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元貴族のお嬢様は、ギルド生活を満喫しています〜いろいろ忘れていたら、騎士になった幼なじみが迎えに来ました  作者: 天野乙音


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あの人

エアフルトから遠く離れた王都。

一人頭を抱えている。

「あー、言うんじゃなかった。」


余計な動きをせず、上を目指している。

スタートするのが人よりも遅いからというのもある。でも、一番は、待っていてほしいと言った手前、何も成果のない、肩書のない状態は嫌だから。

女性たちが何か言っていたり、言ってきたりするが、気を悪くされないよう適当にすり抜けてきた。

そういう状態なので内輪では、冷淡なやつとして有名である。


それを何か勘違いした、お節介焼きの先輩たちのせいで、女性に興味のあるだらしないやつにされそうになった。

おかしな所に気がついて、それを避けられたのはいいが、思わず言ってしまった。

「私を試すのはやめてください。

私には決めた相手がいますから。」

と。


お節介焼きの先輩たちの私にたてた計画が部分的に失敗し、女性が暴漢襲われそうになっていたところを助けたのだが、その暴漢にかけた魔法が他人からすると難しいものだったらしい。

魔法使いが何人もかかって、やっと解いたとうわさで聞いた。

せっかく騎士の頂点が見えたのに、二人の先輩が余計なことを言ったのか、魔法騎士の方へ転属になった。

またやり直しではないか!

二年たつのに、まだリアの家がなぜ没落したのかがわからない。

そこへ自分自身は今回の異動で一から。

そう考えると頭が痛すぎる。



新しい部署へ初出勤。

魔法騎士は、普通の騎士以上になりにくいと聞いている。

そもそもは剣と魔法もできるのが条件だったが、今や魔法重視で、剣はもしもの時に使える程度という。

魔法がほとんど使えないのに、無理ではないか?

そう思いながら、あいさつするのと辞令をいただきに、騎士長室に入った。

「君はちょうど良い時に来てくれた。

剣の腕は騎士の中でもトップクラスだ。

こないだの魔法、内緒だが、最終的にはロージーの森にいる大魔法師にお願いして解いた。

それだけ使えるのなら十分じゃないか。

これからは剣も魔法もという、原点に戻る方向に転換していく。よろしく頼む。」

魔法騎士の長は、第三王子のディルク。王子だからではなく、実力でトップにいる。

若いのにそこらの連中では、太刀打ちできないという。


騎士の方と違って、こちらは魔法が使える分、性格も変わっている。変人が多い。

あいさつをしたのだが、普通の反応をしたのが一人だけ。どうなっているのだろう?

普通の反応をした先輩のエルマーさんが、

「気にすることないさ。

それぞれが自分の能力や魔法に自信があるからね。

お互い適度な距離がないと、魔法でもめてしまう。」

と苦笑していた。


任務に連れて行かれ、報告書を提出したら不思議そうな顔をされた。結果さえ出せば良いだろうという風潮があるので、普通は報告書が上がってこないらしい。

それでは何をしているかわからないし、能力もはかれないのではないか、と思っていた。


数日後、手が触れると幻像が現れてしゃべるという手紙が、魔法騎士全員に送りつけられてきた。

魔法騎士長が浮かび、報告書がないと何をしているかわからないし、その件で王様からも指摘があったと言われた。

「激怒とまではいかないけど、かなり怒ってるな。

ディルク様は激怒して、過去に一国ぶっつぶしたっけ?」

「ぶっつぶす??」

極秘事項をエルマーさんは教えてくれた。

今から十年前、火山の噴火で壊滅した国がある。噴火前に内乱があり、民衆は隣国へすでに逃げていて、もめていた連中だけが被害にあった。

しかし実は、内乱を収めたい民衆が、わが国を頼ってきて交渉していた。

戦争や武力衝突が起こらないとはかぎらない。民衆だけは巻き込みたくなかったので、一週間かけて避難させてあった。

もめている連中はこれといってどうしたいという方向性や目標がなく、だらだら話しているだけ。

いらいらして、ブチ切れたディルク様が暴走したという。ディルク様を抑えるのと後始末が大変であったが、その国にある火山を噴火させ、自然の脅威に巻き込まれたように工作したという。

「問題はそれだけじゃなかった。

うちも昔、王族内で大もめして、貴族を巻き込んでややこしいことになったことがある。

とある王族が、陥れられて宮廷を去った。

その王族が行方も消息も不明でな。」

どこかで聞いたような聞かないような話。

「その王族は、器という能力があって、能力の暴走を誰かが起こすと、相手の魔力を引き受けて、暴走が収まるまで魔力を強制的に減らすということをしていた。

その能力を持つものはごくまれで、たまたまその王族と子どもが持っていた。

しかも、子どもはその能力しか持っていない。効率よくできる子どもの方を特に探していた。

しかし、どうやっても見つからず、ディルク様は半年間表に出られなかった。

もっとも、十歳になるかならないかというような子どもに引き受けさせるというのも、むちゃくちゃな話だ。」

と、その先輩は言っていた。


それってリアの可能性はないか?

年齢は合う。

一緒に調べていた兄に、聞いてきた話をした。

「器について詳しい話はわからないが、聞いた内容からすると、使うのは王族限定みたいだな。

魔力が多い家系だからな。

でも、完全に戻ればおまえも多いと思うよ。」

事情があり、魔力が一部封じられている。

「兄様が言いますか?」

「私は表向き文官で、裏でしか使わないからね。まあ、うちは基本騎士だから。」

あまりにも騎士に向かなかった兄は、こちらに家業としての騎士を継がせ、文官になった。

表向きには公表していないが、この家も王族と変わらないぐらい魔力があるという。

でも、魔法騎士として働くには向いていないと思うのに。

どうしていけばいいのやら。


兄は仕事柄、国の資料が保管されている書庫に入ることができる。

資料を見るのは任せて、こちらはもう少し十年前のことやさらに昔の王族たちのもめごとがわからないか、先輩に聞く機会をうかがっていた。


こちらより先に兄の方で調べがついた。

私の能力について、兄を呼んで尋ねたらしい。

話すのと引き換えに、許可なしでは閲覧不可である王族関連資料を見せてもらっていた。

ディルク様のいとこ、ブルクハルトのことという。

リアの父がディルク様のいとこなのかどうか、記憶をのぞかれるはめになった。

「間違いない。

・・・君の相手ってブルクハルトの娘か!」

そこまで知られてしまった。


ディルク様が王様や二人の王子に相談してくれた結果、十七年前の王族と貴族を巻き込んでのもめ事の再調査許可が下りた。

しかし、これまで王族間で何度と再調査を提案しては、却下され続けてきた。

そういう状況だったものを調査するのだから、リアの一家に危険がおよぶかもしれない。

でも、直接リアの父に言うわけにもいかない。

静かに過ごしているのに、こちらが再調査するせいで危険になるかもしれないとは迷惑な話。

しばらく考えた。


・・・いい人がいる。

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