出会い。
10歳、キンモクセイの香りのする秋の日、私、小鳥遊今の家に同い年の女の子が来た。がりがりにやせていて、年下にしかみえない、暗い目をした女の子。家の玄関にその女の子が、私の親と一緒に立っている。
「ねえ、キミ名前は?」
「…………ノゾミ」
それが、やせぎすの女の子、時田ノゾミとの出会い。
はじめ、私の妹、未来とノゾミは、仲が悪かった。
「もー、なんで、しゃべんないの!なんかしゃべってよ!」
「…………」
キーと言いながら、未来がノゾミの髪の毛を引っ張っている。ノゾミは泣くでもわめくでもなく、されるがまま。
「わー、ちょっとちょっと、だめだめ」
ノゾミをいじめる未来を私が止めに入る。
「だって、おままごとなのに、ノゾミちゃんが何にもしゃべんないんだもん!」
「ノゾミも何か言い返しなよ」
「…………」
「暗いなー」
「ねっ、お兄ちゃんもそう思うでしょ。ノゾミちゃんがおかしいんだよ」
未来がそういうと、ちょっと悲しそうに目が伏せられる。少しは思うとこがあるんだな。全く感じていないわけじゃないんだな。
ある日、前日遊びまくったせいか、少し筋肉痛気味で、体がだるい。
そこで、自分で考えたラジオ体操のようなものをしていた。
「あーよいよい、どっこいしょ」
どっこいしょ、で後ろを振り返ると、そこにノゾミがいた。
いつもの半開きの暗い顔ではなく、まん丸の目をして、頬に朱が入って、口元がだらしなく笑っている。目は少し涙でうるんでいる。
「……どったの?」
「……いい、いい、続けて」
「あっ、そう?……あーよいよい、どっこいしょ」
三十分くらいかけて、体操をした。
その間、じっと、何かをかみしめるような顔して、ノゾミがこちらを凝視していて、たまに、ノゾミの珍しい、フフフという笑い声が聞こえてきた。
なんだかな。
後年、この時のことを聞いたら、何でもノゾミのなくなったお母さんがしていた体操に、よく似ていたそうな。掛け声も一致していたんだとか。
後から考えると、この出来事以降、ノゾミとの心の距離がぐっと近くなったような気がする。
「ねえ、おかあ、……間違えた。コン」
のぞみの笑顔が増えていく。
少しずつ要求が増えていく。
まず、コンとノゾミ、その次になんだ、笑えんじゃんと、未来が仲良くなる。
ひとりでなく寝るとき
何かの行動がなくなったノゾミの母親と重なる
祭り
ノゾミを未来が認める場面
二人の結婚式のまねごと