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阿比野明

 太陽は世界中の神話で神様として崇められているし、日本でもご存知天照大御神が太陽神として信仰を集めている。地球のありとあらゆる生命の元になっているからこそ神格化されているのだけれど、生きている中で太陽の恵みを常日頃から実感している人たちはどれぐらいいるのかはわからない。


 初日の出は太陽の恵みを人々に思い起こさせるときだと私は考えている。幸いなことに今年は雲ひとつない中で初日の出を迎えられ、私は大切な人と一緒に昇りゆく太陽を拝むことができた。


 わあ、と周りが歓声を上げる中、私は手を合わせてお祈りをした。願い事よりも先に一年間を無事過ごせたこと、えるちゃんというかけがえのない大切な人と出会えたことに感謝して。


 えるちゃんも私と一緒に手を合わせていた。何をお祈りしていたの、なんて聞くのは野暮だ。


「初日の出ってこんなに綺麗だったんだね。一応、天文部なのに太陽のことには全然無関心だったからわからなかった」

「今年のは格別に綺麗だよ。えるちゃんが一緒だから余計にそう見えたのかな」


 なんて自分でも臭いセリフを言ってしまい、えるちゃんも私も顔を赤くした。


 周りを見てみると、家族連れと同じぐらいにカップルの姿も多い。空の宮海浜公園は元々デートスポットで有名だからカップルがいてもおかしくはないのだけれど、その中にたまたまボランティア部の萩家先輩と市川さんがいて、目が合った瞬間すかさず向こうから話しかけてきた。


「あけましておめでとうございます!」

「あけましておめでとうございます」


 今年もよろしくお願いします、と典型的な挨拶を交わすと、市川さんが「アビー先輩の彼女さんですか?」と聞いてきた。


「うん、冴島えるちゃん。服飾科の先輩だよ」

「先輩にちゃんづけ呼びっすか、いいっすねー! 私もちゃんづけしたいけど許してくれないんすよ」

「そんな柄じゃないし……」


 と萩家先輩はもじもじしだした。二人は人前だと以前と変わらずお互いに市川さん・萩家先輩と呼んでいるが。


「じゃあプライベートでは何て呼んでるの?」

「ハギハギとイッチーです!」

「ハギハギ……」


 イッチーはまだわからないでもないけど、ハギハギって呼ばれるぐらいならまだちゃんづけの方が良い、と思うのは私だけだろうか。


「ところでお二人はお揃いのマフラーしてますけど、もしかして冴島先輩の手編みとか?」

「そうだよ。凄く良くできてるでしょ?」


 などと自慢してみる。ただしお揃いというのは若干違っている。えるちゃんのマフラーは濃青色をベースにしていろんな星座をあしらっているものだけれど、私のはこいぬ座・おおいぬ座・オリオン座でえるちゃんはおうし座・ふたご座・ぎょしゃ座。いずれも代表的な冬の星座だ。授業で編んだものだから大したものじゃない、とえるちゃんは謙遜していたけれど、風の噂で教師からの評価はかなり高かったと聞いた。


「わー、良いなあ。私もイッチーに編み物してあげたいけど、手先が不器用なのよね……」


 萩家先輩が軽く嘆いていると、


「不器用? 何言ってんの。イブの夜は初めてとは思えないぐらい精密なテクニックを披露していたのに……」

「ちょっ、何言ってんの! こ、これはマリカーで盛り上がってただけだから! あ、そうだ! あっちでお雑煮振る舞ってるから行ってきたら?」


 萩家先輩が慌てまくっている。果たして盛り上がったのはマリカーだけだったのか。どうしてもそんな疑念を抱いてしまう……。


「マリカーってゲームだっけ?」


 そう聞いてくるえるちゃんは全く純粋で、ちょっぴり安心した自分がいた。


 ちなみにお雑煮は無料とは思えないほどの美味しさだった。


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