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お上りさんになっていました、たぶん

「騎士様ってかっこいいわ。」

「また来ないかしら?」

そういう会話が、一週間もたったのに町のあちらこちらで続いている。

「リア、ああいう人はどうだったの?

私はめちゃくちゃ好みだったんだけれど、なんか、うまい具合にすり抜けられたような気がするわ。」

すり抜ける?

そう言われたらそうかもしれない。

自分の好きでも何でもない人に好意を寄せられても迷惑だから、そういうのが一番問題にならないのかもしれない。

「無表情だったから、普通の表情をしてもらうまでずいぶんかかりそうなんだけれども。

次来たら、私は落とす自信があるわ!」

「え?カトリナ、その自信はどこから?」

妙ににこにこしているから怖い。


そんな話をしていたからではないけれども、家に帰るとラウルが来ていた。

忙しいだろうに。

「前と比べて来やすくなったよ。魔法で移動すればよくなったから。

あまり頻繁には使わない方がいいと思うけれども、今日は直接伝えたかった。」

食事会は来月の二十日、土曜日の十二時からということだった。

「ああ、その店なら私たちも知っていますよ。

古い店ですからね。」

とお母様は言う。私は全く知らない土地の店。

一人残されたような気がした。

「リア、じきになれるさ。

住むようになれば、町の中を歩くし。」

「そうよ。皆さんといろいろ出かければ、覚えるわ。」

そんなに表情に出ていたのかな?


「それで、リア、一度あっちの方で服を新調しようと思うんだ。

食事会や、ちょっとした外出で着るような服を。

次の土曜か日曜はどうかな?」

両親はニコニコと、

「行っておいで。」

と言ってくれた。

「じゃあ土曜日に。」

ラウルが両親を見ると、両親は

「ああ、私たちはいいよ。二人でいっておいで。」

と言っていた。

「楽しみにしているわ。」

「うん。十時ごろに迎えに来るから。」

うれしい。王都ってどんなところなのだろう?

カトリナに悟られないようにできるかしら?


金曜日、明日が楽しみで仕方がない。

依頼の手伝いを言われたので、表情には出さなかったけれども、よろこんで出かけた。

カトリナとあまり顔を合わせていたくないから。

「・・・早かったですね、捕獲までの時間。」

やりすぎたみたい。

ギルドに戻ると、引受人の人たちがあれこれ大騒ぎするから、昼からも一つ引き受けるはめになってしまった。

「今日はまあ、いいだろう。いつもなら一つなんだが。」

許可が下りた。ギルドマスターの気が変わらないうちにと、そそくさと出かけた。


「はあはあ・・・捕獲でもよかったんじゃなかったですか?」

「やってしまいましたね。」

討伐してしまった。しかも、私自身最速と思う。

鑑定してもらうと、

「大きいな。え?討伐に二時間で終わったの?」

驚かれているような、あきれられているような。

一体私はどうなるんでしょう?強くなっているの?

力の加減ができていないのかな?

「うううむ。」

ギルドマスターは眉間にしわを寄せてうなって、何かを書いていた。


帰ろうとしたら、ギルドマスターに

「これをあの人に会うことがあれば、渡してくれるかな。」

と、手紙を受け取った。

魔法がかかっているらしくて、本人じゃないと封を開けられないようになっている。



ラウルが迎えに来た。

玄関で、出る前に両親と話していた。

ああそうだ、忘れそうだった。

「ギルドマスターから手紙を預かったんだけれども。」

ラウルが触ったとたんに開いた。

それを見た両親は、部屋に戻っていった。

「・・・。」

ラウルは読み終えると、急に抱きしめ、口づけてきた。

ええ!どうして?


「さあ、行こうか。」

にっこり笑って言われた。

しばらくたったけれども、急にキスされて、顔が赤くなったままなのに。

「もう少し待って!」

聞こえたのか、奥から両親が出てきた。

「あれ?行かないの?」

「行きますけど、ちょっと・・・」


リアが赤くなっている間に、リアの父と声を出さずに話した。

”ギルドマスターからの指摘ですが、リアの魔力の封印がかなり解けやすくなっていると。

普段はギルドマスターたちがこっそり補強されているそうなのですが、近いうちに封印できなくなりそうだとも、手紙に書いてありました。

先ほども封印がとけかかっていたので補強したのですが。”

”なるほど、それで。”

リアの父は、リアの顔をしげしげと見ていた。



「行きましょう。」

ラウルの袖を引っ張った。

「うん。」

ラウルが両親にあいさつをすると、景色が知らない建物の廊下に変わった。

「ごめん、せっかくだから僕の両親と兄に会ってほしい。」

え?心の準備ができてません!

「い、今?」

「今でもいいし、後でもいい。

今日の昼食は家で食べるからね。」

うわーん、貴族様の食事ってわかりません!

どうしよう、行儀良く食べられるの、私?


会うのは後でと言おうとしたら、向こうから来られてしまった。

「ラウル、そちらのお嬢さんが、ブルクハルト様の?」

「はい。あれ?リア?」

完全にラウルの背後に回って、潜む。

「・・・そんなに恥ずかしがらなくても。」

私の後ろから声がした。

「うわっ!」

そちらを向くと、ラウルとそっくりな人がいる。お兄様なのでしょう?

「そう、私はラウルの兄、ノルベルト。

ラウルが代わりに騎士になることになり、あなたにも迷惑をかけてしまった。」

「はあ。」

迷惑と言われても、これまで記憶になかったし、さみしいと感じずに済んだからよくわからない。

「・・・そうなら、いいのですが。」

「兄様、勝手に人の思考を読まないでください。」

ラウルが苦情を言った。

え?あ!

「そう言われれば、私は話していませんね。」

「話してもらうのを待つのが面倒で、つい。申し訳ない。」

と謝られた。


部屋にいる、ラウルの両親に紹介された。

二人にも同じく謝られた。

「ノルベルトの剣の腕前があまりにひどくて、戦力外通知ものだったからね。

あれでは自分すら守れない、そう思って辞めさせた。」

とラウルのお父様が苦笑していた。

あまりにもひどいって?

そう疑問に思った時、頭の中を何かがよぎった。


ああ、この人、剣よりも魔法が先に出てしまうのね。

しかもコントロールしていないものが。

討伐には向いてそうだけれども、それ以外では使いにくそう。

って、私は起きているのに夢を見ているかのようなものだった。


遠くで声がする。

「リア、大丈夫?」

「へ?あ、大丈夫。

なんとなく想像してしまっただけだから。」

ラウルは不思議そうな顔をしていたけれども、それ以上は何も言わなかった。



外に出る。

しばらく歩くと大きな通りに出た。

周りの建物は大きく、家も店もいっぱいある。

エアフルトはあの辺でも大きい町だけれども、その比じゃない。

お店を見つけるのが大変そう。

「リア、こっち。」

いつの間にか離れて、真っすぐ進んで行こうとしていた。

慌てて言われた方に行く。


連れて行かれた店は仕立て屋だった。しっかりとした服を着たことがない。

表に見えるよう、人形に服を着せてあるが、こんなの知らない。

こういうのは、顔や体になじまないで服だけ浮いてそう。

店の奥に通されて、くまなく採寸された。

「理想的な体形ですわ。

なんでも似合いそうですよ。」

そんなことはないと思うんだけど、

「あ、ありがとうございます。」

とよくわからないけれど、ほめ言葉として受け取った。

どういう服にするか、細かいことはわからないので、ラウルとお店の人とで相談している。

サラサラと何か書いている。

「こういうのはいかがですか?」

お店の人が、書いた紙を指で弾くと、絵が浮き上がった。

じっと見ていたラウルが、

「リア、そこに立って。」

と言うと、浮き上がっていた絵が私の方に寄ってきて、まるで服を体にあてているような具合になった。

「!こっちの方がいいかも?」

お店の人はいくつか書いては、浮かべて、ラウルに意見を求めている。

「これと、それかと思うのですが?」

気がつくと、お店のほかの人もやってきて見ている。

「あれもいいと思いますよ。」

「色をつけてみましょうよ。」

私たち無視でどんどん意見を出している。

気が付いたらしい。

お店の人の一人がラウルに言った。

「シュタイン様、一着分のお代でいいので、三着作らせてください!」

「え?それはだめだ!

それならちゃんと三着分支払う。」

言いくるめられて、一着の値段で三着作ることになってしまった。

いつ着るの?そんなに着ていくところってあるの?


仕立て屋を出て、また歩く。

とある家の前に着く。

「こんにちは。」

扉の前で声をかけただけなのに、勝手に扉が開いた。

大丈夫なの、入っていって?

奥には年季の入った道具が並んでいる。磨くのに使うような道具やハンマー。

眼鏡をかけた人だけが、道具に似合わず、若い。

ラウルが小さな袋を取り出した。

相手の手に渡ったところ、眼鏡をかけた人は悲鳴をあげた。

「これって!いいのですかっ!」

「ああ、これを使ってほしい。むしろ、これを使わなかったら私が恨まれるよ。」

中から出てきたのは、緑の澄んだ石みたいなもの。

「・・・初めてみます。加工前の塊って。

どうやって手に入れられましたか?」

「本人自身から渡されたが、何か不満か?」

明らかに相手の顔色が悪くなっていく。

ラウルをつついて聞いてみた。

「あれは何?」

”モレアと僕の魔力を練り上げたもの。リアの持っている剣もそうなんだけれども、作るための材料自身に、それぞれどういうものにするのかという用途や気持ちを込めてある。

だから同じ材料だけど、あの塊と剣は違うよ。”

あの塊の詳細は、他人には聞かせられないらしい。

口を動かさないでしゃべっている。


「ちょっと失礼!」

その人は奥の部屋へと行ってしまった。

「材料が剣と同じだったら、魔法使い氏でも作れたのじゃないの?」

「いや、せっかく作るのに無粋なものじゃだめだって。

装飾品は専門の職人に作ってもらえって言われた。

合わせる石との相性もあるからね。」

しゃべっているうちに、奥から人を伴って戻ってきた。

「・・・本物だ。

それと、あなたは彼に認められた人ですな。」

眼鏡をかけた人が連れてきた、年配の人がそう言った。

「認められたのかどうかは分かりませんが、大切な人に贈る装飾品の相談をしたところ、()()()()ことになりました。」

眼鏡をかけた人は、

「認められた人とは?」

とよく分かっていない。

「わからんのか?まあ、モレアの方が感じやすいからな。

この方の魔力も一緒に練り込まれてある。」

顔色がさらに悪くなった。

そんなにすごいの?

「無知で申し訳ありません。

私の監督下で作らせていただけますか?」

「はい。」

ラウルは期限を三カ月後と言うと、

「一カ月もあればできると思います。再来週一度見ていただけますか?

その時に合わせる石を見たいのですが。」

「リア、そのころってどうかな?」

「何もないわ。大丈夫よ。」

もう一度ここに来ないといけなくなった。

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