表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/65

魔法使いは皆くせもの?

ギルドは前よりも人が来て、にぎわっている。

特にA、Sランクは取り合いをしているぐらい。

「こらっ!中でも外でも、依頼を実力行使で取り合うのは禁止だ!」

けが人が横たわっている。


「依頼を受ける前から大変ですね。」

と、朝から忙しく仲裁しているギルドマスターに言うと、

「力自慢対決をしたいのか?それは大会でやれよ、もう!

S級は最近少なくなってきているから、取り合いするのは分からなくもないが。」

「そうなのですね。

・・・これでよし。」

今日は魔法を使える人がいないようなので、普通に薬を傷口に塗ってあげた。

「理由はな、騎士が最近急激に強くなって、統制が取れているからなんだ。

今までは、言ってはいけないのだが、ばらばらで、集中して攻撃しても弱かった。

だから、S級は攻めきれなくて、ギルドに回ってきていた。

騎士って五人で班を組んでいるが、その一つの班がものすごく強いらしい。

一つ強い班が出てきたら、当然それを中心にほかの班も見習ってやっていくから、全体が強くなったというわけ。」

「そういうものなのでしょうか?

普通は考えません?

これまで、何とか強くなろうとか、まとまろうとか思っていなかったということですか?」

リアの言うことはもっともだ。

しかし、ここで言われても、彼らがどうしていたのかなんてわからない。

「まあ、そうだったんだろうな。

強い班の誰かか全員が、考えて実行しているのだろう。」



”魔法使い必須。”

”魔法AからSランク必須”

魔法使いが必要な依頼だけが残っている。

「今までなら、これだけたまると、あいつが全部だまって片づけていたな。」

「そう、こっそりはがして、しかも一日で全部。」

さみしいのは、みんな同じみたい。


ばん!


扉を力任せに開けた人がいる。

「来てやったぞ!喜べ!

魔法必須の依頼は全部片づけてやる。」

依頼ボードのところに来ると、全部をはがして、さっさと引受書を書いていた。

「・・・あの、念のためランクを確認させてください。」

胸を張って、見せている。

「文句なかろうが!」

「わかりました。よろしくお願いいたします。」

ギルドに置いてあったガイドマップを持って、さっそうと出て行った。


「なんか変なのが来ましたよ?」

「SSSでした。ランクの高い魔法使いって、変なのが多いのですか?」

カトリナも私もそうじゃないのかと思っていた。

「たまたま・・・と言いたいところだが、結構そうかも。」


これまでここにいた魔法使いさんと同様、業務が終わる三十分ぐらい前に戻ってきた。

「全部終わった。報告書を書くのが今は面倒だから、明日書く。

それでいいか?」

「ええ、構いませんよ。

念のためお知らせしますが、報酬は合計で・・・50200ゴオンです。」

「五万か、まずまずだな。じゃあ、明日。」

と言って出ていった。

「どうして金額を言ったの?」

私の質問に、カトリナは困った顔をして答えた。

「中にはね、報酬を当て込んで飲み食いしたり遊んだりする人がいるのよ。

この辺の店は、そういう人相手に、結構つけが通るの。

後で迷惑を受けるのはうちで、場合によっては本部が肩代わりすることになるから、あやしい場合は金額を伝えておくことにしているの。」

その心配は大当たりだった。


「ギルドマスター、おはようございます。」

「あれ?こんな時間にめずらしい。」

近所の飲み屋のおやじさん。昼もやっているから、時々食べに行っている。

「実は昨日の客、三軒はしごして、合計三万分つけで飲み食い。

で、おそらく宿代もつけにしているだろうから、先におさえにきました。」

「ね、いるでしょう?」

カトリナの思っていたとおりになっている。

名前を聞いて、

「間違いないので、支払いますね。」

とさっさと払って、三枚の領収証を預かっている。

「しかし、三万分って何を飲み食いしたのでしょうか?

大酒飲み?」

よく、酒代が払えないって聞くけれど。

「お嬢ちゃん、酒だけがお金かかるんじゃないよ?

やつは大食い、しかもグルメな大食い。

魔法使いは大きく二つに分かれる。大食いと食べない。

やつはやせの大食いでグルメだから、一番たちが悪い。」

じゃあと言って、おやじさんは去っていった。


「もう来たか。

よほど信頼がないのだな。」

と報告書を書きながら、思案している。

「はい。これ。」

残っている報酬と領収証をもらっている。

「宿代を稼ぎに行くか・・・。」

そう言って、また二つをはがして書くと、出かけていってしまった。


「あのー、昨日ぐらいにソロの魔法使いが来たと思うんですが。」

町に二軒しかない宿屋のおかみさんが来た。

「今しがた、依頼を引き受けて出ましたよ。」

「しまった!遅かったわ!

じゃあ、この紙置いていきますから、報酬が出たら取っておいてもらえますか?」

「はい。」



「宿代全部持っていっただと?」

十日泊予定としてあったので、全部を一気におさえられてあった。

「の、残りが1200ってほとんど食えん。

今日は断食だな。」

そう言って、わずかになってしまった報酬を受け取って、とぼどぼと出ていった。

「まとめて持っていかれたことって私はなかったが。」

「あの風体だからな。

魔法使いというより、家なし金なし仕事もなしっていうやつにしかみえない。」

その時ギルドにいた人たちからは散々な意見が聞こえてきた。

しかし、ギルドマスターは報告書を見て、

「名前を聞いたらみんな飛び上がるだろう。

前ここにいたやつといい、あいつといい、どうして伝説級が来るのだろうな。」

そこにはラルゴ・モレアという名前が書いてあった。


お茶を飲んでいるギルドマスターに

「さっきの魔法使いさんって、そんなにすごい人なのですか?」

こっそり聞いてみた。

急に目つきが鋭くなって、防音の魔法を展開したらしい。

『ちょっとな。今音が聞こえないようにしたから言うけれども。

モレアっていうのは、魔法使いの中でも尋常じゃない魔力を持つ家だ。

計測値はSSSが最大になっているからそう書いてあるが、もしかすると軽く当ててそれか、計測器が振り切れたかしたんじゃないかとも言われている。

魔法具を作らせると、神がかっているというようなものを作るらしい。』

マスターの口が動いていない。

あまり人に聞かれちゃだめみたい。

「見た目は、みなさんが言うように、やることなく、さまよっている人と違わないような。」

と正直に言った。

『ふだんはそういう状態だからな。

全く服装に無頓着なんだろう。

世の中に大魔法師が何人かいる。

本来ならそこに入っているはずなんだが、しばられるのは嫌だと言って拒否しているとか。

あれなら納得できるな。』

今までの妙な圧がなくなり、魔法を解除したよと言われた。



次の日はギルドが開く前に、あの魔法使いは待っていた。

「今日はなりふり構わずやらないと飯がない。

野宿より飯なしの方がつらいからな。」

と言って、ランク無視で八つむしっていった。

「一応は、ほかのやつのことも考えて遠慮したみたいだな。

まんべんなく残してある。」

と、ギルドマスターは残っている依頼を見て言った。

「気が利くんだか、よくわかりませんね。」

と言いつつ、剣士は何か資料を見ている。

「これ?」

冊子の表紙を見せてくれた。

そこには、大魔法師と書いてある。

「あの魔法使いの父は大魔法師だったようだが、いろいろな面で父親を上回るのに、絶対嫌だと言って拒否しているらしい。

大魔法師の方では、お尋ね者扱いになっている。

突き出しますか?」

「大魔法師とギルドは、別につながってはないから、無視してていいだろう。

そういう扱いになっているというのも、その資料を見なければ知らなかったのだからな。」



また今日もみんなが戻ってくる頃に、ちゃんと戻ってきていた。

「今日はつけがないから、思う存分食うぞ!」

「そんなに食べるのですか?」

カトリナが驚いて尋ねた。

「魔法使いは、魔力を使ったら当然その分、エネルギーが減る。

私の場合は腹が減るから、それを補うのだ。

だから大量に食べることになる。

質も問われるからな!

じゃっ!」

そそくさと去っていった。


「そんなものなのですか?」

「私はそこまで減ったことがないから、わからん。」

この後こっそり魔法使いさんが食べているところへ、カトリナと見に行ったことは内緒です・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ