表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『社交界の毒花』と呼ばれる悪役令嬢を婚約者に押し付けられちゃったから、ギャフンといわせたいのにズキュンしちゃう件  作者: 江崎美彩
第四章 毒花令嬢にズキュンするわけなんてない!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/105

第三十四話 生まれてはじめてのデート5 可愛いなんて思ってしまったら俺の負けだ

「ほら、カフェに行って感想を話すんだろう」


 チケットを手に入れた俺たちは劇場通りを後にして街の中心に移動する。


 貴族や富裕層だらけの劇場でも目立つ毒花が、市井の人々で溢れる街中で目立たない訳がない。早くカフェに入り馬車が来るまでの時間を潰さなくては。

 俺は慌てて街を見回しカフェを探す。

 今はカフェで過ごすのにもってこいの昼下がりの穏やかな時間だ。どこもかしこも賑わっている。


「ねぇ、さっきからたどり着く気配がありませんけど行くあてはありますの?」


 俺の服を掴み顔の中心に皺を寄せて不満げな表情を隠さない毒花に聞かれる。普段職場と宿舎の往復で、朝昼晩ともに官吏向けの食堂ですませている俺にもちろん行くあてなんてない。


「どこかは空いているだろう」

「貴方はモテたことがないからご存知ないでしょうけど、休日の昼間なんてどこのカフェも賑わっているのよ。あてもなく歩いて、空いている店なんてあるわけないし、もし空いているカフェがあったとしても誰も入りたがらないようなろくでもない店よ。そういう店は噂が立って誰も近づかないわ」


 毒花のいう通り簡単にカフェは見つからない。


「ねぇ、どうせ空いているカフェなんてないのだから、他のお店を見てもいいかしら?」

「感想を言い合うのが醍醐味なんじゃないのか」


 余計な寄り道なんてしたくない。なんなら誰も入りたがらないカフェに入って毒花の感想を聞いて終わらせたい。


「でも、貴方感想を言い合えるほど観てらして? ずっと寝ていらしたじゃない。素晴らしいお芝居もろくに見ずに寝てしまうなんてよっぽどお疲れだったのね。お兄様は王太子殿下のからお仕事のご褒美として長期の休みをいただけてるというのに、貴方はまだ仕事をしてらっしゃるのね。効率的に仕事を終わらせることはできないのかしら。二十日も先にならないとまともに休めないなんて」

「貴女の兄上とは別の職務をしている。私は貴女の兄がやり遂げた仕事を引き継ぐ職務を担っているのだから、貴女の兄が休めるようになったからとすぐ休めるわけではないのだ。それに二十日後まで働き詰めな訳ではない。今日だって休みだから貴女を芝居に連れてこれたのだし、先程だってもっと前の休みにチケットをとろうとしただろう」


 声が大きくなった自覚をしてパッと周りを見渡す。俺たちは悪目立ちしてヒソヒソ陰口をたたかれていた。

 どこでもいい。早くこの場から立ち去らなくては。


「そうでしたわ。心配だったもので、つい……」

「あ、いや、こちらこそ大きな声を出して申し訳なかった」

「あっあの店に行きたいと思っていたの。うちの使用人達がここで恋人に買ってもらったブローチを付けていたのだけど、流行っているらしいの」


 恋人にもらったブローチ?

 もしかして、コイツは俺の事を恋人だと思っているのか?

 えっ? だから、あんなに可愛い仕草で俺のこと……

 って、違う。可愛いなんて気のせいだった。落ち着け。


「行きませんの?」


 毒花が掴んでいた俺の服を引っ張り小首を傾げる。


 ヒュッ。


 心臓が喉から飛び出るかと思うほど跳ね、一瞬呼吸ができなくなる。


「いっ行こうか」


 俺は再び可愛いなんて思ってしまったことを頭の中で必死に打ち消し、毒花の目指す店に向かうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ