下村紀香
新年明けましておめでとうございます。
今年はね!一月からね!飛ばしていきますよ!いいっすか!それには今日!話のネタもろうたら!一本目粘って!とにかくモチベ低下と勝負して!今年一年ね!目一杯やってください!
父ちゃんは今年も仕事で家にいないから、いつも通り母ちゃんと二年参りだ。いや、いつも通りじゃないな。
「見てよ母ちゃん。静のヤツ、今年はたくさんの仲間と一緒だぜ?」
「あら~微笑ましいわねえ」
静から送られてきたのはソフトボール部の一年坊どもがケーキを食べまくっている画像。大晦日は静の誕生日でもあり、一年坊どもが同期のマネージャーを祝うために駆けつけてきたってわけだ。静は口数は少ないけれど同期にはすんげー好かれてるんだよな。静パパ仕込みのお菓子作りテクニックで手作りのお菓子を振る舞ってあげてるから。
返信しようとしたら二枚目が来た。
「あらあら~」
と母ちゃんはニタリと笑い、あたしはげげっ、と変な声を出してしまった。
西尾と弓削という一年坊が堂々とキスをかましてる画像。しかもベロとベロを絡ませてうっとりとしやがっている。これ悪ふざけでやってるわけじゃねえな……。
『こいつら何やってんだ!?』
とメッセージを送ったら、
『知らないんですか? 西尾さんと弓削さんずっと前からつきあってましたよ?』
そうだったのか……そういやこいつらセカンドとショートだったな。引退した一個上の某色ボケコンビと一緒のポジションを思い起こしちまうぜ。ったく。
『あんまり羽目を外すなってキャプテンが言ってたって伝えとけ』
と困り顔の絵文字を添えて返したところで、参拝列が動き出した。
「そろそろ年明けの時間ね。来年の願い事はたくさんあるだろうから、ちゃんと伝えられるよう頭の中で整理しておくのよ」
「うん、わかってるよ」
静ともっと仲を深められるように。インターハイに出られるように。どこか良い大学や企業が注目してくれるように。それから父ちゃん母ちゃんがずっと健康でいられるように。あたしやチームメイトのみんなも怪我や病気をしないように。お願いばっかだけど、どうか神様に願いを聞き届けて欲しい。立成19年はあたしの現役最後の年だから。