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元貴族のお嬢様は、ギルド生活を満喫しています〜いろいろ忘れていたら、騎士になった幼なじみが迎えに来ました  作者: 天野乙音


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28/65

疑問

日がたつのは早い。

魔法使い氏がいなくなって、一カ月。

私は変わらず、事務員兼引受人手伝いをしている。

「リア、手伝ってって。

マスターが良いって言ってるわ。」

午前中に行ったものは簡単で、一時間で終えた。

「早くないですか?これの内容からして、四時間ぐらいかかると思っていたのに。」

妙な顔をしている。

そうなの?もっとかかるものなの?


午後は、一度午前中に討伐依頼で行ったものの、形勢不利で戻ってきた人たちの手伝い。

ついていって見ていると、動きが遅くて攻めきれていないみたい。

私の方へ魔物がやってきたので、深呼吸をした。


「ありがとうございました。

いやぁ、助かりました。」

「あと一息ってところが、二人だと攻めきれなくて。

大きかったですもんね。」

え?これって大きいの?

私は、これぐらいのを持って戻ってきた人たちを何人も見てきたんだけれど、どうやらよそでは大きい部類らしい。

練習場へ運んで、ギルドマスターたちが見ている。

こっそり聞いてみた。

「手伝った人たちに、大きいって言われましたが、よそではこれって、大きい方なのですか」

「そうだな、最近大きくなっているが、大きい方ではないと思うなぁ。」

大きさや種類を確認しに来た鑑定人の人たちも、ギルドマスターの言葉にうなずいている。


鑑定も終わり、報酬を渡していると、手伝った人たちが何か言いたそう。

「どうされました?」

「えっ、ああ、何も。・・・お疲れさまでした。」

そのままさっと出ていった。

なんだったの?


次の日の朝、昨日の討伐引受人の二人がやってきた。

依頼のボードを見ている。

めぼしいものがなかったみたいなんだけど、真っすぐこちらに向かって来た。

「あ、あの!今付き合っている人はいますか?」

「いませんよ?」

なんか小さくガッツポーズをしている。

「付き合ってください!

あの魔物に向かう時のかっこよさ、ハンパなかったっす!

ぜひ。」

「え?いや、そんな・・・。」

対象に向かってがんばっただけなのに、かっこいいと言われても困ります。

ギルドマスターが来て、彼らの肩をたたいた。

「彼女がどうしようか困っているようだよ。

こういうのはどうだ?

リアとやり合って、勝てば付き合うというのは。」

相手の目の色が変わって、めちゃくちゃやる気になっている!

「やります!やらせてください。」

「でもそのかわり、負けたらここのギルド出入り禁止な。

負けたって広まると、格好悪いだろ?」

疑問と驚きの入り混じった表情になっていたけれども、

「わかりました。

それでやりましょう。」


「リアに勝てば付き合うの?」

「みたいよ。」

私はカトリナにそう言って、ため息をついた。

「本音はどうなの?付き合ってもいいの?」

「変なのが続いたから、しばらくはいいんだけどね。」

はあ。仕方がない。

相手はSSらしいけれども、昨日の様子では大したことがなさそう。


「参りました。」

あの人には悪いけれども、勝ててよかった。

ギルドマスターは去りゆく二人に、

「五年か十年ぐらいたったらまた来たらいい。

それぐらいたてば周りは忘れてるさ。」

「はい。お世話になりました。」

か細い声で答えて、立ち去った。



何日かしてまた依頼の手伝いに行った。

今回の人はすごい!

私なんか行かなくてもよかったんじゃないの?と思っていたら、魔物が私の方へ突進してきた。

ほぼ倒れかかっていたのに!

正面だったけれども、踏ん張って、斬りつけた。

そこへ他の人たちが次々に斬り、やっと地面に倒れた。

「最後にこんなに力を出すって思わなかったな。」

「ああ、疲れたよ。」


ギルドに戻り、報告書を彼らは書いている。

「すごい人たちでも、最後まで気を抜けないよ。

相手も必死だからね。」

最後に突進されて、総がかりで斬ったと話すと、レオさんにそう言われた。

それはそうね、殺されちゃうんだもの。

報告書を受け取り、内容を見て間違いがないので、報酬を渡した。

報酬を入れて、入れ物を差し出したのだけれども、その時に添えた私の手に、彼の手を乗せてこう言われた。

「付き合ってくれない?」

「え?」


ギルドマスターに、

「リアに実力で勝てるならどうぞ。それぐらい簡単でしょ?勝てないなら、このギルド出入り禁止というのはどうですか?」

と言われている。

今日の人は前の人よりも絶対に強い。さっき一緒に行った時の様子だと、あんなに私は早く動けないし、手数も少ない。

今度は負けるかも?

押されてもう少しで私の負けが見えてきたころ、相手の様子がおかしい。

私に対して攻撃しているはずなのに、威力が明らかに減っている。

見えない壁で弱まっているような感じ。

もう一押しすると、あっさりと転がっていった。

「参りました・・・すごいですね。」

「いいえ。たまたまと思うのです。

申し訳ありません。」

何かわからないけれども、私は壁みたいなのに守られて、彼は負けてしまった。

そうとしか思えなかった。

それ以降、討伐、捕獲に出かけた人で私と付き合いたければ、勝負することということになってしまった。


「リアって強いね。

でも、そんなに付き合いたくないの?」

「そういうわけじゃないんだけれども。

なんかこう、手応えがないうちに終わっているの。」

壁に守られているような感じもあるけれども、相手が急に弱くなっているような気もする。

「付き合いたくなったら、わざと負けたり、引き分けたりすればいいんじゃないの?」

そりゃそうだけれど。

「うーん、それはそれで公平でないような気がするの。」

カトリナにあきれられた。

「人生一回きりなんだから、自分中心で考えなきゃ。

リアは遠慮しすぎ。」

遠慮したつもりはないのだけれども。


付き合ってと、間隔としては忘れたころにというタイミングで、何度かあった。

でも全部同じ調子。

「マスター、捕獲や討伐ではすごい人なのに、私とやりあうとなると負けるってどうなんですかね?」

マスターはため息をついて、ものすごく小さな声で何かつぶやいていた。

「そりゃそうだろ。守られているんだから。」

「ん?」

「いや、緊張していたり、行った後で勝負しているから疲れていたり、それかなめてかかられたんだろう。」

守られているとか言ってたようなのに、聞き直したら違うことを言われてしまった。

守ってくれている相手に何かあるの?聞いても答えてくれないだろうし、教えてもくれなさそう。



「マスター、リアに何かありましたか?」

稽古が終わったレオは、ギルドマスターのところへ行くと、小声で聞いてきた。

「特に何も聞いていないぞ?」

「この数日、稽古していても何かを考えているようでぼーっとする時があります。

このままだとけがをしそうで危ないです。」

家のことは何も聞いていない。例の方は何かあれば知らせてくるはず。

でも?

「心当たりがある。

最近依頼で一緒に行った人に付き合ってほしいと何度か言われている。

本人が困っていたから、勝負してリアに勝てば付き合えるということにしてあるのだが。

それがいざやるとリアが勝ってしまう。

それの理由を思わずつぶやいてしまい、慌てて納得がいきそうな理由を言ったんだが・・・。」

「どうするんですか?思い出そうとしているのか、相手が誰なのか疑問に思っているのか。」

「どうしよう。」

とりあえずは危ないので、しばらく稽古を休みにしようということになった。



「レオさん、今きりがいいです。

稽古をしていただけますか?」

レオさんに、いつものようにお願いしたところ、

「しばらく休もう。

最近何か悩んでないかな?稽古をやってても、考え事をしているのか、動きが遅くて、危ないよ。」

と言われた。

ばれていた。

「レオさん。私を守ってくれる人って誰だと思いますか?」

「ご両親じゃないかな?」

無難なあたりを答えられた。

それじゃないと思うのに。

「普段の生活ならわかりますが、何かと戦っていたり、危なそうなことがあると、何かに守られているかのように、感じるです。

両親が、魔法が使えるのならわかりますが、使えません。」

レオさんは何かに気がついたように答えてくれた。

「もしかすると、お祖父様やお祖母様が昔に何かかけられたのかもしれないよ。

それなら、ご両親が知らなくてもおかしくないね。」

「そうですか?」

「あくまでも可能性を言っているだけだから。違ったとしても、きっとリアのことをすごく心配して考えてくれる人だよ。」

レオさんは優しい。

そうなんだろうと思ってても、自分では納得いかないから、あれこれ考えていた。

「今日は休もう。

やりたくなったら、その時からやればいいよ。

それに、必ず誰かと付き合ったり、恋愛をしたり、結婚しなければならないってことはないから。

自分の思うように、納得がいくように過ごせばいい。

そう思うよ。」

「わかりました。

ありがとうございます。

私の疑問にお付き合いくださって。」


次の日からは、悩むのをやめにした。

「稽古、やります。

よろしくお願いします。」

レオさんは優しく笑ってくれた。

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