞き、感じの悪い女に笑顔を向ける。


「まぁ、貴女が独立されるのね。女性職人が独立するだなんてなかなかできることではないわ。誰かパトロンは見つかりましたの? 女だてらに自分の店を出すのは大変ではなくて? わたくしもこちらの服飾店(メゾン)には、お世話になっていますから、協力させていただきますわ。でも、マダムはお寂しいんではなくて? 本当は独立なんてさせずにいつまでも手元に置いておきたいのでしょう?」


 素直か!


 いや、そうだった。ネリーネは素直なのだ。こんな時に可愛いを発揮している場合ではないが、俺とミアはネリーネの可愛さに心を撃ち抜かれる。

 ただ、ネリーネのありもしない言葉の裏を勝手に解釈したクソババアには「本当は独立させたくなくて邪魔したいのでしょう」と、感じの悪い女には「パトロンもいないのに独立なんて無謀なこと女のくせに」とでも聞こえたようで、二人は複雑そうな顔をしていた。


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