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元カジノディーラーの回想  作者: 過去若者
6/7

お誘い

ルーレットとバカラ が回せるようになって1年程で、女の子のディーラーが入って来た。

「落合さんはバカラ で3年経験があるだから、明日から頑張ってもらうよ」

と朴さんに促され落合さんが挨拶をした。

「今日からお世話になります。落合です。宜しくお願いします」


23才で3年もアングラで働いていたなんて、世の中広い。

小柄でたぬき顔かも知れないが、整った綺麗な顔をしていた。

それに落合さんのバカラ を捌く姿はかなり様になっていた。


俺はバカラ のコミッションの計算が苦手で、2点以上のバンカーBETは相変わらずフワフワしていた。

なので、ルーレットを任される事が多かった。


「ユウキさんはルーレットが得意なんですか?」

めずらしく落合さんが声をかけて来た。

「まぁそーすね」

「ルーレットの方が好きっすね」


客が居ない時はひたすらボールを投げ、自分で張り、配当を付けるを繰り返していた。



シロンパ、七五三、シングル周り、ダブル周りなど1/4周張ったり、半周張ったり、裏表で張ったり

ボールが落ちるまでの数十秒で、ピンの下に来る目を狙って張る日本のアングラルーレットは熱くて、奥が深かった。


2月、8月は暇だった。

ニッパチといって、飲み屋街共通の閑散期らしい。

それでも人気店エルドラドがノーゲストの日は無かった。


「いらっしゃいませー!」

朴さんの声が響く

「あれってユウキさんの嫌いな奴じゃん」

「頑張って」

落合さんはつれない


失礼だとは思うがどう見ても頭の悪そうな見た目で、やたらガタイが良い、面長で色白のオッサンだった。

ルーレットしかやらず、毎回2点お買い上げで、毎ゲーム0,2点を27〜36の数字のうち、2箇所に張る。


つまり、毎回2千円を2箇所に張り、当たれば7万2千円

当たる確率は19分の1


ただの運張りなので、放っておけば溶けていくはずなのだが、俺は相性が悪いのか、いつも勝たれていた。


もちろんなかなか当たらないのだが、当たった時の増え方が半端じゃなく、18回連続で外さないと、溶けない。

たまたま2連続で当たった時にはもうほとんど溶ける事が無かった。

プレッシャーや、変に意識する事で当たりを呼んでしまうのか、30点位勝たれた時もあった。


ディーラーとしての対策は、やはりシングル、ダブルゼロと1番2番辺りをピン下に合わせ、少しでも27〜36番に入る確率を下げるのだが、意識すればするほど、ボールはコロコロ転がって

「35番ブラック」

「2枚スイッチ、セブンツー!ナイスキャッチ」

ニヤリともしない。

7万2千円だよ?本当はめっちゃ嬉しいんでしょ?


俺はいつも心乱されていた。


しばらくするとその客は来なくなった。



「ちょっといい話があるんだけど、ご飯でも行かない?」

落合さんからの急なお誘いだった。


その頃は彼女も居たし、落合さんは他のディーラーと付き合ってるって噂もあったから下心もなく軽い気持ちでOKした。



職人が一人で切り盛りしている古いが手入れの届いた和食居酒屋だった。

座敷の席に落合さんとコワモテのオッサンが二人居た。


断れば良かった。



「こちらは大阪から仕事で来てる、高杉さんと海堂さん」

落合さんに紹介された二人は今で言う反社だった


高杉さんは背の高いオールバックで、アラフォーだと思うがイケメンだった。

海堂さんはスキンヘッドで縦もヨコもでかかった。


「大阪の〇〇組の高杉や、よろしく」

渡された名刺には若頭と書いてあった。

「ルーレットの腕が立つって聞いとるんやが、なんや男前やな〜」

思ったより気さくに話してくる、若頭となると人も出来てるのかなぁと、緊張も徐々にほぐれてきた。


「この商売やってると色々不安もあるやろ〜 何かあったらいつでも駆けつけるで」

話を要約すると

月5万円でケツモチになるよって事だった。


これって準構成員ってヤツ、、、

落合さん、、可愛い顔してどんな人生歩んでるんだ?


「月5万ですか〜、ちょっと悩みますね〜」

単純に、金額で悩んでるアホなフリをしてこの場はやり過ごそう。

ヘラヘラして飲み食いしていたが、内心必死だった。


準構成員をデカいカジノに仕込んで、美味い汁を吸いたい ってのが狙いのようだった。


高杉さんは何度かルーレットで遊びに来た。

結局普通の客として相手をし(何故か 上手いな〜 などと褒めちぎって来たが)ながら、落合さんを少しだけ悪者にしつつ、この件は他のディーラーには伏せたまま、なんとか断る事が出来た。


インパクト大の名刺は一応、しばらく持ち歩いていた。

たしかにちょっと心強かった。

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