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元カジノディーラーの回想  作者: 過去若者
4/7

イカサマ師について

職業不詳。アラフィフ位のメガネと帽子の2人組のオッサンだった。

バカラの客で、よく勝っていた。


訳の分からない客にガンガン勝たれるのはあまり良い気分ではなかった。


「あの帽子とメガネ、なんかムカつくんすよねー、なんか良いとこで帽子のオッサンが必ずナチュラルで勝つんすよ」

また二人組に勝たれてしまい、新米ディーラーの俺は、イカサマ師なんてものが実在する事も、様々な手口も分からず、先輩に愚痴を言っていた。


良くある会話だった。

控え室ではマナーの悪い客やセコい客の文句ばかり言っていた。


「その二人組、シボる時は必ず帽子がシボるん?」

先輩ディーラーの田辺さんは、なにか引っかかったのか詳しく聞いてきた。

「そうっすね、いつも、二人とも同じ方に張って、メガネの方が大きく張ってても、メガネが『お前の方が勝つから』って、帽子にシボりを譲ってますね」

「ふーん」


その時は大したリアクションは無かったが、話は朴さんや店長に伝わったようだった。


しばらくして、二人組は来なくなった。

そして、先輩ディーラーから、二人組はイカサマ師だったので出禁になったと聞いた。



手口は良くあるものらしかった。

メガネが注意を引き、帽子が手の中に絵札を仕込んで、シボる権利をもらった時、勝負所で仕込んでいた絵札を出し、シボったように見せかけるだけだった。

俺の話を聞いて、監視が強化され、クロだと判断され、調べられ発覚したのだった。

二人組が勝った金額は80万円程度との事だった。


俺は実際に関わった事は一度も無かったが、アングラカジノは、必ずケツ持ちは存在する。バックにヤクザが居るという事だ。

そんなアングラカジノでイカサマをした人間はどうなったのか、正直怖かったのでその辺は聞かなかった。誰も話さなかった。



ルーレットにも変な客がやって来た。

黒人と細長いヤツと病弱そうなヤツの若い3人組だった。

週末の店が混む時に良く来ていた。


客が多い時のルーレットは戦場だった。

10人以上の客が台に群がり、短いベットの時間にチップが飛び交うのだった。

客が手の届かない所に賭けたい時は、ディーラーに数字を言っておいてもらう事もあった。


3人組はいつもディーラーから見て同じポジションを取った。黒人は一番遠い所に立って賭けていた。


どちらかといえばルーレット職人寄りだった俺は、なにか違和感を感じた。

いつも俺の手前側に座る細長いヤツがやたらと邪魔だった、黒人は遠くから、代わりにチップを置いてくれとしょっちゅう言ってくる。

病弱そうなヤツが珍しい賭け方をしている。



ルーレットの師匠、白井さんに違和感を訴えた。

「イカサマかもなー、3人組の手口は聞いた事がある。ボールが落ちた瞬間に、その病弱がチップをズラしてるんじゃないか」

たしかに、細長の体の影になって病弱の手元が良く見えない。黒人はギリギリまで賭けて来る。

病弱が地味に勝っている。


なんとか不正を暴こうと注意していたが、しっぽは掴めず、週末の店内は大盛況でルーレットの監視強化もされず、もどかしい思いをした。


しばらくして3人組は来なくなった。

ああやって全国を回るイカサマ師は良くいるらしかった。


ルーレットの粗利は、1日で良くて50万円、週末でも100万円勝つことは珍しかった。

大バカラの1ゲームで動く金額だった。

混雑した店内でちょっとした違和感程度には対処する暇が無かったという事なのか。


俺はまぁまぁ悔しかった。

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