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元貴族のお嬢様は、ギルド生活を満喫しています〜いろいろ忘れていたら、騎士になった幼なじみが迎えに来ました  作者: 天野乙音


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私はおまけです

「久しぶりだな、ここのギルド。

マスターも変わりなくお元気そうで。」

「ああ、相変わらずだよ。」

やってきた三人を見て、ギルドマスターは返事をしている。

「受付のお嬢さんも相変わらずかわいいね。

よっ!剣士よ、まだふらついてるのか?」

「いや、もうふらつくのをやめて、ここに居付くことにした。」

レオさんの発言に、相手は驚いている。

「一緒にやってくれそうなやつを探してたんじゃなかったか?」

「いや、いないわけではなかったんだが、相手にも事情がある。

いつまでも一人でやるわけにはいかない。マスターにもすすめられたから、そのままいることになったんだよ。」

相手はしみじみと一言、そうか、とだけ言った。


ほかのお仲間さんが、

「さっそく、これ行こうぜ。」

その人は依頼内容を見て、

「おう!行こう行こう。」

返事が返ってくる前に、引受書が書かれて、最後にその人の名前を足した。

「速攻で行って帰ってくるよ。」


その言葉どおり、一時間ぐらいで戻ってきた。

そして、また一つ引き受けて行ってしまった。

「早いですね。」

風のように去っていく三人。

「当たり前よ。あの人たちS一人とSS二人だもん。」

受付でカトリナは言った。

「Sも経験が少し足りないからという理由だから。今やればSSになるかもな。

そうだ!」

ギルドマスターがそう言うということは、

「あの人たちに頼むから、一緒に行ってきたら、ということですか?」

「まっ、そうだな。」



ギルドマスターが戻ってきた三人に、私を紹介してくれた。

私が報告書を受け取って、中身をざっと見ている間に、今後の依頼の内容を見て、初心者の私を連れて行っても大丈夫ならば、加えるということになっていた。

報酬を渡していると、

「そうだな、その時の報酬はあなたのがんばり具合を見て決めよう。」

「単なる見学は、本来足手まといだからな。」

ギルドマスターが席を外しているからって、そんなに嫌そうな顔をしないでほしい。

足手まといになりそうなのはわかっているから。

ギルドマスターが戻ってきて、

「申し訳ないけれど、そういうことで、お願いします。」

と言うと、さっきとは違って、

「いいえ、お気になさらず、ね。」

と、これまでの様子を見ていなければ、ほれてしまいそうな爽やかな笑顔だった。


「リア、ああいうやつが一番面倒くさい。

何かあればやってしまっていいぞ?」

と魔法使い氏が言う。

「お願いしておいて、それはないですよ?

出しゃばって依頼をこなしても文句言われるでしょうし、不快だからって言い返しても、ここへ戻ってきて苦情を言われそうですし。」

そこまで言って気がついた。

「どうやってもギルドマスターに文句を言うでしょうね、あの人たち。」

「そういうこと。言われ損にならないようにしろよ。」

おまえの方が格上だと、聞き取りにくい、小さな声が聞こえた。



飯屋であの三人がくつろいでいる。

久しぶりの場所なので、酒も入って声が大きくなっている。

「面倒くさいな。

あいつできるのかよ?」

とSランク剣士が尋ねた。

「ある程度できるから、実戦投入っていうところだろ。」

と冷静に魔法使いが言う。

ギルドマスターにお願いされたとはいえ、本当の実力はわからない。

「見せてもらったギルドカードには、Aランクとあった。

ひよこだよ、ひよこ。」

「でも、あれ、よく見たか?

本部のやつの判定だったぞ。

ギルドマスターが手加減したのじゃない。」

とSSランクの剣士が、長い髪を耳にかけながら言った。

「本部の判定を見たことがあるか?

かなり厳しいよ。

Aの判定でも、ギルドならS、甘いところだとSSだと、居合わせたSS剣士が言ってた。」

魔法使いが言うのを聞いて、

「でも、判定はAなんだから、Sの可能性はあっても、SSじゃない。

どうせ足手まといになるだろうから、見学だな。」

とSS剣士が言うと、

「いつ行くかわからんから、行くことになった時に考えればいい。」

と魔法使いは答えた。



動きやすい服装で仕事に来た。

姿を見るなり、魔法使い氏に言われた。

「やる気だな。」

「だって、急に行けって言われてもいいようにしておかないと、マスターが・・・」

「なんだ?」

と魔法使い氏に続きを促された。

「悪く言われます。」

「なきにしもあらずだ。

やつらは油断している。

ここしばらく楽勝だったんだろう。」

「どうしてそう思う、魔法使い氏?」

とギルドマスターが聞いてきた。

「普通初対面のやつと一緒に行動する場合、ギルドカードの表だけでなく、裏も見る。

裏には、これまでの引き受けた依頼の記録と特記事項や備考が記載されてある。依頼はある程度やると、グラフや表の形で見ることができ、依頼の報告も見ることができる。

やつらは全く見ていない。

なめてやがる。

だから、リアのただし書きを知らないんだよ。」

ギルドマスターもレオさんも苦笑していた。


例の三人が来た。

依頼を見て、

「今日は受けるようなものがないな。昼にまた来よう。」

そう言って、立ち去っていった。


昼前に再び三人が来た。

「この時間でもないから、今日は休みだな。」 

今度はそのまま居座って、一人がカトリナに声をかけている。

「二年ぐらいここに来なかったけれども、誰かと付き合ってるの?」

「それはどうでしょうね。」

カトリナははぐらかしている。

「だったらさー、俺と付き合わない?ランクはSSだし、食いっぱぐれはないよ。」

「それはいいですね。

でも、私まだここで働きたいですから付き合いませんよ。」

かなり消極的に、嫌と言っている。

「どういうこと?俺がまたどこかへ行くかもしれないから不安ってこと?

でもさ、基本ここにいて、依頼が減ったら稼ぎに他のギルドに行ってくるっていうのなら、ここで働いても問題ないだろ?」

カトリナは作り笑いで、

「私束縛するタイプだから、それでも嫌ですね。いつもすぐのところにいてくれないと。

どこかで浮気されてそうっていう疑いを持っちゃうだろうから。」

うわ!カトリナってそういう人なの?

「ちぇっ。だめかー?」

「ここに定住する気になったら、考えてもいいですよ。」

「うーん、それはないな。」


腕組みして私を見ている。

「きみはいつからここにいるの?」

「一年半ぐらい前からです。」

「ランクがAって、いつから?」

「一カ月前です。それまで約一年稽古をしていました。」

SSランク剣士は、えっ?と言ってだまってしまった。


三人が出ていった。

「やつらびっくりしたみたいだな。」

「びっくりするようなことでも?」

レオさんに尋ねたら、

「何もしていなかった人が一年ぐらいでAランクって、そうないから。

リアががんばっただけでなく、素質も多少あったんだよ。

少しは認識が変わるかな。」

カトリナを見た。

「ん?さっき言ってたこと?

いちいちギルドへ来る人に反応していたらきりがないわよ。

ちなみに、束縛癖はないわ。」

ちょっと安心した。


本部からの手紙が遅いなあと思っていたら、今日は夕方に持ってきた。

「すみません、遅くなって。

SSランクの魔法使いと剣士がそろっているという情報をいただいたので、本部経由の依頼を持ってきました。」

あなたたちが行くんでしょ?と言わんばかりに、私やレオさん、魔法使い氏を見ている。

「いや、私はいかないよ?

行くなら、今ここにいないやつらだ。」

「そうだよ。普段から行っているのは彼らだから。」

本部の配達係さんは、がっかりした表情で言った。

「てっきりリアさんを連れて、三人で行くのだと思っていましたから。」

依頼をギルドマスターが見ている。

「明日、彼らとリアが行きますよ。」



例の三人が現れると、ギルドマスターはあの依頼を手渡した。

「本部からSSランクの魔法使いと剣士がいるパーティーにお願いするというものだ。

リアを連れて行くには、ちょうどいいと思う。

お願いしてもいいですか?」

「喜んで、お引き受けしますよ。」

また、人をだますさわやかな笑み。でも、連れて行ってもらうのだから、きちんとしておかないと。

「よろしくお願いいたします。」

と丁寧にあいさつをした。

「彼らはこの辺をよく知っているし、精鋭だから安心してついて行っておいで。」

ともマスターが言っている。

「はい。」


「あなたは端っこの安全なところから見学したまえ。」

なんのためにくっついてきたのかわからないなあと思ったけれども、実戦したことがないから仕方なく指示に従った。

彼らは、

「楽勝だろ、こんなの。」

と言ってかかっていた。

しかし、大型モンスターはあちらこちらを移動しながら、うちのギルドの管轄範囲に来たのである。

人の攻撃なんて慣れている。

巧妙に攻撃を避け、引っかいたり、火をはいたりしている。

体が大きいけれども、動きが早いので、攻撃してもあまりモンスターに効いていなさそう。

魔法使いさんが放った雷がヒットし、そこへ二人の剣士が斬りつけた。

紫色の液体が飛ぶ。


でも、逆上させちゃったみたい。

モンスターはめちゃくちゃに火をはいているように見えるけれども、全部こちらの動きを予測している。

着地点に放っているので、剣士さんたちがアチアチと言って走り回っている。

剣を振る時に合わせて、魔法使いさんから魔法が放たれた。

そこらじゅうが凍った。

「よし!」

さらに攻撃をしようとして、構えたところで、しっぽがぐるんと勢いよく回転してきた。

全員吹っ飛ばされていった。しかも燃えているところへ。

魔法使いさんがなんとか、火を消した。

三人とも動かなくなった。


マスター、この人たち精鋭って言ってましたよね?

それに安心して行けるとも。

モンスターは三人に興味がなくなったらしい。真っすぐに私の方へ向かってくる。見えない位置にいるのに。

どうしよう!

私はおまけですって!

言っても聞くわけない。

全員やられて大ピンチなんですが・・・。


しっぽがまた振られた。間に合わないので、剣を出して振り払った。軽く刺したみたいで、紫の液体が飛んだ。

うわ!怒っている。

仕方がないのでやるしかない。

突進してきたモンスターに向かって剣を振った。


無我夢中。どこをどうやったのかわからない。

気がつけば倒せたってどういうこと?


後ろから拍手が聞こえた。

「心配になって見ていたら、大丈夫だったな。」

魔法使い氏とレオさんだった。

「大きいな。よく倒せたね。」

「さて、やつらとこれを持って帰るか。」

そう聞こえたとたん、練習場に移動していた。

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