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第十一話 最悪な第一印象5 絶対にギャフンと言わせてやる

「ネリーネちゃん。自分の花をそんな風に言わないのよ」

「お婆さまはネリネをわたくしの花なんて仰いますけど、そのネリネの花は我が家の庭にだって咲きませんわ。ネリネがリコリスと別の花でわたくしの花だというのなら我が家の庭に咲いていてもおかしくないんじゃなくて? 植えていないのはリコリスもネリネもアガパンサスも全部一緒くたに嫌われてるからだわ」


 ロザリンド夫人が取りなそうとしても毒花の持論が止まらない。

 最初は言い返していた庭師の爺さんも呆れ果てたのか花がらを摘み始めている。


「んな事どうでもいいだろ。お前ん家の事情なんて知るかよ」


 つい呟いた言葉に毒花は勢いよく振り返ると俺を睨みつける。


「まぁ! どうでもいい? リコリスやリコリスに似た花は忌み嫌われているのは常識なのにどうでもいいなんて、一般常識も知らなくて官吏の仕事ができるのかしら。自己紹介をされた時にご自身で優秀だとおっしゃってましたけど、それは王立学園(アカデミー)という狭い世界の中だけじゃございませんこと? わたくしのお兄様はステファン様の一歳年上で王立学園(アカデミー)でも王宮でもステファン様の事をよくご存知だということで、どんな方なのか伺っていましたの。お兄様からは『マグナレイの名に相応しい』理知的で将来有望な男だとお聞きましたので、お会いするのを指折り楽しみにして参りましたのよ。あぁ。それなのに、貴方と話をしていてもそんな知性の片鱗は微塵も感じませんわ。謙遜でもされてらっしゃるのかしら。能ある鷹は爪を隠すといいますものね」


 花の話だったはずが矛先が俺に向かう。なぜこんな女に勝手に期待されて期待はずれだと罵られなくてはいけないのだろうか。

 俺が返事をしないのを見るとフンと鼻で笑う。


「わたくしとしては、別に謙遜せずに見せつけていただきたかったものですけど! まぁどうせ今後はお見せいただく機会もないでしょうから、お兄様に改めてどこが将来有望なのか伺うことにいたしますわ」

「いいえ。それには及びません。先程は貴女が王立学園(アカデミー)を卒業したばかりと伺っていたので、共通の話題になればとつい思い出話に熱が入りましたが、それだけでは私が貴女の兄が言うような将来有望な人間であることは伝わらなかった様ですので今後貴女の目でしっかりと確認いただければと存じます」


 俺はそう言って毒花令嬢を睨みつける。怯むかと思えば眉を顰めより険しい顔で俺を睨み返してきた。

 

 俺は日々業務範囲を超えて役に立たない奴らの仕事まで請け負っている。俺が仕事ができないのなら、誰が仕事ができるって言うんだ……

 それなのに日頃、仕事もできない役立たずのくせに家柄を笠に偉そうに振る舞う職場の貴族の令息達に虐げられ、雲上人の本家の侯爵様に呼び出されたかと思えば私利私欲に振り回され、仕舞いには忌み嫌われている毒花とお見合いさせられた上にその相手に侮られる筋合いはない。


 やってやる。


 俺は城下町の芝居小屋で流行っている、性悪な貴族達に虐げられた主人公が活躍し最後に手痛い一撃を与える痛快劇について思い出し、決意を固めた。


 絶対ギャフンと言わせてやる!

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