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第二王子のゲルトは驚いた。

条件付きで、魔力を戻しても良いとブルクハルトが言うから。

「よろしいのですか?」

「ああ。ただし、大魔法師の統括は私ではなく、ラウルがするということならな。」

「彼に能力があるのは認めます。

ただ、大魔法師たち全員が彼を認めてくれるかどうかわからない。

一人でもへそを曲げるとたちが悪いのは、よくわかっていらっしゃるはず。」

突然ブルクハルトは笑い出した。

「大丈夫だ。少なくとも、二人はすでに従えているから。」

「ご冗談を?」

「向こうでこの数カ月間、その大魔法師たちに守られていた。

一人は、地元では変人扱いをされていたが。何かの折に、ラウルとやり合って、負けを認めたらしい。

もう一人は、彼に呪いをかけて、魔力も封印したやつだ。いろいろあって協力する気になったらしい。」


ラウルが呼ばれた。

「君が大魔法師を統括できたら、ブルクハルトの魔力を解いてもらうことにした。

統括してもらうことには変わりないのだが、なにせ、大魔法師たちはくせがありすぎる。

彼らが君を認めないと統括できないからな。」

外に連れていかれた。

そこには大魔法師たち、十五人がいた。

「二人は知っているな。

残り十三人と戦って、向こうが認めれば終了だ。」

と、言い終わらないうちに、いくつも術がラウルめがけて、飛んでいった。

「面白いな。全部崩したぞ。」

「なかなかへこたれないな。」

いろいろ大物を仕掛けられているが、何度もそれを打ち破っていた。

「さすがにこれはどうでしょうね?」

「!」


その場にラウルは崩れ落ちた。

「一番知られたくない、大切なものって何かしら?

なかなか強情ね。必死で探られないようにしているわ。

でも、周りの人が知っていれば、そこからでも探れるの。お分かり?」

誰もしゃべらない。

「器用だな。自分のことを知る人たちの記憶もガードして、自分も同時に防いで。

あまり長いことやると、精神が崩壊するぞ。」

魔法使い氏は一人思った。

”きついな。守ってくれているし、自分でもガードしているが、まとわりついて壊そうとしているような感覚がずっと続いている。

精神より体が参るんじゃないか?”

こちらからもラウルに防御するものをかけてやりたいが、かけるとよく知るものとして、さらにきついものをかけてこられそうだから、できない。

踏ん張る、そして踏ん張ってもらうしかない。


そろそろ限界だと魔法使い氏が思ったと同時期に、ラウルがつぶやきだした。

「・・・あの魔力を持つ大きな魚、そんなにとったはずがないのに、枯渇状態にしたのは私のせいとされましたが、あなたのせいみたいですね?

私と思われて、呪いをかけられ、人を死なせてしまいました。魔力も封印されていましたよ。」

「えっ!う、うそ?逆に私を探ってくるなんて!」

ラウルはその大魔法師を弾き飛ばした。

「それは本当か?」

ラウルに呪いをかけていた大魔法師は、すっ飛んでいって、向こうで何かをやっていた。


「この人が、われわれを統括することに異論はないな?」

大魔法師の一人が全員に向けて発言した。

「ない。」

「ありません。」

とくちぐちに返事があった。

ラウルは彼らに認められたのだった。


ブルクハルトの封印は、大魔法師たちに解かれた。

自分で解ける部分は表面だけだから、一気に解くには力のあるものに委ねた方が良いとのことである。

「よくまあ、こんな複雑にして封印していたな。」

「ここへ戻る気がなかったんです。

自分のことを知る人のいない、そんなところで家族とともに、静かに過ごしていたかったから。

まさか、ここに戻ることになる、娘はその地で知り合った人と結婚してここへ来ることになるなんて、思いませんでした。人生はわからないですね。」


大魔法師たちが戻っていった。

ゲルトはラウルに尋ねた。

「知られたくない大切なものって、なんだ?」

ラウルは聞こえないぐらいの小さな声で何かを言うと、顔を赤くして向こうを向いた。



ギルドでいつものように過ごしていると、突然突き上げられるような感覚があった。

周りを見渡しても何もない。

「今、地震みたいなものってありませんでしたか?」

「何もないわよ?」

ギルドマスターは何かつぶやいているけれども、

「いいや、何もないぞ?リア、疲れているんじゃないか?

今のところ急ぐようなものもないから、ゆっくり休み休みやってくれていいよ。」

と言われた。

しばらくして、魔法使い氏がやってきた。

あいさつもそこそこに、ギルドマスターと目が合うと、ギルドマスターは立ち上がって、一緒に奥の部屋にこもってしまった。


「三十分ぐらい前に大きな魔力のうねりみたいなものがあった。

もしかして、リアの父が魔力を解放したのじゃないか?」

魔法使い氏は驚いている。

「こんな遠くにまで響くか?そのとおりだ。

それよりさらに一時間前、あの人が大魔法師の統括を引き継いだ。

それを受けて、元に戻されたんだが。」

「リアが感じていたようだ。周りに地震があったんじゃないかと聞いていたからな。」

「自分の父親だからか?感じ方がひどく敏感だな。

いや、自分の魔力も共鳴したのかもしれないな。」

むむむと言って、ギルドマスターに手紙を渡した。

難しい顔をして読んでいる。

「リアの父は何と?」

「急に封印が緩むことがあれば、即知らせてほしいということだ。

私やその時ここにいる魔法使いで何とかなればいいのだが。」

ギルドマスターは眉間にしわを寄せてうなっている。

「もう少しすれば、魔力のコントロールも兼ねての装飾品ができあがる。

それを身に着ければ、少しは時間を稼げると思う。

ただ、その装飾品は、魔力の封印がはずされるだろうということを前提にしてある。

そのまま封印だったらということはわずかしか考えていない。

・・・足すか。」


昨日片付いた依頼での品物を取りに来た人が、お菓子をくれた。

奥の部屋に持っていきたいけれども、扉を閉めて、しかも鍵までかけたから、近づくなということみたい。

「あたたまったらチョコレートが溶けちゃう。

終わらないかな?」

「食べちゃおうよ。」

「三人で食べるには多いぞ?それにカトリナ、ダイエット中とか言ってなかったか?」

とレオさんに言われて

「もらいものは別なんです!」

なんて、カトリナは言っている。

確かに最近カトリナは、丸くなってきた気がする。

性格ではなく、顔が。つまり体全体が丸くなってきたんじゃないかと思う。

「何を騒いでいるのだ?」

うるさかったから出てきたではなさそうだけれども。

扉を開けて止めてあるし。

「ああ、もらいもののお菓子をみんなで食べるかどうかって。

食べます?」

「じゃあいただこう。モレア氏も。」

魔法使い氏も誘っているけれども、ギルドマスターが、珍しく魔法使い氏をちゃんと名前で呼んでいる。

「そういうお名前でしたっけ?」

「・・・カトリナ、忘れないでくれ、名前はあるぞ。」

がっかりしたような顔をしていた。


魔法使い氏が帰ろうとしている。

「ちょっと待ってください!」

慌てて追いかけた。

「この土曜日に、例の装飾品ができあがります。

できあがったものの最終調整をしていただきたいのですが。」

それを聞き、魔法使い氏は少し表情がやわらいだように見えた。

「日曜日はどうだ?午後二時。」

「たぶん大丈夫と思います。場所は、」

「わかる。リアの気配を追えばいいから。

それぐらいのころに突然屋敷の中っていうのはよくないな。

でも、あまり人が訪ねていくというのもよくないか?

・・・いいや、寄っていくから、その点は本人に聞いておく。」

そういうと消えた。



「入るよ?」

ラウルのお兄様が応接室に来た。

「もうそろそろと思うのですが。」

魔法使い氏からお義兄様も同席してほしいと言われたそう。

三人そろったのを見ていたように、扉をノックされた。

開けると立っている。まともな格好をしていた。

扉を閉めると、うやうやしく、丁寧にあいさつをされた。魔法使い氏じゃないみたい。

「・・・リア、思っていることはこの三人には筒抜けだよ?」

えっ?

「微妙に失礼だな。」

魔法使い氏に対して思ったことはだだ漏れ。三人に苦笑された。

あー恥ずかしい。

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