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結婚式なんですけど

「詳細は後だね。結婚式が先だ。」

私の方を見てそう言うと、ラウルのお父様のシュタイン公は、お父様と顔を見合わせ苦笑して、部屋を出ていった。

「リア、大丈夫?」

「周りの人がものすごく心配そうに見ているのだけれども、私はなんともないよ?」

「そういう返事をするようなら、大丈夫そうだな。」

とお父様のいとこの一人は言うと、ほかの人ともども出ていった。


「なんかふわふわする。」

地面があるのに、地面に足がついていないみたい。

ぼーっとしているわけではないのだけれども。

「支えるから。歩けているし、大丈夫だよ」

ラウルにしっかりと支えられて、隣の部屋へ向かう。

ラウルが大きく息を吸って、はいた。

緊張しているのかな?

ゆっくり歩いて部屋に入ると、ギルドマスターと目が合った。

でもすぐに視線を逸らして、何かを考えているみたい。



ギルドマスターは驚いた。リアがいつもと違う服装だからではない。

内側から出るものが普通じゃない。それまでと全く別物である。

こんなに魔力があったのか?質も普通じゃない。

自分で抑えられないみたいだな。かろうじて抑え込まれている。

と考えていた。

招待されている二人の先輩は、それを感じていないようで、単に

「ものすごくきれいだな。何度尋ねても答えてくれないわけだ。」

「ああ、納得だ。」

と理由を見つけて、つぶやいている。

しかし、親族の人たちが、一様に緊張していた。

おそらく、リアが暴走しないかを見ている。

王子三人とあの人もいるのに?

思っているよりも勢いが強烈なのかもしれない。

一応ギルドマスターも身構えた。



妙に緊張した空気が漂っている。

結婚式だからだけではなさそう。

終わっても、その緊張は解かれずそのまま。

ラウルと一緒に、ラウルの先輩二人を見送って控えに下がると、そこには始まる前にいた人たちが待っている。

ラウルと並んでお礼とあいさつをして、着替えに行った。


リアが着替えている間に、ラウルは外で待ってもらっていたギルドマスターを呼んできた。

「食事会でもお会いしました、イアンと申します。」

「彼はリアの働いている、エアフルトのギルドマスターです。」

とラウルが紹介すると、三人の王子は

「私たちが出なくていいな。伝説のギルドマスターだからな。」

「迷惑がかかるが、私たちよりしっかり見てくれそうだ。」

「慣れている相手の方がいいからな。」

とひそひそ話している。



「リア、いいかな?」

外からラウルが呼びかけている。

感覚が相変わらずふわふわしているので落ち着かず、まだ着替えていないけれども、

「ええ、どうぞ。」

と返事した。

部屋に入ってきたラウルと二人で、いすに座る。

ちょうどテーブルの上に置かれた砂時計の砂が落ちきった。用意されてあったお茶を二人分、注いで出す。


ラウルは熱いのにもかかわらず、半分をさっさと飲んでいた。

さっきから何か言いたそうなのに、なかなか話してくれない。

「最近、何か気がついたことはない?」

突然しゃべったと思ったら、私に対しての質問だった。

このところずっと誰かに言いたい、聞きたい、でも言えないと思っていたことを言った。

「何日かに一回、丁寧に深く長くキスしているね。しかもその日の間隔が短くなっているの。

それの意味はあるの?」

ラウルは、じっと私の目を見て聞いていた。

「気付いていたんだね。

リアにも魔力があるんだよ。

ずっと封印されていた。それは僕も知らなかった。

再会してからある時、封印が解けかかっていることに気がついた。その時は封印しただけでよかったんだけど、だんだん頻繁に解けかかってきていた。

長いキスをしている時は、それを封印しなおしていたんだ。」

理由は分かったけれども、魔力って何なのかわからない。

それより、キスで封印できてたの?

「魔力のあるなしって、言われてもわからない。

今、ふわふわと浮いているような感覚が抜けなくて、これのことなの?」

「うーん。」

考え込まれてしまった。


「封印をしなおしては、解けかかり、というのを繰り返していた。

式の直前に封印がかなり解けていて、リア自身が力に負けていたんだけれど、気持ち悪かったのはそれだと思うよ。

式の前なのにどうしようもなく、僕とリアのお父様は、人を待たせているからいったん封じてしまおうと思っていた。二人で無理なら、リアのお父様のいとこもいるし。

でも、リアのお父様のいとこたちから、それではまた同じことを繰り返すだけで大変だろうから、解いてしまった方がいいと言われた。

それで、大人数に囲まれることになったんだけどね。

とりあえず、着替えて。

さっきの控えにいるから。」


「ラウル、何があるの?」

さっきの控えにはお父様のいとこたちとギルドマスターもいる。私の知らない貴族の儀式でもするのか何なのかわからないので、小声で聞いた。

「これから魔力の制御の仕方を教えてくれるよ。そのまま野放しだと、そこら中の物が壊れるし、自分自身はけがするし、いつもみんなが守れるわけではないから。」

ラウルの横にいた、お父様のいとこがさてどうしようかな?と言っている。

「お父様が教えてくださるのでは?」

てっきりそうだと思っていたのに、違うみたい。

「親が子に教えるのは難しいのだよ。ゲルトに頼んだから。」

ラウルの横にいた人?大丈夫なの?

私からすれば、食事会と結婚式で見ただけの人だから、厳しいのか優しいのかわからなくて不安。

そんなのなのに、

「今ここでやろう。」

と言ったとたん、なんとなく重たい空気が漂う。


「思い切りやっても、失敗しても今の状態なら大丈夫だ。

外へ影響が出ないように、結界を張ってある。魔力や魔法はこの中だけで、外にはもれない。

しかも、世の中でも十指に入るぐらいの魔力があり、魔法も使える人たちがやっているからな。安心しなさい。」

「はい。」

と言うしかなかった。


制御の仕方と簡単な使い方を聞いて、即実行。

「逆だ!焦げさせる気かっ!」

「そっちじゃない!」

スカッ

「集中が足りん!」

ずっと言われてばかり。

今までなしで、問題なかったのに!

だんだん腹が立ってきた。

「もー、いまさらこんなのいらない。」

あれ、なんか景色が揺らいでない?湯気の向こうを見ているみたいな?



「リア?」

リアの周りの空間がゆがんで見える。

「まずいぞ。ラウル。」

ギルドマスターに言われた時には、体が反応していた。

「んっ!」

こうなったら違う動きをするしかないと思って、無理に口づけた。

”リア、怒ったらだめだよ。

魔力がなかった時は何も影響はなかったけれども、今は魔力が暴走すると、物が壊れたりけがをしたりする。

ゲルト様はお義父様に教えてもらっている。

封印されていなくて、お義父様に教わっていたとしても、厳しかったかもしれないよ?”

”・・・わかったわ。”



魔力が暴走しかかっていたらしい。自分ではどうしようもないから、教えてもらうしかない。

深く息を吸って吐いてを二度やると、少しは落ち着いた。

「失礼いたしました。お願いいたします。」

「私からもお願いいたします。」

とラウルも言うと、額に手を当てたゲルトさんはため息をついて言った。

「ラウルに言われると・・・私も甘いな。

今日はやめて、毎週末の土日でやろう。

ということで、早速明日だ。朝の九時に、ラウルが以前やっていた所に来ること。」

その人はギルドマスターを見つけると、

「マスター、申し訳ない。

本来は家族や一族でなんとかしておくべきことなのだが、平日そちらで預かっていただいている間に、魔法の復習や練習をさせてもらえないだろうか。

一カ月もあれば終わると思う。」

ラウルと仕事の上司でもあるお父様のいとこは苦笑していた。


「どうして苦笑していたの?」

その笑いが変な感じだったので尋ねたら、

「うん、前に魔法の基礎のおさらいをさせてもらったんだ。

その時の予定が一カ月だったんだけど、実質は三週間でね。

たまたま体が覚えていたからそんなにもかからなかったんだけど。まさか、全く使ったことのない人にまで同じことをさせようとしているって思わなかったから、厳しいかもしれないね。」

「えー?」

さっきみたいなのが延々と続いたら嫌。

顔に思いきり出ていたみたいで、ラウルの上司さんはクスクス笑っていた。


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