表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『社交界の毒花』と呼ばれる悪役令嬢を婚約者に押し付けられちゃったから、ギャフンといわせたいのにズキュンしちゃう件  作者: 江崎美彩
第五章 毒花令嬢は俺の可愛い婚約者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/105

第五十三話 満ち足りた日々12 毒花令嬢が可愛いのを知っているのは俺だけだ

 たゆん。たゆん。


 視界の端で真っ白な谷間が二つ揺れる。


 普段男ばかりの職場で、女官見習いの地味なお仕着せに身を包んだ王太子殿下の婚約者と真紅のドレスに身を包んだネリーネ嬢が来客用のソファに座り意気投合していた。


 少女達の発する華やかな雰囲気に、俺の口元はだらしなく緩む。


 先日ブローチを渡すついでに、王太子殿下の婚約者様からネリーネ嬢に事業の話をしたいと打診を受けている話を伝えると、デスティモナ伯爵とトワイン侯爵の計らいでこの日の面談が準備された。

 トワイン侯爵領に建設する予定の、川の流れを動力にした編立工場への投資話はとっくにまとまっているのに、まだドレスの話で盛り上がっている。


 デスティモナ家御用達の服飾店(メゾン)は頼まれたらなんでも作る様な拝金主義の店なのだろう。誰から見ても派手すぎて悪目立ちする装いは、王宮に参じるからとネリーネ嬢の気合が入りまくり、今まで見た中で一番贅を尽くすだけ尽くして目が潰れるほど眩しい。

 そんな贅を尽くしたドレスに顔を近づけてじっくり観察した王太子殿下の婚約者様はその無駄に華美な刺繍やレースをうっとりと褒め称え、ネリーネ嬢を質問攻めにしていた。


「ネリーネ様のドレスの刺繍は本当に見事な手仕事だわ。この一着を作るのに何人の針子が関わったのかしら。さすが国内でも有数の資金力があるデスティモナ家ね。こんなに優秀な針子を何人も抱えた服飾店(メゾン)とお付き合いされているなんて」

「あら新市街のメゾン・ド・リュクレールに依頼したものですわ。ご存知ではございませんの? 王都で最高峰のオートクチュール専門の服飾店(メゾン)といえばリュクレールですから、名門トワイン侯爵家のエレナ様ならご存知かと思っておりましたわ」

「まぁ! リュクレールのドレスなのね! 名前は聞いたことがあるわ。でも残念ながら我が家は昔から、自分達に使うお金があるなら領民に使うのが信念なもので、オートクチュールの服飾店(メゾン)とはあまり縁がなくて行ったことがないの」


 名前で呼び合い、きゃらきゃらとした笑い声をあげて服飾店(メゾン)の話題に花が咲いている。


「すごい嫌味の応酬だな」

「あんな笑いながら……やっぱり王太子殿下の婚約者様も貴族女性だったんだな」

「え?」


 俺の席に近づいて耳打ちしてきたケインとニールスの発言に俺は驚く。


 嫌味? どこが?

 いつも通りネリーネ嬢は思った事を口に出しているだけだ。


 それを証拠に二人ともあんなに嬉しそうに楽しく笑っているじゃないか。


「……ネリーネ嬢は素直な少女だぞ。嫌味でもなんでもなく思った事を言っているだけだ。それに王太子殿下の婚約者様も楽しそうじゃないか」


「本当に重症だな」


 そう言ったケインはニールスと顔を見合わせて苦笑いをしている。


 腑には落ちないが、まぁ、いい。ネリーネ嬢の可愛いさは俺だけがわかればいいのだから。


 俺は優越感に浸りながら二人を眺めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ