Chapter-5
チェシャ猫について行くと案外あっさり森の外に出ることができた。
蒼真は少し目を細める。
森が暗すぎたせいか眩しく感じた。
ふと見上げると透き通るような青み帯びている空が広がっていた。
「なぁお前さぁ」
「······なんだ」
「なぁんでバンダースナッチに攻撃したのー? ふつー逃げたりするよねー」
「さっき言ったけど雪姫を探してるからな。見つけるまでは死にたくねぇし」
チェシャ猫は相変わらず笑いながら聞いてきた。
「そんだけなら攻撃しなくていーよねー?」
蒼真は明らかに不機嫌な顔をしてチェシャ猫を睨んだ。
そしてため息をついて口を開いた。
「バンダースナッチ? とか言うのは初めて見たけど強そうだったから。そんだけだ」
チェシャ猫は驚いたような顔をして、声をあげて笑い出した。
蒼真の額に青筋が浮かぶ。
「なにー? お前強くなりたいのぉ?」
「······悪いか」
「いやいやぁ全然? むしろ最高だよー」
チェシャ猫は先ほどまでの貼りつけたような笑っている表情に戻して言った。
蒼真がチェシャ猫から視線を外し見た先には
「でけぇ······」
赤と白が特徴的な大きな城が建っていた。
「お帰りなさいませ、王様。我々、不思議の国の住民全てが王様のお帰りをお待ちしておりました」
突然チェシャ猫が蒼真にひざまずき、言った。
蒼真は目を見開いて、チェシャ猫を呆然と見た。
「いや、ちょお前イカれたのか?」
「やだなぁ口調変えただけでそこまで言うー? ふつー」
チェシャ猫は今まで通り笑いながら立ち上がった。
「じゃちゃんと戻せ」
「もう戻してるじゃーん」
蒼真はまたチェシャ猫を睨み付けた。
「その口調も作ってるだろ? チェシャ猫だから。イライラするから止めろ」
チェシャ猫はまたいや、それ以上に驚いた顔で蒼真を見た。
「初めてバレた······王様から許可下りたしいいか。いちいち語尾伸ばすのはめんどかったんだよ」
「馬鹿みたいにずっと笑ってなくてもいい。それより······王様ってどういうことだよ」
チェシャ猫は不敵に笑って言った。
「お前が選ばれた人、選ばれるべき器を持っていただけ。詳しくは帽子屋に聞いてくれよー」
そう言ってチェシャ猫はさっさと城に向かって歩き出した。
蒼真もそれに続いて行く。
目の前にそびえる大きなの城壁は白で赤いハートをモチーフにしたオブジェが一定の間隔で飾ってあった。
どんなところの装飾にも赤いハートが取り入れられている。
そもそも城自体が上から見たらハートになっていそうな塔の配置になっている。
「······悪趣味だな。お前」
「オレじゃねーよ? ほら行くぞ」
チェシャ猫は大きな城の高さが同じくらいありそうな大きな扉を開けた。