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元貴族のお嬢様は、ギルド生活を満喫しています〜いろいろ忘れていたら、騎士になった幼なじみが迎えに来ました  作者: 天野乙音


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30/65

適任者

リアと別れて半年かそれぐらいたったころ、魔法使いが現れた。

突然魔法を放たれ体を拘束されたが、魔力を通すと簡単にはずれた。

「ラルゴ・モレアと申す。リアという子をご存じか?」

モレアってあの魔法使いの中でも尋常じゃない魔力を持つ?

魔法具の?

「どうしてリアを知っている?」

リアに何かがあってはいけない。

単に魔力量だけなら負けてしまうが。

そう思いながらも魔力を集めた。

「あの子は記憶を書き換えられているし、守るようにようにされてある。

なぜそのようにした?

本来の自分が出ないのではないか?」

お互いの周辺の空気が鳴る。

時折ちりちり、火花が散っている。

「リアと私の事情がある。お互いに納得した上での書き換えだ。

確かに本来の自分が出ないかもしれない。」

そう言ったところで、向こうは魔法の向きを変形させて、私の背後から襲ってきた。


見えた。

数発放ってきたが、弱いところがある。

放ってすぐは魔力が手に集中していない。

また放ってきたので即こちらからも集中させて、同じものを放ってやった。


勢いよく跳ねていった。

「いてて。即同じものを放って返すか?」

さっきまでの気配と打って変わって穏やか。

仕事柄、相手の正体がわかるまでは弱みを見せてはいけない。

口調まで気を付けなければならない。

でも、普通に話しても問題なさそう。

「隙がありました。」

「あれを隙というのか!普通じゃないな。」

起き上がるのに手を貸そうとしたら、

「いやいや、痛かったが、立てるから。」


話を聞くと、ギルドでリアを見て不思議に思った点を、自分が納得できるよう調べているだけという。

リアについては、他言する気はないということだった。

私の呪いも疑問という。

呪いのことだけを話した。

「そうか・・・わかった。

それより、今の状態でまだ魔力を封じられているのか?」

「はい。昔の感覚からすればほとんどが封じられています。」

感じるままを言ったのに、絶句された。

「器具で測定したことは?」

「ありません。」

「私より多いと思う。

さっき隙があったというけれども、普通隙とは感じられないはずだから。」

魔法使いは納得したようで、

「しばらくあのギルドにいる。いる間は様子を見ておこう。」

「お願いいたします。」



あれからしばらくして、駆除隊の隊長と一緒に魔法使いがやってきた。

「おや?リアのお相手があなただったとは。」

駆除隊の隊長にまで、冷淡な騎士といううわさが広まっているらしい。

意外という顔付だった。

でも耳元で「私は口が堅いですよ?」と言ってくれたが。


「実はリアがギルドの依頼、例えば実を拾ってくるというような簡単なものを手伝っています。

それが、こけたり、驚いたりすると、あなたがかけている魔法の影響か、本人がそこにいるからなのか、魔物やモンスターが周辺で生息している個体のみ、大きくなっています。

このままだと環境によろしくない。そこで!」

魔法使いを引きずって、私の目の前に差し出した。

「モレアさんにお手伝いいただこうと思いまして。

リアさんは、あなたの魔法の影響下だから、魔法具にあなたの魔力も乗せないと片手落ちですよ。

効き目が悪くなりますからね。」

駆除隊の隊長がにこっと笑っているが、魔法使いはぶすっとして

「一番会いたくない相手なのに。」

とつぶやいていた。


「そう、その調子で、魔力をもう少しためてはふくらますというイメージ。」

五分ぐらい繰り返して、子どもの頭ぐらいの大きさになったところで

「終わり!止めろ!」

素早く持っていかれた。

「ここからが大変だな。違う魔力だからな。

練り上げるのに一日か。形にするので一日。最後、もう一度二人の魔力を注いで調整で一日。」

「じゃあ、二日後また来ます。」

そうして、仕上げたのは剣だった。

「なぜ剣?」

「お守りなんだが、この形が持たせやすい。

場合によっては、本来の剣の役目もする。それに、これは、敵意がある相手しか切れない。

体に収まるんだよ。ほかの人には無理だけれども、リアにすべて合わせてある。」

持たされた。

手にしっくりとなじんで持ちやすい。

「持ちやすいですね。手にしっくりとなじみます。」

「え?どれ?・・・?

別になんともないです。むしろ、ちょっとピリピリ?」

駆除隊の隊長はそう言った。

「魔力の持ち主だから当然なじむ。それ以外が持つとピリピリぐらいなら大丈夫だが、雷に打たれたみたいになることもあるだろうな。

ああ、リアに合わせてあるから、リアは絶対にそういうことがない。」



でも、もうあのギルドにいないかもしれない。

魔力が足りない場合に備えて、兄様にお願いした。

「モレアの当主とやりあった?それでまあ、無傷で済んだな。」

「ほかの方はそうではなかったのですか?」

兄の顔が引きつっている。

「大けがが大半だ。突然かかられて、それに対して同じものを返したなんて聞いたことがない。」

そんなにすごい人だったんだ。

「それならわかりやすいかもしれませんね。」

「いや、逆に知られたくないだろうから、魔力を極度に抑えているのじゃないか?」

書物で確認した術式を展開してみた。

「・・・これだと二人とも明日起きられないかもな。

魔力がどれだけ食われるか。

ちゃんと本文を読んだか?これって本来十人ぐらいでするものだぞ。」

「やってみるしかありません。」


向こうとつながった。

『ああ、それぐらいなら手伝おう。

家のほうも落ち着いたからな。』

「家?」

どうやらふらつくのをやめて、家に戻ったらしい。

『あまり言いたくないが、名実ともに家を継いだから。

そのせいで大魔法師も引き継がないといけなくなってしまった。

ちょっときゅうくつになった。好きなようにするが、年に何回か決まった日に連絡がとれないといけないらしい。

まあ、仕方がない。

もう一人連れて向こうに行くから。』

向こうで指示を待つと言われた。

ギルドマスターに大急ぎで書いた手紙に追記して、もう一度見直してから送った。



「面倒なことになるかもしれないな。」

「ギルドマスター、どうされました?」

あの人からの急ぎの連絡を受けて、眉間にしわを寄せてうなっている。

早朝なので、リアやカトリナに首を突っ込まれることはない。

「あの子だけでなく、両親もここへきてもらった方がいいかもしれんな。

詳しくは言えないが、貴族様のもめごとが飛び火する可能性がありそうだ。」

「放蕩魔法使いを呼び戻しますか?もめごと大好きですし。」

レオは魔法使い氏を思い出していた。

突然声がした。

「悪かったな!もめごと好きで。

せっかくもう一人連れてきたのに、帰るぞ。」

うわさをすれば、例の魔法使い。

「いつのまに?」

ギルドマスターは立ち上がると、その人たちを連れて奥の部屋に消えていった。


「その人が連れてくると言っていた人だな。」

ギルドマスターは、魔法使い氏と一緒に来た人をながめている。

どこかで見たような気がする。

「大魔法師の一人だからな。

仕事か何かで見たことがあるかもな。」

あの人から送られてきた計画を見て、お互いに気がついたこと、現場で変えておいた方がいい点がないか相談。

「・・・よく考えてあるな。

そのままでいいだろう。」


しばらくして魔法使いたちは、

「邪魔したねー、皆さんによろしくー。」

と立ち去っていった。

「あの人たち、何しにきたんですか?」

やたら軽い感じで行ってしまったので、大丈夫かとレオは心配になって聞いた。

「配置についた。これで、あの子も両親も、終わるまで大丈夫だ。

あの元呪いのぼっちゃんはすごいな。いつの間にあの変態魔法使いと知り合いになっているんだ?

やつらは勝手にやってきたんじゃない、連絡を受けたそうだ。」

ギルドマスターはほっとしている。

「そう簡単に人の指図を受けるようなやつじゃありませんよ?」

「それが、わざわざ名前に”様”を付けて言ってたからな。

よほどボロボロにやられて、負けたんじゃないか?」

「あの魔法使いに勝てるってどんな手を使ったんだ?」

うわさでは誰も勝てたことがないと言われている。

根本的に力が違う。それは実際一緒にやってて、魔力がなくてもそれを感じた。

だから、剣士のレオは驚いて、沈黙してしまった。



「おはようございます。」

なんか朝から空気が重たい。

「何かありましたか?

もしかして、書類の置き場が悪かったですか?」

今までのものが増えすぎたので、一部別のところにしまった。

それの場所が悪いのかしら?

「何もないよ。

いつ模様替えしたの?言われてみればすっきりしているか。」

「昨日です。お昼の後で腹ごなしにやりました。」

ギルドマスターは置き場を確認していた。

「ありがとう。あのままでいい。」

あれ以上は聞けなかった。

空気が重いと思ったのは、この時だけ。

何もなければいいのだけれども。

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