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永射わかな

 実家の駅前にある百貨店は新春初売りセールで賑わっていた。家族と一緒にここぞとばかりに散財しまくったのだが、あと一つだけ買うものが残っていた。


「お菓子が無難だが、あの子間食は絶対にしないからなあ。服はクリスマスプレゼントで買ってあげたばかりだし、となるとアクセサリー……は私にはよくわからん。さてさてどうしたものか」


 ブツブツひとりごちてたら、愚弟の慎之介が両手に紙袋を下げてやってきた。


「姉さん、父さんと母さんがまだかって急かしてるよ!」

「ちょうど良いところに来た。何か女子中高生向きのアクセサリーで良いやつを知らないか?」

「あの子にプレゼントすんの?」

「そうだ」


 聞かなくてもわかってるだろうに。


「僕もよく知らないよ」

「そんな格好してるのに?」


 慎之介はジャケットの下にセーターを着込み、下はレザーのショートパンツという出で立ちで、中性的な顔も相まって女子にしか見えなかった。性的嗜好は関係なしに単にその日の気分で男物女物の服装を着るのだが、私の目からすれば女子の格好の方がよく似合っている。


「アクセサリーなんか無くても可愛いからね」

「こいつ」


 ちょっとだけ口をつねってやりたくなった。


「とにかく迷ってんなら一旦家に帰ろう。また後から来たらいいじゃん」

「そうするか」


 エスカレーターで降りようとしたところ、二階フロアにあるものにふと目についた私は研究難題の解決法を思いついたが如く「これだ!」と両手を叩いた。


「姉さん?」

「先に行っててくれ」


 二階で降りて向かったところはスポーツショップ。一目散に目についたものを手にとってササッと会計を済ませ、またエスカレーターに乗って一階まで降りた。


「何買ったの?」

「おしゃれかつ実用的なものさ」


 私は品物を見せた。


「ああ、キャスケットね。なかなか可愛いデザインで……ってあごひもがついてる?」

「ちょっと触ってみろ」

「あ、堅い」


 私が買ったのは自転車用のヘルメットだった。だが通学用の無骨なデザインやスポーティーなデザインとは違って、キャスケットのような形をしていた。


 星花女子では自転車通学生にヘルメット着用を義務づけていないので、ことりちゃんも通学時にヘルメットを着けていない。だけどヘルメットは自身の安全を守る、ひいては健康を守ることに繋がるし、この小洒落たデザインならプライベートでも使えそうだ。


「いいねー。ちょっと被らせてよ」

「だめだ」

「そんな怖い顔して即否定しなくてもいいじゃん……」


 恋人にあげるものを先に使わせるなんざ、弟相手でも絶対にいやだ。まあこの気持ちは本当に大切な人を見つけない限りわからんだろうな。私もつい最近知ったばかりで偉そうなことは言えないが……慎之介も拗らせる前に早いところ見つけて欲しい。

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