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目指せ、魔法剣士?

「ギルドでは二週間、モレア氏が見て、先週は私とSS級の魔法使いとで見ました。

モレア氏は日常生活を送るのに問題ないレベルどころか、普通にギルドで魔法使いとしてやっていけるところまで操れるようにしてくれましたので、やることがなく、先週は実戦に特化しました。

習得した魔法から、見立てではSS級相当と思われます。測定はしていません。」

とギルドマスターがリアの様子を説明してくれた。

「測定は今すぐでなくていいだろう。

短期間でかなり覚えたみたいだな。昨日やった様子から考えても、自分で普通に身を守れると思う。

ただ、剣と連動はしていないから、使うならどちらかだけに集中しないといけないだろう。」

と、ゲルトは言って、ラウルを見た。

「両方同時に使えた方がいいのなら、練習に来たらいい。

でも、リアに必要なのは、魔力の制御であって、魔法はおまけだ。

魔法剣士を目指すのではないからな。」

ラウルとリアの父はほっとした表情でお互いを見ている。

本人の努力は当然だが、周りの協力でここまでできるようになった。普段の魔力の制御は大丈夫そうだ。


しかし、リアの父は思い出した。

「あの時はどうなるかと思ったよ。

いらつきだしてがまんできず、”こんなのいらない”って言いだすし、空間はゆがむし・・・。

血は争えないね。」

「間違いなくわが一族の子だな。」

とフェリクスが言うと、リアの父だけでなくゲルトもディルクも苦笑している。

ラウルは反応に困っていた。

リアは少なくとも、ゲルトやディルクのようにずばずば言うのでもなく、短気でもないように思うのだが。もしかして、自分自身もリアも気がつかないところでそうなのだろうか?

「まっ、気をつけたまえ。

技術的なところは差があるが、能力的にはあまり変わらない。

夫婦げんかはしたらだめだぞ?世界を壊しかねないからな。」

「えっ!」

ゲルトに言われると冗談に聞こえない。

「それは冗談だ。

装飾品やリアの持っている剣が、その辺の制御をするから世界を壊すまではいかないだろう。」

「困らせるな。

二人の性格からして、そんな大げんかはたぶんないな。

嫌だったら、リアが脱走してくると思う。」

とリアの父は、あまりに真面目に受け取って、答えている。

「それぐらいにしておいてやれ。

ラウルが引きつるのはわかるが、ギルドマスターまで困惑している。

そういうことはないだろうけれども、記憶のどこかに留めおくぐらいはしておいてもらおう。」

ひととおり報告や注意すべき点は出たので、戻ることになった。

ラウルは少し青い顔をしてこっそり、ギルドマスターに伝えた。

「リアに異変があったら、即連絡をください。」

「はあ。」



「リア、手伝ってって。」

「わかりました。」

行こうとすると、ギルドマスターに引き止められた。

「そこに立ってごらん。」

言われたところに立つと、床に図形と文字が浮かび上がり、光って消えた。

「?」

「魔法はどうしようもなかった時に使うんだ。

ふだんは使ってはいけない。

そうだな、魔法使い氏の許可が出るまではそうしてもらおうか。

まだやっと自分を制御できて、必要最小限を使ってといいかどうかぐらいだからな。」

散々使う練習はしたけれども、実際にはやったことがないからなのね。

また練習させてもらおう。

「はい。では行ってきます。」



「そんな風に言われると困るな。

私が責任者かよ。」

と真後ろから魔法使い氏の声がした。

「一族の会話がな、ちょっと・・・。」

ギルドマスターと魔法使い氏はしばらく見つめあったまま、無言の時間が流れた。

「ふーん。まあそういうことなら見張っておこうか。」

そう言っただけ。

まだここにいる。

「ん?今日は余裕があるからな。

本体が行くまでもない。

どうしようもなくなったら行くから。」

いつものように受付前のいすに座ると、カトリナやレオと話している。

レオは講習時間が来たので、立ち上がった。それを見て、

「一眠りするかな。」

と魔法使い氏は本当にぐーぐーといびきをかいて寝てしまった。

「のんきね。こんな不安定なところでも眠れるなんて。」



聞いてない!変に刺激したら豹変するなんて。

刺激したのは私じゃなくて、引受人さんだけど。弓の人が、矢を当てすぎた。

熊よりも大きく、爪が鋭い。

振り回しただけで、木がスパンっと切れて倒れた。

「!!!」

ひええええ!

ここだと木が密集している。暴れられると凶器だらけになる。

もう少し向こうの、ひらけたところへ、走って誘導した。

ここなら剣を大振りしても大丈夫だし、木も少ない。

ってやってるのに、切っても切れないし、迫ってきた。

「貸してごらん。」

そう聞こえ、視界を過ぎていった黒い影が、魔物に向かっていく。


シュッ


少し遅れてドスンという音。


魔物が倒れて、得体の知れない液体を流していた。

「教えたものの応用なんだがな。」

私の剣を、魔法使い氏が振り回して、後からやってきたもう一頭もやってしまった。

「なんだ、その、初めてのものを見るような目は?」

「魔法使いなのに剣を使っているのが意外で。」

体つきは細そうだし、魔法に長けているだけだと思っていたから。

「魔法しか使えないと思っているな?

道具を作るということは、試すためにはたしなむ程度はできないといけないと思うんだが。

引受人が来たな。後でやろう。」

そういうと、私に剣を返してすっと消えた。


「うわっ!二頭に増えてる。

大丈夫なんですか?」

ああそうだった。この人たちは後から一頭現れたのを知らない。

「ええ、まあ、なんとか。」

二頭の足をしばった。

引受人の剣士さんは、一度行ったことのある所へ物を移動させることができるらしい。

「リアさん、そのまま動かないでくださいね。」

反応するまでに時間がかかるらしい。

「ごめんなさいね。あの人の魔法は、魔力をかき集めてから放つらしくて時間がかかんのよ。

使えない側からすると、なぜ時間がかかるのか不思議なんだけどね。」

五分ぐらいして、急に景色が変わった。

剣士さんはぐったりしている。

「よいしょ。いいかげん、移動代かかってもいいからお願いした方がいいよ。

毎回ぐったりしているのを見るのは、つらいよ。」

と、弓使いの人は自分の道具を私に持たせて、剣士さんを背負った。


建物の中に戻ると、魔法使い氏は寝ていた。

私の気配を感じたのか、もそもそと起き上がり、

「遅かったな。何かあったのか?」

と聞かれた。

道具をじゃまにならないところに置いた。

「一緒に行った剣士さんの魔法がなかなかかからないらしくて、その場で十分かそこら待っていました。」

「そんなにかかるもんか!

やり方が悪いんだよ。無駄が多すぎる。

で、あいつか?」

ちょうど背中から下ろされていすに座ったところだった。


魔法使い氏が近づくと、

「あれ?回復している。」

と剣士さんは驚いた。

「回復させたんだが、疲れているところ悪い。

使った魔法を見せてみろ。」

「今ですか?」

魔法使い氏の勢いに圧倒されているように見える。

「じゃあ、移動先は裏の広場で。」

やり始めてすぐに止められた。

「なんで外へそんなに魔力がもれるんだ?その辺の空間ごともぎ取って移動させる気か?

移動させたい対象だけにしろ。

そうじゃないと寿命が縮むぞ。」

もう一度やり直すと、すぐに姿が消えた。

そして、すぐに現れた。

「最短です!」

「いや、それは喜ぶことじゃない。

無駄すぎたんだよ。今まで誰も指摘しなかったのか?」

剣士さんは喜んでいたのに、困惑した表情になり、

「周りで使える人がいなかったし、使える人の前でやって見せたことがなかったから。」

魔法使い氏はため息をついていた。



引受人さんたちが引き上げていった後、魔法使い氏に呼ばれて、練習場に行った。

「さっきの魔法と剣の使い方だが、その前に体や物の移動をやった方がいいな。

短い距離しかしなかったからな。

ついて見てるから、移動させてごらん。

そうだな、ユニコーンがいる森ぐらいの距離が手ごろかな。」

なんであの人はあんなに時間がかかっていたのだろう。

そう思うぐらいに、一瞬で着いた。

『また何か引き受けてきたの?』

三頭が並んで草を食べていた。

「違うの。今日は魔法の練習。」

袖を引っ張られたので、彼らにはまたね、と言って、元の場所に戻った。

「どうしてあんなに時間がかかったのか不思議です。」

疑問をそのまま言った。

「空間ごと移動させようとしていたからな。

教えてくれる人がいなかったせいもあるが、持って生まれたそういう感覚がなかったんだろう。

教えてくれる人がいれば、もっといろいろできるのにな。もったいない。」

「教えてあげないんですか?」

嫌そうな顔をしている。

ため息をついて、

「本人が今まで困らなかったんだろう。

教えてほしいと言われていないのに、指摘する必要はないさ。

リアの場合は、自分を制御しないといけないし、ある程度は手を使って作業するかのごとく、今後使えないといけないだろうからな。」

小声で、筋が悪いやつに教える気もないし、と言っていた。


レオさんたちが鑑定人と依頼人と話している。向こうの方のが終わったようで、こちらに向かって来た。

「魔法使いが剣を持っている。

珍しいな。」

にゃっと魔法使い氏が笑った。

「実際やって見せるのにはいい相手が来たぞ。」

でも、その剣、私のですけど。


「えっ、うそ!本当に魔法使いかっ?」

魔法を剣に乗せて、見せてくれるはずが、単に剣でやりあっているだけ。

()()()()程度はできるとリアには話したけれどなっ!」

と言うと、次の一振りに魔法が乗っていた。

「いててて。」

不意打ちを食らって、レオさんは端まで飛ばされていた。

「あんたなあ、どこがたしなむ程度だよ?

魔法なしで、十分にSS以上できているぞ。

・・・弓とかいろいろあるが、それも全部?」

「ああ、()()()()程度だ。

作る側だからな。試しで使えないと意味がない。」

しかめ面をしている。


「すまない、リア。

面白くなって、思わず没頭してしまった。

レオ、もう少し付き合ってくれ。

剣に魔法を乗せるというのを、実演してみせたかったから。」

その後見せてもらって、実際にやらせてもらった。

「どうやればいいのかわかったようだな。

ほかの魔法も同じようにやれば乗せられる。

でも、私が見ていない時にやるのはなしな。」

何度もやってくたくた。

レオさんからは、

「もう、付き合わないぞ!

魔法を乗せないのなら付き合うが。」

と言われてしまった。

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