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動く

魔法使い氏まで巻き込んで、リア一家をわからないように守って三カ月がたつ。

「途中経過か。」

手紙には、実はリアの父が策略により陥れられていたこと、それを証明するために資料の洗い出しや人への聞き取りなどかなり丁寧にやったとあった。

結果として、元の身分、地位に戻ることになるが、今のところ関連する人物たちの処遇について詰めているところのため、まだはっきりと公にできない状態だという。

でも、近々リアの父に、名誉や身分、地位を回復されたことを通知されるという。

「もしかすると、リアはご両親とともにここを出ていくかもしれないな。」

「どうされました?」

ギルドマスターは、レオに読んでいた手紙を見せた。

「すぐには行かれないんじゃないですか?

先生を今すぐやめるというわけにはいかないでしょう?」

「でも、リアはこの町を離れるだろう。

迎えに来るのがいつになるのかわからないが。」

「・・・そうでした。」

二人ともすっかり忘れていたことが、そう遠くないと悟った。



ちょうどリアがギルドに行っている日のお昼時、リアの両親は家で昼食を食べていた。

リアの父はたいてい昼食を食べに、仕事場から戻る。

その習慣を知っていたのだろうか?

扉をたたく音がする。

リアの母がそっと開けると、どこかで見た覚えのある服装の人が二人立っていた。

「!少しお待ちください。」

慌てて声を出さずに呼ぶ。

”大変です!つかいの方がいらしています。”

リアの父は気づいていた。

”落ち着いて。追手ではなさそうだよ?”

表の扉まで行って、立っていた二人を迎え入れた。


「・・・ということで、名誉や身分、地位を回復されました。

取り急ぎの連絡で申し訳ありません。」

そのことを書かれてある手紙が、リアの父に手渡された。

「ありがとう。」

「あと・・・今後どうされるのか、返事が欲しいとの伝言です。」

頭をかいて少しうなった。

「どうしたもんだろうね・・・。必ず返事はします。

今すぐはできないので、お戻りいただけませんか?」

「わかりました。よろしくお願いいたします。」

そういって、丁寧にお辞儀をすると、二人はすっと消えていった。



「リア、どうやったらユニコーンに運ばれて戻ってくることになるかな?」

久しぶりの植物採取だったのに、枝をつかみそこねたのでした。

「すみません・・・また池に落ちました。

今度はきれいな水の方ですが。魔法使いがいないので、乗せた方が早いからって・・・歩かせてもらえませんでした。」

その辺にいた人たちがくすくす笑っている。


『!』

ユニコーンが何かに気が付いたみたい。

私には話さず、ギルドマスターと話している。

”今、大きな魔力が動いたぞ?

悪いものではないみたいだが。”

”一瞬だったな。リアの家の方向から・・・ああ、リアの父親かもな。

たぶん問題ない。”

ギルドマスターはさっきまで読んでいた手紙のことを思い出していた。

それならありうる。


「それよりも、このずぶぬれが問題だな。」

ギルドマスターの家でお風呂に入るはめになった。

「よくまあ、予備で服を置いていたことだな。」

何も言えません。汚れるかもとか破れるかもって思ったけれども、ずぶぬれはもうないって思っていたのに。

初めて依頼の手伝いに行ってから二年ほどたつのに、いまだにこれって・・・

そう話すとまたみんなに笑われた。



それから一カ月ぐらいたった。

町の中にある掲示板には、国全体の重要なお知らせを掲げられることがある。

そんなにないのだけれども、今日は人だかりができている。

「何?」

「私たちには関係なさそうだけれどね。

貴族の人たちのもめごとで昔なんかあったらしいな。」

ふーん。元貴族だったらしいけれど、私には関係ないや。

「読み上げるぞ!」

そう、掲示して二日間は、日に何回か読み上げてくれる。

聞いていると、十七年前の出来事と謀った者の処分、陥れられた者の名誉と地位の回復の公表だという。その際、陥れられた者に対する差別、非難、中傷などが禁じられ、守られなかった場合は処罰されるらしい。

「おーい、処分者や名誉回復者の名前を知りたいのならこちらに来てくれ。」

しばらく読み上げた人が立って様子を見ていた。

きちんと聞けなかった人や、内容を理解していない人がちょくちょくやってきただけで、名前を聞く人はいなかった。


「久しぶりに掲示がありました。人だかりができていました。」

「何のお知らせだったの?」

「貴族の人たちの昔の出来事で、だまされたのかなあ?やった側は処分、やられた側は名誉や地位の回復ですって。やられた側に対して悪く言わないように、っていうような内容。」

なんか面倒くさくなってかなり適当になってしまった。

「・・・なんかわかったようなわかりにくいような。

明日お買い物の時に、見に行ってくるわ。」


「リアが言っていた掲示の内容って、先日来られた件でしょうね。」

「おそらくは、差別や非難すると罰せられるのだろう。そこまでは望まないんだけれども。」

ため息をついている。

「どう返事しようか。

きりのいいところまでこちらの仕事をして、向こうに戻ってもいいのだけれども。

仕事・・・もう、大昔すぎてできないね。あの時と同じぐらいの力があるのかどうかもわからないしね。

仕事がなさそうだな。」

仕事がないなら戻っても仕方がないので迷っている、と返事した。



「戻ってきてくれなさそうだな。」

リアの父の仕事は一人では引き継げず、いくつかに分けてそれぞれの担当者を、一人が統括している。

今受け持っているのはリアの父のいとこであるゲルトだが、リアの父のような絶対的な力はない。

「残念ながら実力行使しても、全員が納得いくほどの実力がないからな。

相手は大魔法師たちだから。」

リアの父は、くせものぞろいの大魔法師たちを、実力で有無を言わせず従わせられた。

「代わりになるような者を探して、その者の監督のような形にされれば?」

「そうですよ!」

各担当者は、その当時を知らないから簡単に代わりがいると思っているようだ。



急激に、統括しているその人が魔力を放ったので、周りは驚いている。

「今ので驚いていたらだめだ。

これの何倍もの力だったのだから。

面倒だが全員調べるか。」


「全員対象で調べるのですか?」

「おそらくそのままだと帰ってきてもらえないからな。

私としては、魔法騎士を訓練するぐらいはしてほしいのだが。」

ゲルトは騎士と魔法騎士を対象に、測定器での測定を命じた。


「自己申告より悪いな・・・。」

「何年前に測った数値だよ?」

上がったとか下がったとか、歓声があがっている。

測定をする理由が、単に定期的に測ることになっただけというので、全員気楽にやっている。

「魔法騎士長、お願いします!」

「え?私もか?」

魔法騎士長のディルクも仕方なく、やることとなった。


1156700。

周りが静かになった。

「ディルク、本気じゃないだろう?」

ゲルトが言った。

「兄様、本気にならなくても。目安なのですから。」

不敵な笑みを浮かべて、ゲルトが軽く放ったそれは、周りが動かなくなるぐらいだった。

1871009。


「後がつかえているぞ。

どんどんやっていこう。」

その一言で、魔法が解けたみたいに動き出した。

しかし、また止まってしまった。

2301179。


「・・・壊れてないか?

ほかのでやってみろ。」

2401008。

ゲルトはその数値を出した者を見た。



「代わりになりそうな者がいるので、その者に任せ、その者を管理するというのはどうか、か。

いとこたちは戻ってきてほしいみたいだね。」

「でも、リアはどうしましょう?」

リアの父は

「彼が迎えに来るだろうから、それに合わせて私はこちらを離れるようにすればいいと思っているのだけれども?」

「来るまではここにいた方がいいですね。」

確実に会えるようにするには動かない方がいい。そうリアの両親は考えて、帰るつもりではあるがしばらくまだ帰らないと返事をした。

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