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なめてかかってはいけない

次の日の朝になって気が付いた。

「あの人たちを回収していないわ?」

ギルドマスターは、

「放っておいたらいい。ンギアロルカが、気が向けば助けるらしい。

今のところかなりお怒りだから、当面あのままだな。」

ぐるぐる巻きだから食べたり飲んだり・・・トイレとかは?

「仮死状態だから気にしなくていいさ。

やつら、最近調子に乗って、基本を怠っているし、リアをバカにしていたし。

ちょっとはこれでこりればいい。」

とレオさんも冷たい。


魔法使い氏と、たまたまギルドに来ていたほかの魔法使いが森全体を偵察に行って、戻ってきた。

「緊急用を元に戻した。それとやつら周辺に新たに仕掛けた魔法陣がちゃんと稼働している。

もし、命に問題があればここへ送られてくる。」

私とカトリナが不安そうにしているのに、気が付いたみたい。

「そう簡単に人は死なないよ?それにンギアロルカが見ているし。」



あれから二つ依頼を手伝った。

いつものごとく簡単なものなので、問題なし。

カトリナと話していると、若い剣士がやってきた。

「あの、手伝ってもらえますか?お手伝いに、簡単な捕獲も可能とあったから声をかけたのですが。」

手には、小型の魔物の捕獲という依頼があった。

カトリナが紙を裏返している。

「いいよ、行ってきても。」

「どうして、カトリナが許可するの?マスターに聞かないと・・・って、今日は本部に行ってるんだっけ?」

たまに本部へ、報告やら私たちの知らない何かで行くことがある。

それが今日なのだけれども。

断ろうとしたら、

「あのね、リアが行ってもいいっていう依頼には、裏に印がついているの。

ほら。で、ちょっとどうしようかというようなものには、」

と言って、ボードに貼ってあるほかの依頼の裏を見せてくれた。

三角の印が書かれてあった。

言われたものは裏に丸印が書かれてあるので、行ってよしということらしい。



「いやー、助かりました。何せ、相手は小さいので、探すのも大変、捕まえるのも大変っていう。」

ニワトリぐらいの大きさ。茂みから追い出すと突然羽を広げて飛んでいくという面倒な魔物だった。

面倒な相手なので、その分報酬が良かったみたい。

ちなみに魔法が効かないから、人力で右往左往していた。

確かに疲れたけれども、そんなに働いていないと思うのに、2000も渡された。

「もらいすぎですよ?」

「いいから。またお願いするかもしれませんし。」


「レオさん、今よろしいですか?」

練習場で片づけをしているギルド付き剣士に声をかけた。

「どうした?ん?依頼で森に行ったんだね。」

そう言いながら、頭と肩についていた何かをつまんでいる。

「森にしか生えていない木の葉が、クモの巣と絡まってついていた。」

ここまで誰も気が付いていませんでしたよ?

こんなに大きな葉なら、道で誰かに言われそうなのに。

「あのぐるぐる巻きの人たち、相変わらず括り付けられていました。」

「二週間たつのにね。よほどだな。」

取ってもらった葉をひっくり返すと、何か文字が書かれていた。

「何でしょう、これ?」

レオさんもわからないというので、そのまま預けた。

ギルドマスターならわかるかもしれないし、わかる人を知っているかもしれないということだった。

私たちが帰るところで、ギルドマスターは戻ってきた。

「レオさん、葉っぱの件、お願いしますね。」

「ああ、そうだね。」


「葉っぱ?」

「裏に文字が書かれてある。こういう時に限って魔法使いが誰もいない。」

ギルドマスターが文字を見ていると、

「予言だな。リアにわざわざくっつけてあったのは、直接聞かせない方がいいと思ったのだろう。」

といつのまにかやってきた魔法使い氏が見ている。

「ご丁寧に、そこらの人じゃあ解読できない文字で書いてある。」

レオが、不思議そうな顔をして尋ねた。

「わかるのか?」

「読めるのは今の世の中じゃあ、研究者ぐらいじゃないか。

私は読めるし、私に読んでもらいたかったようだな。読んでほしい相手なら、文字自体がわからなくても通じるようになっているが。

ンギアロルカめ、私を少しなめてるな?」


「そう遠くない時期に、元ある姿になるだと。

あの子にとっては激変だから、様子をちゃんと見てやれだとよ。

そのころに私がここにいるかどうかは不確定なんだがな。

家の方もあるし。」

今まで家のことを全く言わなかったのに。

「家族がいるのか?」

「・・・まあな。今自由にしているが、もうそろそろなんとかしないといけない。

その件は、リアにも関係あるからな。

どうやら、リアの予言のためには、私自身も元ある姿にならないといけないらしい。

それはあいつから直接聞いた。」

レオもギルドマスターも驚いている。

「いつ聞いた?言っている様子はなかったぞ?」

「キリルの王宮で、ンギアロルカと別の部屋に行っただろう?

その別れ際に言われた。元に戻れ、帰れと。

ここにその理由や時期も書かれてある。」

突然、葉っぱが燃えだした。

「ああ!」

「大した事はない。今言えることは、もうしばらく私はここにいるということだ。」

完全に燃えて、燃えかすも出なかった。



さらに二週間ほどたって、ンギアロルカにやられていた人たちがやっと戻ってきた。

後で聞いた話によると、ずっと悪夢を見続けていたらしい。

私の姿を見つけると、ギルドに入らず、一気に走って逃げて行った。

「何をしているの?」

「さあ?」

ギルドマスターたちが探して、裏の練習場へ引きずっていった。

なぜなら、彼らはしばられていた糸みたいなのが異臭を放ち、溶けている状態でやってきたから。

またこういう時に魔法使い氏がいない。

ほかの魔法使いが何とかきれいにしようとしたけれども、溶けていたものは取れても、においが取れない。

「服は捨てた方がよさそうだな。」

「す、捨てないでくれ!それは魔法を練りこんである糸で作ってあるから。」

やっとしゃべってくれたが。

「難しいことを言うなあ。くさすぎるぞ。」

「薬草風呂でもするか?服のまま入ればましか?」

「どけっ!」

相談していた人たちが慌てて逃げると、三人に向かって大量のお湯がかかっていた。


かけられた湯は、球体の入れ物に入れられたように宙に浮いていた。

三人がその中にはまって、出られなくなっている。

「半日ぐらいつかっていればいいだろう。」

くさくはないが、妙なにおいが漂っている。

「薬草風呂か?」

「結局はそれしかない。」

練習場の口のところで様子を見ていた私に、

「近寄らない方が良いぞ。あいつらがあの中で暴れると、お湯がもれる。

もれたらくさいからな。」

と言われたので、一緒に建物へ戻った。



「そういう悪夢はいやだな。」

レオが言う。

終わりのない追いかけっこみたいな悪夢。

延々と見せられたという。

「怒らせたのが悪い。ほかの魔物やモンスターの類と同じ扱いをしたのだろう?

他と違って賢いし、プライドもあるからな。」

とギルドマスターがいう。

「悪い予言を言われなかっただけましと思え。」

魔法使い氏がそういうと、三人は体をこわばらせていた。

「ごくまれに呪いを言うからな。」

ンギアロルカに長期間拘束された人はこれまでにいないらしい。

三人は出された回復の薬を飲み、明日念のため本部に送られることになった。



本部からの手紙をギルドマスターは読んでいる。

「あの三人、特に問題はなかったみたいだよ。」

「良かったですね。」

「ただ、ランクを確認したらしい。

長期間拘束されていたからではなさそうだが、剣士はSやSSではなくSとAの間ぐらいだったそうだ。

そのせいで、ランク認定はもっときっちりやれと言われたよ。

しばらくは、認定や改めて判定するのに本部から人を派遣するって。」

「偽装が減りますね。」

とカトリナがほっとした表情で言う。

そんなにランクがおかしいのがいるの?

「報酬で、時々あるだろう、Sならいくら、SSならいくらってランク別に変えてあるのが。」

「はい。・・・あ!なるほど。AなのにSだったらその分多くもらえるからですね。」

「怪しいギルドがいくつかあるんだけれど。

何度言われても、判定の時にお金を積まれると負けてしまうみたいですね。」

「ギルドによっては、地域の人の理解があまりなくて、維持が大変なところもあるからな。」

大きいということもあるけれども、地域の人たちの生活にも根ざしているというのは、ギルドの維持に不可欠とも言われた。

思っていたよりも大変なんだ・・・。

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