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『社交界の毒花』と呼ばれる悪役令嬢を婚約者に押し付けられちゃったから、ギャフンといわせたいのにズキュンしちゃう件  作者: 江崎美彩
第三章 毒花令嬢にギャフンと言わせたい!

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第二十六話 八年遅れの社交界デビュー6 高級な夜会服と派手なだけな夜会服の違いがわかるご令嬢

 ……おいおい。先制攻撃をしてきたのはその女の方だろうがよ。


 おそらく最悪の社交界デビューを飾った俺は、モーガン達がお芝居さながら大袈裟に騒ぎ立て周囲もそれに同調しているのを白けた気持ちで眺める。

 毒花はといえば顔をしわくちゃにして小首を傾げモーガンのツレの美女を睨みつけている。確かに怖い。自業自得とはいえ少し同情する。


「おい。ステファン。いままで夜会なんか来たこともなかったはずだろ? それなのに今日はどうしたんだよ」


 美女を慰めるのを口実にして、そのままどこかに二人でしけこんだりすりゃいいのに、モーガンは立ち去らない。ニタニタしながら俺に話しかけてきた。


「ははーん。さてはこの屋敷で働くことにでもしたんだな?」

「……」

「おや? ターナー子爵家の使用人として、エスコートがいないご令嬢をホールまで誘導しにきたんじゃないのか?」


 ハロルドから見合い話を聞いて煽りにきたくらいなんだから、俺が毒花のエスコート役で来ていることくらいわかっているくせに。あえて的外れな発言をしているのは俺と毒花への挑発だろう。あからさまな挑発に乗るほど馬鹿ではない。いちいち反応しないに限る。


「違うのか? もしかして招待を受けてるのか? おいおい。そんな地味な夜会服じゃ使用人と間違われてもしょうがないぜ?」


 確かに。侯爵家で着せられた時は自分に不釣り合いなくらいの豪華に思えた夜会服も、色とりどりに着飾る貴族の子息達に混じると目立たず埋没する。街中で見たらびっくりするくらい派手な赤い長上衣(ジュストコール)に白いキュロットを履くモーガンの方が場に馴染んでいる。そんな中で目立てるほど派手な毒花に感心していると……


「あら、ステファン様がお召しになっているのは国内でも質が良い事で有名なキャンベル産の絹織物だわ。漆黒に染めるのだって多くの染料が必要だもの。見た目の地味さだけに惑わされてはいけませんわ」


 俺がせっかくモーガンを無視していたのに、黙りこくっていたはずの毒花が興奮して嬉しそうに、キャンベル産の絹織物は糸の捻が均一だとか糸密度が高いとか特徴を語り始めた。

 ……なるほど。マグナレイ侯爵家で用意された夜会服は結構な品物らしい。さすが侯爵家。それにしても毒花は生地を見ただけでどこの産地の生地かわかるのか……いや腕を組んでいたのだから、生地にはしっかりと触れていたのか。そう思い出すと、ふと腕に触れた胸の感触が生々しく蘇る。俺は慌てて思案に耽るのをやめて、毒花とモーガンに意識を戻す。


「──つまり、貴方が着ている見た目だけ派手な夜会服よりよっぽど上質なものなのよ?」


 この会場で一番見た目が派手な人間に、見た目だけ派手な夜会服と指摘を受けて、モーガンの顔は怒りで赤く染まっていた。


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