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2 夢幻界

私は気が付くと森の中で眠っていた。森は草木で生い茂り、アゲハチョウが舞っていた。

アゲハチョウが頬をそっと撫でた。

「ううん?」

私はそれに起こされて、瞼をこすり、目を覚ました。そして一言。


「ここは、どこ」


あたりを見渡す、あたりには木や草花しかなく、青い月が夜空に輝いていた。私はここがどこだか認識できなかった。

「なぜ私がここにいるんだ」

そう言って頭を抱えて自分のことや、ここで眠っていた経緯を思考する。アトジと名乗る女がなにかして私を夢幻界とやらに送り込んだ。頭の中を整理してそう考えた。

「ここはどこだろう」

そう言って、自分の服装を見た。身に着けていたのは白のエナメルジャケットに、黒いスカート。そしてブーツ。私は自分の身なりをみて、普段私が着ないもので構成されていた。


「私の身にいったい何が起きたんだ」


 そう言って服についた土を払い立ち上がった。そして、なぜ自分がここにいるのかを知るためにあてもなく歩きだした。

―ーー

歩いて何十分たっただろう。流れる汗を手で拭いながら、舗装されていない道を歩いていると、叫び声が聞こえた。私は何事かと驚き、足を声がしたほうへ向けて走った。

そこにいたのは古めかしい中世のヨーロッパデザインの服を着た少女で、彼女は命の危機に瀕していた。それはなぜか。それは身長が二メートルを超す、大柄の魔物、リザードマンたちが少女をにらんでいたからだ。

 リザードマンは口からよだれをたらし、少女を見据える。リザードマンは少女のことを完全に捕食対象として認識していた。

(危機的状況だ!!)私がそう思った瞬間、リザードマンは口を大きく開き少女に襲い掛かろうとした。

このままでは少女は殺されてしまうだろう。少女は自分の命が消える瞬間を体験するはめになってしまう。だが、そんなことに気づかない私が声をかけた

「おいあんた、ここはどこだ、私は誰か知っているか」

私の声に少女とリザードマンは驚いて、目線をこちらに向けたからだ。


「ここはどこだかしっているか」

「なにいってんのこんな状況で!?」


 私の言葉に少女は驚き、リザードマンは捕食対象が増えたことに喜び、私に襲い掛かった。

哀れ私は、何もできずに死んでしまった。そう思ったしかし、

〈アイアン〉

 エナメルジャケットのポケットからからトランプサイズのエルカードを使う、〈アイアン〉音声が響きわたらせた。リザードマンの牙が彼女の肉を抉り出そうとするが 私の体は『鉄』の様な硬さに変化していてで不可能だった。

「せいや」

 私はそう叫びリザードマンを殴り飛ばそうと(オーガ)のカードを使用した。


(オーガ)

 瞬間、私の頭部に鬼の角が生えた。そして拳は鬼ごとき怪力を発揮して、リザードマンを木へ殴り飛ばした。

「グギャ」

 その衝撃で相手は気絶した。それを見たほかのリザードマンは恐れおののき足を引きずったが、捕食対象にになめられるなぞ、あってはならん事だと私に再び襲い掛かった。

(やばい!?)

そう思ってわらにもすがる思いで、ポケット中を探った。中には複数のカードが入っていた。私は無我夢中で一枚のカードを取り出して、構えた。カードは輝き音声を発する。

(グリフォン)

瞬間、私の背中に鷲の翼が生えて、突風を巻き起こした。その突風は相手を吹き飛ばすほどの強さで、リザードマンたちは哀れ空のかなたに吹き飛んで行った。

私はあたりに危機的状況がなくなったことに、安どして、力を抜いた。すると翼も光の粒子になって消えた。。エルカードの力に驚いてると助けた少女が話しかけてきた。

「あの助けてくれてありがとうございます!!」

「ん気にするな。なあここはどこだ」

「ええっとあなたのことは知らないけど、ここは暗闇の森という場所です」

「暗闇の森…… 聞いたことがないな」

「聞いたこともないところにいるなんて どうして?」

「実はな私はこの世界とは違う異世界から来たんだ」

 私は、自分が着た経緯をかいつまんで話した。そのことを聞いた少女はある提案を示した。

「『人の街』に行けば何かわかるかも」


「人の街? そこに行けばいいのか?」

「うん、人の街を知らないってことは、本当に異世界人なんだね」

「ああ」

「それなら、管理所にいる『アサキシ』さんに聞けばわかるかも」

「『アサキシ』?、聞いたことないな。そいつに会えばいいのか」

「助けられた恩もあるし、人の街まで案内するよ、じゃ私についてきて、」

「ありがとう」

 私は少女に感謝を示し、『人の街』を目指した。

私が人の街にたどり着いた時には、時刻は夜から朝になっていた。

人の街の景観は中世ヨーロッパの趣で家や建物は石やレンガ建築されていた。、大通りには古風なヨーロッパの景観に沿った服を着ている人々が行きかわしていた。

私はそれを見て感嘆した。

そうして一人で歩き回っていると、西洋建築物の中に東洋の建築物である、寺を見つけた。

「西洋の建築物だけでなく東洋の建築物も存在するのか」

そうつぶやきながら歩いていると、奇怪な人間を見つけた。それは現代の服を着た少女が歩いていることだ。着ているものは紫色のtシャツとジーンズで現代のファッションであった。

「この世界はいったいどこに存在しているんだ」

そう困惑しながらも私はは、人の街を回った。

 歩いていると人里の中心ともいえる大きな広場にきていた。広場にはベンチが設置されていて人々が座り談笑していた。

 そんな広場の中心には、四角い石碑が立てられていた。人里を見て回って疲れた彼女は談笑する人々と同じようにベンチに座る。

「ふう疲れたわ…… あの石碑はなんだ」


 ベンチに座った彼女の視界に石碑がうつる。よく見てみると石碑には慰霊の文字と無病息災と書かれていた。

(何かあったのか?) と思いながらしばしの間休息して、再び街を見て回った。


 見て回ったことで、人の街は西洋建築が基本で 東洋の建築物や現代の物は特殊だとわかった

 少女はこの世界について歴史や文化をふくめて気になりだしていた。

 「さて、当初の目的の目的地、管理所とやらに向かうか」

 管理所は赤いレンガでできた三階建ての建築物であった。外には倉庫もある大きな施設であった。私は未知の建物に入るという恐怖を隠しながら、中に入った。




赤いレンガでできた三階建ての管理所の所長室に、私は椅子に座って居た。


 話を聞きに来たと伝えると、この部屋に通され、所長の『アサキシ』はしばらくしたら来るので待っていていてほしいと言われて用意された椅子に座り待っていた。

 所長室の内装は様々な書物が壁の本棚に並べてあり、この部屋の主の知識量を物語っていた。部屋の窓の前に大きな机が備えられており、その上は古ぼけた地球儀が置かれていた。

 部屋にかけられた時計が鳴ると、ガチャリと扉が開く音が部屋に響く。

「待たせて、すまないな」 


 部屋に入って名もなき少女と対面したのは、凛とした美しい女性だった。女性の髪は青く、長さは背にかかるほどで、服はワンピースに似た物を着ており、片腕には赤いドクロの刻印がされている黒いブレスレットをつけていた。

 その女性の名はアサキシ。この部屋の主であり管理所の所長を務めている。アサキシを見た私はは意外に思った。


(こんな女性が、ここの主だとは。管理所なんて堅苦しい名前だから筋肉男か年老いた老人を想像していたが)


 想像とは違いアサキシは女で、年齢は二十五歳と若い。容姿は美しく、胸は服の上からでもわかるほど大きい上に、背が高くて腰は細い。いわゆるモデル体型であった。

 、アサキシは話しかける。


「この世界について、l君はこの世界について知りたいがためにここにきたんだね」


「ああ、実は私は異世界人で、ここがどんなところでどんな文化や歴史があるのか知りたいんだ」


「そうか、そうか。いいだろう」

 それを聞いて頷き、椅子に座ってアサキシは話をこの世界について語り始める


「この世界は夢幻界と呼ばれて、魔法や奇跡、魔物が普通に存在する世界だ。そして力を持つ者が集まる場所だ。時折異世界の人間や魔物が迷い込んでくる」


「夢幻界……」

「そうだ、この世界の簡単な歴史を教えよう。この世界では5年前、魔物と人間の大きな争いがあったが、今は和解している」


「なぜそんなことに」


「それは、『先導師』と呼ばれる者が現れたからだ」


「『先導師』?」


 聞いたこと無い言葉を呟き、アサキシはそうだと答える


「この世界も魔物と人との大きな争いも無い時代。要は魔物は人を脅かし人が退治する関係であり、命の危険が深刻な問題では無かった時代があった。だが、先導師が現れたことで全てが変わった」


 ブレスレットに手を当てながら、語る。


「先導師はこの世界に相応しくないほどのオーバーテクノロジーを与えた。人体の細胞を自在に操る技術、ナノマシンと呼ばれるものや特殊兵器、パワードスーツなどをな」


「細胞を操る!? そんなばかな」


 私は驚きそう口にしたが、アサキシは「本当だ」と答えて話を続ける。


「そのせいで、魔物たちは恐れた。人間世界の様に科学が進歩することで人間が強くなり、魔物は脅威で無くなって消えてしまうのではないかと」


「消えてしまう恐怖ね、確かに恐ろしい」


「その恐怖で魔物は、今以上に必要以上に人を襲い殺した。自らの存在を揺るぎない物にするために」


「しかし、人間もやられっぱなしではないだろう?」


 そう言って口を挟む。人間はやられたらやり返す生き物、それは私にも分かっていた。その言葉にアサキシもうなずき肯定する。

そうだ。人々も立ち上がり魔物を退治する『封魔』を組織した。メンバーの多くに魔物に恨みを持っている者らしい。私も詳しくは知らん、何しろ人の街が出来る前に出来た組織だからな」


「そうか。なるほど殺し殺されか、泥沼だなどうやって和解した?」


「それは『大災害』によってだ」


 アサキシは表情一つも変えず話続ける。大災害と聞きなれない言葉が出てきて、私は自分の知っている災害を頭に浮かべる。


 (……災害とつくからには地震か洪水、火事か? 大とつくからにそれらが余程のモノだったのか?)

 そんな考えとは違う答えをアサキシは口にする。


「大災害とは、地震や火災、洪水などとは全くの異質なもので、よく分からん」


「わ、わからない!?」


「ああ、夢幻界に突然光が出現し、辺り一面を荒れ地に変えて黒い雨を降らせた。管理所はそれらの出来事を『大災害』名付けた」


「なぜ大災害が起きたのか正体不明だが、大災害は人間と妖怪どちらにも大きな被害をもたらした。人は生活に困り、妖怪は人が大きく減少したことで力を落とした」


「とんでもない被害だな」


「両者は安定を図るため今までの事は水に流して和解することになった。この時被害を免れた私の村に、多くの人が避難してきた。それに伴いその村は里へ成長し、今居る現在の人里になり、私が管理所を作った」


「なぜ管理所を作った?」


「この世界はお前のように力を持ち暴れるものが多い。そんな危険な奴らから生活を守るために設立して運営している。その他にも人里の安全管理や『エルカード』みたいな物の管理が目的だ」

『エルカード』聞きなれない言葉に反応して尋ねる。


「エルカードとは何なんだ」


「エルカードとは、このようなものだ」

そう言って、アサキシは懐から、一枚のカードを取り出して見せる。それは私ががリザードマンに襲われた時現れたカードと同一のものだった。アサキシのカードには〈ヒント〉と文字が刻まれていた。

「私もそれは持っている」

 私も懐から複数のカードを見せた。それを見たアサキシは声を上げて驚いた。


「何で珍しいエルカードををお前が持っているんだ」


「私にもわからん。何分記憶喪失でね みんな持ってるものではないのか?」


「違う。珍しい物だ。しかしむうそうなのか」

 アサキシは何か考え、少女は話を切り替えた。


「先導師とは何者だ。化け物か」


「先導師の詳しい素性は分からんが人間世界からやって来たらしい」


「人間世界の連中はみんな力と駆出した科学や知識をを持っているのか」


「いやそれは無かった、他に人間世界からやってきた者に聞いてみると人間世界でもありえない技術らしい」


「先導師の名は何という?」


「……『アカネ』と名のったらしい」


「なぜソイツがきたんだ?」


「わからん 自分もいつの間にか来ていた、だと」


「先導師はそれからどうなった?」


「奴は大災害後、姿を消した。そのため大災害は奴が起こしたと考えられている」


「どんな力を持っていたんだ、妖怪を恐れさせるほどのオーバーテクノロジーを与え、大災害を起こしたと考えられる力とは」


「……科学に関するものを操る能力」


 アサキシの言葉にピンときなかった。


「すまん。どんなことが、出来るんだ」


「要は何でも出来たと考えてくれれば良い」


 その言葉を聞き少女は顔を引きつった。

 (何でもできるなら神に等しい力を持っていた奴が居たとは世界は広いな ……。異世界だけど)

アサキシは話す。

「先導師もといアカネが生み出したオーバーテクノロジーやらは全て管理所で保管している。無暗に使うと、どうなるかわからんしな。他に質問は?」


「あ、ああ次は『エルカード』より詳しくについて聞きたい」


「エルカードとは大災害の後、突如現れた謎のアイテムだ」


「誰が作ったかも分からんのか?」


「『アトジ』と言う者が作った。そいつは何か困っている者に、エルカードを与えている様だ。普段どこに居るのかわからない」

「それなら良いじゃないか。誰かの為なら」

「そうはいかない。エルカードは誰にでも力を与える。悪人だとしてもな」

「エルカードも科学で作られてるのか?」


「違う。エルカードはどうやら科学では説明できない物だ。そこら辺は重要では無い」

「そうか、この世界の文化について知りたい ここは異世界だがなぜ西洋の文化が存在する?」


「多くの魔物が人間世界の西洋諸国から流れ込んだからだ。それに伴い西洋の文化がこの世界に流れ込んで根付いた。まっ世界が違えど人が作るものは似たようなものになる」


「東洋の建物や見たことのない服装の輩もいたぞ?」


 東洋の建物である寺や現代の服装であるTシャツとジーンズを着た若者を思い返した。


「夢幻界は西洋以外の文化も流れ込む。だから東洋の建物や道具も文化もある。この夢幻界は景観こそは古風なヨーロッパだが、中身は違う」


「なるほど納得した」


「ちなみにだが、先導師アカネは日本という国から来たらしい。 以上が夢幻界の文化について簡単な説明だ。では次は何を知りたい」


「この世界、もしくは人の街のルールについて」


「それなら簡単だ一つ人里で妖怪は人を襲ってはならない逆も然り。二つ妖怪のテリトリーには無闇に入らない。三つ人里の法は人里でのみ機能する」


「良し、そこまでで十分だ」


 話を途中まで聞き、話を区切る。相手はきょとんとした。


「む、まだあるがまあ大切なのは言ったしいいかな。お前も守ってくれさて異世界人くん」

「あの私行く当てがないんです ここには居場所がありません」

「ふむそれなら了、管理所で働かないか」


「気持ちはうれしいが、何もできません」


「なに、書類仕事をやれというものではない。危険な人間や魔物を退治する仕事をしてほしいんだ エルカードを使ってな」」

「しかし、私は戦ったことがありません」

「戦いかたは、エルカードが導いてくれるさ。いまならお前の家も用意できる。そして生活ができるのだぞ」

その提案に私は考え込み、管理所で働かせてもらうことにした。現状この世界で生きていくにはアサキシの提案にのるしかない。これが私の運命を大きく変えることになった。


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