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元貴族のお嬢様は、ギルド生活を満喫しています〜いろいろ忘れていたら、騎士になった幼なじみが迎えに来ました  作者: 天野乙音


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魔力とともに

体が浮いている。

「うわっ、急に下げないで!」

その後、ラウルに抱えられるような格好になった。

「どこまでできるかわからないけれども、最低限はかけられそうだよ。」

あまりに喜んでぎゅうぎゅう抱きしめているけれども、私に魔法をかけられるようになってそんなにうれしいの?

「全体的には装飾品や昔かけたものである程度守られているけれども、突然何かに襲われるという分に対して反撃するようなものはかけていないから。」

ギルドの依頼でもそう反撃を受けるということはないのだけれども?

「知らない人に囲まれて腕をつかまれたり抱きしめられかかったのに?」

「あれはなんとかなったわ!」

ラウルに

「ああいうのはリアではなくて、僕がするべきだったのに。

こわい目に遭わせてごめん。」

と小声で言われた。

「別にこわくは。」

「じゃあどうして泣いてるの?」

言われて、涙がぽろぽろと出ていることに気が付いた。



「うれしそうだな。」

ディルク様に突然そう言われた。

そんなに表に漏れているのだろうか?

「そうですか?」

指摘されたのだから隠すことはないので、表情を和らげた。

「それが証拠に、今の顔、ほかの人が見たら絶対に驚く。」

「ほかではしません。

実は、妻に私の魔法が普通にかかるようになりました。」

周りがいちいちうるさいので、いつもはあまり表情を変えない。

ディルク様にならいいか。


ラウルはうれしくて仕方がないという顔になった。

「・・・君はそういう表情もできるのだな。

かからないと言ってから一週間だが、そんなに短い時間で満たせたのか?」

「全部を満たさなくても、常に体内にあるようにすれば良いのではないかと思って、少しずつたまるようにしてみたのですが、今のところそれが良かったみたいです。

これで、なんとか守れます。」

ディルクはふと、先日兄に聞かされた話を思い出した。リアが放った魔法が強烈すぎたというのを。

兄が解除するのをあきらめるというのは、聞いたことがない。

リア自身も魔法が使えるようになっていて、しかも普通レベルじゃないのだから、別にかけられなくても大丈夫じゃないのか、と言いたかったが、喜んでいるのでやめた。



今日は日曜日でギルドは閉っている。

「申し訳ありません。」

木曜日にお願いして、それなら早い方がいいということでさっそくやることに。

ラウルも私も数日後にすることになるとは思っていなかった。

「ちょうどよかったですよ。いろいろ難しいものがたまっていたから。」

私の魔法の練習もかねて、魔法を使わないといけない依頼をできないかと頼んでみたのだった。

私が魔法を使うということで、ギルドマスターが、簡単なものから難しいものまで用意してくれたけれども、

「これはいらないでしょう。

この辺り以上のレベルで大丈夫です。」

とラウルは簡単なものを横によけた。

「えっ、SS以上ばかりですよ?もう少し易しいものからでは?」

ラウルが妙な顔をして、ギルドマスターと無言で見つめている。

「・・・まあ、いいでしょう。途中からモレア氏が合流します。

行きましょう。」


『魔法を使っても相変わらずだね。』

ユニコーンたちは私が一人でやっていて、いつまでも仕留められないのを向こうでみている。

わざと私に聞こえるよう、脳内に伝えてくるのはやめてほしい。

『こけてはないよ?それに湖に落ちる前に、自分で踏ん張って浮いているよ。』

『進化だね。』

『うん、進化しているよ。今ちゃんと放ったから。』

やっと、今仕留めましたよ。応援しているのか、ばかにしているのかどっちなの?

『はいはい。次迫ってきているよ、危ないよ?』

おかげで、間に合った。

魔法を放つタイミングが難しい。

「もーっ!

剣を使っちゃだめですか?」

「それでは練習にならないでしょ?」

ユニコーンたちは向こうでケタケタと笑っている。

その中にいつの間にか魔法使い氏も混じって、一緒に笑っている。

「今だよ・・・あーあ。変なためらいがあるな。」

だって、これで合っているのかどうか不安なんだから。

『あんたの指摘は正しいよ。ためらうから放てないんだね。』

「ほんのわずかなんだがな。」

聞こえてますよ?

次のは剣を振るのと同じように、すぐ放つ。

『聞いてたみたいだね。』


ギルドマスターに、これでここのは終わりと言われた。

「じゃあ、次に行くか。」

やっと魔法使い氏はこちらに来た。

「どうしてためらいがある?」

「だって、それでいいのかどうかわからなくなるんですもの。」

正直に言った。

「飛びかかられるようなものじゃなければ、自信がないときは弱く放てばいいじゃないか?

それで徐々に慣れていけばいい。わかった?」

「・・・はい。」


最後の一つ。

コツがつかめてきたので、思い切って放つ。

「リア、捕獲でも良かったんだよ?

それに、もう少し弱くても十分だ。」

「わかりました。」

焦げている。魔物だけでなく、地面の草も。

そんなに強く出しているつもりはないのだけれども。

「しばらくは加減の練習がいるな。

SS級のやつらにボール投げのような感じで魔力を投げる、受け止めるというような練習をしてもらえ。」

「はい。」

もうくたくた。そのまま地面に座り込んで、立ち上がれない。

やってみたのに、回復の魔法が私にかからない。

「リア、私にかけてくれるのはありがたいのだけれども。」

とギルドマスターが困っている。

なぜか横へそれて、それた先がギルドマスターだった。

「どうして私自身にかからないのでしょうか。」

背後に魔法使い氏がやってきて、いきなり両肩をたたかれた。

「ギルドマスターが何かでかけたのがじゃまをしていた。」

「ああ、あの時の魔法陣か。

暴走しないようにかけたんだが?」

心配そうにマスターが見てる。

「その壁を乗り越えて出そうとしていたからなあ、自分でなんとかできるんじゃないか・・・!」

魔法使い氏がラウルの方を向いて、

「ギルドマスターの壁の意味は、疲れていなかったらないってことだな。」

「そうなりますか?」

何のことを言ってるの?

三人が声をそろえて、

「リアは知らなくていい。」

って!気になるのに。



ギルドでお茶を飲んで、途中からリアは寝てしまった。

魔法使い氏は、幸せそうな寝顔のリアを見ながら言った。

「体をばらばらに壁や地面にめりこませるって聞いたことがないぞ?

どうやったのか聞きたいけど、ひたすら嫌だと思っただけだろう。」

「そのようでした。ばらばらになっていたのを元に戻す時に、解析しながらやったんですが、三つの魔法を複雑に組んでありました。

丁寧に分解しないといつでも死んでしまうような・・・。

そんな思いにさせてしまったのが、申し訳なくて。」

「本人はそんなに気にしていないだろう。むしろ、助かった、よかったぐらいだったようだし。

これ以上気にしないことだな。」

リアの意識を少しだけ探った魔法使い氏にそう言われ、ラウルは言葉に従うことにした。



向こうで寝ちゃったみたい。家のベッドに寝かされていた。

「起き上がれる?」

問題なく、普通に起き上がったのを見て、ラウルは安心したみたい。

「よかった。そのまま寝て、もう朝だから。」

「え!どれだけ疲れてたの、私ったら?」

家の人たちに仕事を休んだら?と勧められたけれども、引受人の手伝いをしなければ大丈夫だと思ったので、仕事に行った。


「リア、手伝ってって?」

レオさんに遮られた。

「今日はリアを出せないから、代わりだ。

行ってくる。」

引受人さんたちはちょっと残念そう。

「なんだ?野郎が来たから残念ってか?さっさとやりゃいいだけだろ!」

なんか文句を言われながら行っちゃった。


こんな時に限ってまた手伝ってって!

レオさんがまだなので、ギルドマスターが行った。

で、レオさんは帰ってきたら、また行って。ギルドマスターもまた行って。

「筋肉痛になりそうだ。」

レオさんが筋肉痛って?

「毎日裏で訓練してたんじゃ?さぼってたんですか?」

カトリナは他の人が言えないことをずばっと言った。

「違う!手伝いだから、全力でやってはいけない。

加減するのに疲れるんだよ!」

じゃあ、普通にやっている私ってまだまだってことなのかな。

「ああ、リア、勘違いしたらだめだ。

リアは普段から手伝っているから、力の加減を自動的にしてるんだよ。

こっちはしていないから、気を遣って変に力を入れるからこうなるんだ。いてて。」

そう言いながらレオさんは腕を振っていた。


今週はギルドに来た魔法使いさんたちとボール投げならぬ魔力投げをして過ごした。

たまに受け損なったのが当たると、焦げたり壊れたりする。

それを直していると、

「集中する練習も必要ですね。」

力の加減を練習しろと言われていたけれども、集中は言われていない。

「壊れたものだけを直すようにしないと体がもちませんよ?

正常な空間や物にまで魔法がもれています。」

それから後は大変だった。

「当てるのはここ。ここだけ!」

「当てていますって!」

「ぼんやりとここを中心に漏れ漏れだ。」

うわーん、難しいよう。


しばらくして、ゲルト様に呼ばれて行ったら、

「なんか苦労しているみたいだな。よれよれだぞ?」

と言われてしまった。

「そう思われますか?」

って、ラウルは気が付きながら何も言わなかったの?

恥ずかしい。

でも、前に比べていろいろできるようになっていたので、ゲルト様は満足そうだった。

「大魔法師がどういうかわからんが、そっちの指示に従いなさい。

私からは言うことがない。」

「人並みになったっていうことでしょうか?」

「まあ、そういうことだな。

でも、気を緩めないように。気を付けて。」

いつも意識しているのだけれども、今言われたことって、ずっと意識していろということみたい。

結局は気が抜けない。

やっぱり魔力はいらない、と言いたくなった。

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