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お仕事一年たちました。

ギルドで働くようになって一年になった。

「おはようございます。」

しばらくしてから騒がしく、カトリナが入ってきた。

「お、おはようございますっ!」

ぜーぜーやっている。

「先輩なのに、相変わらずぎりぎりに来るなあ。

もう少し余裕を持とうよ?」

レオさんにあきれられている。


「リア、一年になったな。」

「早かったです。」

しゃべりながら、受付の手伝いをやっている。

「書類に書かれている内容が複雑で心配でしたけれど、なんとか覚えてきましたよ。」

「いろいろあるから、この調子でやってくれ。頼むよ。」

「はい。」

そのままギルドマスターは、奥の部屋に書類の束を持っていった。



「いつぞやの羽は、ちゃんとあっちに届いていたのだな。

前回の手紙に書いておいたら、返事にあった。」

「だろ?心配することないって。」

ギルドマスターはそう言いながら、手紙を書いている。

「一年たって、もし記憶が正しくそのままあったら、確かにさみしいかもしれないな。」

とつぶやいた。

魔法使い氏が何やらごそごそやっている。

「・・・魔法使い、リアの記憶を戻すな。

向こうから戻しに来るはずだから、その時までいじるな。」

「ちぇっ。」



「一年祝いをしようよ。」

働いて一年がたったという話になって、カトリナが言い出した。

「え?でもそれなら、カトリナも何年か祝いをしないと不公平よ?」

「いいの!リアだけすればいいの。」

「まともな食い方をするから、いい店に連れて行ってやろう。」

みんながじっと魔法使い氏を見た。

「本当にできるの?」

「なんだ、その疑いの目は。」


「まともな食い方ができるのだな。」

レオさんが、おなかいっぱいと言っている魔法使い氏をみている。

「何もなければ普通だ。魔法を使うからおかしいのであって、普段はこんなもんだ。」

全員が食べ終わったところで、デザートが出てきた。

ただ・・・デザートの量がおかしい。

「やっぱり、おかしいところがあるじゃないの?」

魔法使い氏の皿だけ、人の三倍の量が盛られていた。



家に帰って、食事会の話をしたら、お父様が

「魔法使いは、普段は魔力を使わないからその分いらない。使う時だけそれを補う。

それが、その人はご飯なんだね。デザートだけが多いってことは、人知れず、何か裏で魔法を使っていたのかも。」

と話してくれた。

魔法?使うところってあったっけな?

「かもしれません。あのお店まで歩くには少し遠いからって、行き帰りの往復に魔法を使ってくれました。」

「かなり離れたところなのかもね。」

「どうしよう、そんなに遠いところって思っていなかったから!」


次の朝、魔法使い氏が来たのでお礼を言っておいた。

「昨日はありがとうございました。

あのお店ってかなり遠いところだったんじゃないですか?」

「・・・どうして?」

「デザートだけ人の三倍の量。なんでもなければいらないですよね?」

ふっ、と鼻で笑われた。

「家の人に言われたな?

そうだよ、ここからだと歩いて三日ぐらいはかかるな。

でも、あれは食べすぎだ。あんなにいらなかったんだが、客を連れてきたからって喜ばれて足された。

あれで、依頼を受けなければ、三、四日は水だけでもなんともないぐらいに食べたよ。」

「そうだったんですね。」

確かに魔法使い氏がここに、お昼時いても、ご飯を食べていることは少ない。

お金がつきたというのもあるかもしれないけれども、食いだめの方が正しそう。


お昼前に時間があったので、稽古をしていると、

「昼から依頼の手伝いをお願いしたいって、来てるよ!」

とカトリナに言われた。

「わかったー!」

「きりがいいから、終わろう。」


「松ぼっくり拾い?私でなくても大丈夫そうですが?」

「それが、場合によってはアリにやられながら取ることになります。」

引受人の剣士がそういうんだから、かなり強いか数が多いのかな?

「やられるってどういう?」

「そのとおりなんですが。へたするとアリが体にびっしりくっついた状態に。」

想像するだけでぞわぞわする。

「一応剣が使えるって聞きましたよ?振り払えばいいので。」

「使えるって言ってもそんな、振り回す程度ですよ?」

じゃあと言ったかと思うと、

がちんっ

突然出されて、剣で止めた。

「それができるのなら大丈夫ですよ。行きましょう。」

それでいいの?不安がいっぱい。


「さてと、たまには運動でちょっと行ってこようかな。」

魔法使い氏は急に依頼引受書を書くと、さっさと出かけて行った。

「見守りに行くなら行くでいいのに。」

「意外と心配性ですね。」

カトリナとレオが顔を見合わせていた。



大きな松ぼっくりが落ちている。人の顔ぐらいの大きさ。

「個数は二十なんだけれども、今九個だから・・・。」

木の上を見上げている。

「登りましょうか?」

皮の手袋をはめて、ロープを引っかけつつ、登っていった。

引受人さんが時々剣を振り回している。

アリが落ちてきて、私の背負っている袋に引っかかった。

「うわっ!大きい。」

かもうとしてきたので、振り払って落とした。

大きく枝が二手に分かれている。

「ここから先はアリだらけ。自分で払ってね!」

引受人さんは左に行ったので、私は右に進んだ。

うようよいる。本当に払わなければ、埋もれそう。

てのひらぐらいのサイズなので、かまれると絶対痛い。

少しずつ払いながら進む。

「いくつ集まったー?」

「五です。」

「こっちは四!あと一つずつで終わろう!」

「はい!」


もう少しで取れそうというところで、アリが腕の上をはっている。

もう片方の手は枝をつかんでいないと落ちる。

変に動かすと、アリにかまれそう。

「え?」

器用にアリは私の腕から松ぼっくりに移り、あごでちぎってくわえていった。

「・・・とられた。」

元に戻ってさらに登らないといけない。

また、取ろうとしたところ、アリが待ち構えている。

今度はアリを振り払えたので取れたが、バランスを取ろうとつかんだところにアリがいた。

アリごとつかんでしまったので、アリにかまれた。

「痛いっ!」

焼けるように痛い。

あれ?枝が燃えている。慌てて枝の火を消した。

でも、火を消せたけれども、手袋片方のほとんどを燃やしてしまった。


「アリにかまれたら、火がついた?

そんなことはないはずなんだけれどな。」

ギルドに戻って、ギルドマスターに手を見せた。

少しはれている。

「ちょっとひどいな。魔法使いに見せたいところだが、戻ってくるなりああでな。」

いすを二つ並べて寝ている。

「とりあえず薬をぬっておこう。」

「ちょっと待った!」

あ、起きましたね。

やってくると、小声ですまないと言われ、目の前が暗くなった。

「奥の部屋に寝かそう。」



カトリナには報告書の受け取りと報酬支払をお願いしてある。

今日はあまりいないから、大丈夫だろう。

「薬よりは魔法か?」

ギルドマスターが尋ねた。

「周りに影響がないようにするので精一杯だった。

アリにかまれた時の痛さが予想外だったんだろうな。下手したら、森を燃やしかねなかった。

魔力が本人より外にもれないようにしたら、どうやら結界と擦れて、摩擦で燃えたようだ。

油断しすぎたな・・・。」

魔法使い氏が手を握ると、いつの間にかその手に剣が握られている。

軽く引っ張ると、帯のようになり、リアの右手へ包帯のように巻き付けた。

「これで良し、と。」

そう言っているうちに、巻き付けたものが消えた。

「やけどだけれども、実質は魔力があたってけがしているのと同じだからな。

これで治った。」


「?

ごめんなさい、急に目の前が暗くなって。」

「倒れる前に支えたから大丈夫だ。右手は痛くないか?」

変な風にはれていたのが、すっかり治っている。

「なんともないです。

ありがとうございます。

回復の魔法って便利ですね!」

魔法使い氏は、少し困ったような表情をしている。

「便利だけどな。そればかりに頼るわけにはいかない。

使えた方がいいけれども、付き合い方に気をつけないといけない。」

「そうなのですね。」

もう一度お礼を言って、仕事の続きに戻った。

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