Chapter-23
森はまだ終わりそうにない。
「うわっ」
「わっ」
後ろから声が聞こえた。
蒼真とチェシャ猫は立ち止まり、振り返る。
「ちょっとディー! 押すなって言ったじゃないか!!」
「えっ?! ひどいよダム。ダムが勝手に倒れたんだよ」
そこには赤髪の男の子が二人倒れていた。
下にいる男の子が上体をあげ上にいる男の子に文句を言っている。
二人の顔は見分けがつかないほどそっくりで、同じ服を着ていた。
ただシャツと髪を十字の形で留めているピンは色違いで下にいるのはオレンジ、上にいるのは水色だった。
「げっ······」
聞き取れないような小さな声でチェシャ猫が呻く。
「どうした?」
蒼真が聞くがチェシャ猫は倒れたままの二人から目を離さず、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「そんなことないよ! どうして僕が勝手に倒れなきゃなんだ!」
「知らないよ! 知るわけないじゃないか!!」
どうしようかと蒼真が考えているうちにチェシャ猫が動きだした。
二人はチェシャ猫に気づかないまま言い争っている。
チェシャ猫は二人の前で立ち止まった。
そして両手を振り上げ――二人の頭を殴った。
「うるせーんだよ! こんクソガキ共がっ!」
「僕はトゥイードル·ダム」
オレンジのシャツを着た男の子が言う。
「僕はトゥイードル·ディー」
続けて水色のシャツを着た男の子が言った。
どうやら双子らしい。
「ねぇバカ猫。その人は?」
「バカ猫じゃねーよ。こいつはアリス。不思議の国の今の王だよ」
チェシャ猫を見ていた双子は蒼真に視線を移した。
「有栖川蒼真だ」
双子は顔を見合わせ、頷く。
「んーとじゃあ······」
「そーまって呼ぶね?」
「あぁ。分かった」
双子は満面の笑みを浮かべてダムとディーは言う。
「「よろしくね!」」
蒼真が頷くと双子は嬉しそうにまた顔を見合わせた。
「チェシャ猫」
「ん?」
「ダムとディーはなんでこんな所に?」
蒼真がチェシャ猫に聞くと双子が勢いよく揃って手を挙げた。
「ここはね」
「名無しの森っていうんだ」
「んで僕たちは」
「ここの番人!」
チェシャ猫を見るとチェシャ猫首をすくめて言う。
「そーゆーこった。帽子屋が言ってた鏡の国の強い奴らはこいつらだろ。あとは······まぁ国を守るためにも残すだろうな」
蒼真にはこの双子が強いようにも見えなく、驚いた顔のまま双子を仰視していた。
「あれー?」
「僕たち強そうに見えないみたい?」
「それはやだね。ディー」
「そうだねダム。どうしよう?」
「体験してもらえばいいんじゃない?」
「そうだね! じゃあ······」
チェシャ猫は興味の無さそうな目で見ていたが、双子の表情が変わったのを見ると焦りだした。
「おいお前ら! やめろ!」
双子はお互いから遠い方の手の親指と人差し指で銃のような形を作って蒼真とチェシャ猫に向ける。
もう片方の手でも同じように銃を作り、お互いの頭、ダムはディーの、ディーはダムのこめかみに当てた。
その間にチェシャ猫は双子を止めようと近づいて殴ろうとするがあっさりと避けられてしまった。
「「幻」」




