桜の季節に
桜が舞う季節が過ぎたら、私の仕事は終わる。
優しい風が吹き、枝に残る最後の一枚がするりと枝から取れ、私の頬を撫でるようにして地面へと落ちた。
お疲れさま。
私は幹に手をあて涙目でそう言う。
すると、周りから人は立ち去っていく。
お弁当が、屋台が、無くなっていく。
唯一残るものといえばこれだ……。
緑の芝生には似合わないゴミが残っている。
「これは誰が置いていった?」
人だよ。
「そっか。人はそういうことをするんだ」
そうだよ。
「それでも来年くるんだろ?」
うん。
「そしてまた、僕たちが舞い散ったらごみを残して消えるのかい?」
そうだよ。
そして、ぼくの仕事も終わるんだ。
まだまだ君たちと毎年会うことがなくなることは惜しい。
けど……。
私はこの状況を笑顔で受け入れられないんだ。
私は斧を手にして振りかぶった。
それからの記憶はとんでしまったが、翌年からは桜を見に集まる人はいなかった。
何故なら、その場はもう……。