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第4話 初のドラゴンなんだぜ

いつも主人公は窮地に追いやられます。

横穴に戻ろうとして、計ったようなタイミングでの魔物の接近。狙ったようなタイミングで思わずため息が出そうだ。


というわけで、八つ当たりという名の魔法の実験をすることにする。


自分のいる地点から北北東300m付近に魔物が進入してきたことがわかる。


進入経路は地中深くから。


冗談だろう?と思いつつも魔物が地中から姿を出したことにゲンナリする。


俺は魔物を補足すると、さらに意識をその場所へ集中させる。


感知したのは5メートルをゆうに超える蜥蜴だ。翼は流石に生えていないが、頭には角があり、背中と尻尾にはステゴザウルスのような突起がついている。


遠距離から俺は蜥蜴モドキを鑑定する。




名前 アバス  種族 竜種


Rank S+


等級

筋力 9

精神力 6

敏捷 6

魔力 8


スキル


『魔力操作8』『上級魔法 雷土』




どうやら相手はドラゴンらしい。敏捷の値が6等級かつ筋力が9等級なのをみるとパワーアタッカーに見えなくもない。しかし、先ほどの出現方法と持っているスキルを考えると魔力を行使した攻撃もあるのだろう。


そして魔法の上級とある欄は正直に言えば信用がならない。

何故ならば、上級というのは魔法を組み上げる式の難易度しか示すものでしかなく、力がある者が下級の式に馬鹿げた量の魔力を費やせば、級に関係のない破壊が可能である。


尤も魔法の級は6種に分かれていて、下から『下級』『中級』『上級』『超級』『王級』『神級』となっている。


そして超級と上級には壁があり、上級以下ならばどんな者でも式さえ組み上げれば魔法が使用できるが、超級から先は式に見合う膨大な魔力が必要であり、個人で行使するのは難しいと幼女神は言っていた。


威力は魔力量に比例する。敵の魔力の等級は8。そしてここの魔力が溢れるような特異な気候。二つから導き出されるのはおそらく超級以上の破壊だろう。


まぁ、敏捷が6等級なのを見ると十分逃げ出せる範囲だと思うので戦う(八つ当たりする)ことはやめない。



というわけで戦闘スタート。まずは先制攻撃といこうか。


相手との間合いを肉体を強化し高速で詰めつつ式を組み上げる。様子見として使うのは魔弾の散弾。銃弾の知識を用いて一つ一つを強固に、そして先端を尖らせたうえで回転をかけ発射した。


トカゲもどきはこちらの攻撃に気がつき、雷のブレスを溜めの動作など一切なく放つ。放たれたブレスは魔弾の大部分を消し飛ばして威力を失わないまま俺に向かってくる。


俺は空中に足場を即席に作り、そこから跳ぶことで回避を成功させる。


消しきれなかった魔弾は、トカゲもどきに着弾するが堅固な鱗にはばまれてはじかれる。


「随分と硬い」


予想以上の硬さに思わず独り言が出てしまう。


次に繰り出した攻撃は魔力で創られた漆黒の杭。しかし先ほど練習で使ったサイズとは似て非になるものであった。


直径50センチ、長さ2メートル程の極大の杭が亜音速で射出される。


それをトカゲもどきは前足で迎撃する。


ただ腕を払うだけ。いや足か。力技で亜音速の杭を弾くとはデタラメだなと、どうでもいいことを考えながらそろそろ有効手段を本格的に考えなければならないなと思う。


今の攻撃は弾かれはしたが鱗がいくつか飛び散ったのが見えた。しかし、肉を穿つには、骨を砕くのには足りない。


考える手段としては同じポイントを狙っての杭での攻撃。


これは払われてしまうから致命打にはならない。ならば、足をどうにかしてしまえばあとは好きに頭にでも杭を何回も浴びせれば流石に死ぬだろうと思う。


方針は決まり早速行動に移る。


俺の攻撃手段は発想が貧弱なので基本は爆発か、魔力で固めたものを射出するかだ。


俺は先ほどとは違う術式。練習で使った杭を四方八方から突き立て相手をウニにする魔法をピンポイントで行使する。


目標はトカゲもどきの右前足。先ほどの攻防で鱗がはがれた付近に杭を展開させる数は8本。狙いはおおざっぱだが、上手くいけば1~2本は刺さってくれるはずだ。


しかし、こちらの魔法が発動する寸前でトカゲもどきが咆哮を上げる。


その咆哮は恐らくだが式のトリガーとなっているか、俺は詠唱をしないが、詠唱短縮に近いものだと思われる。


トカゲもどきの全身に土の鎧がまとわりつき、攻撃が当たった部分では土が剥げるだけで、またもや肉に攻撃は届かなかったことを確信した。


「厄介だな」


土が魔力によって創られた。あるいは魔力を通した土自体を纏わせたものなら魔力の干渉を使い、解除できなくとも土の結束を弱めることぐらいなら可能だろう。


しかし、近づけば相手の筋力は馬鹿げているので、攻撃が1つでも当たれば即死は免れない。


拘束ができるならば接近は可能だが、今思いつくのはワイヤーをイメージした拘束だけ。


問題は思ったように式が組めるかと、強度が足りるか。そして巻きつく以外ならば固定するものがない。


そこら辺の木や岩ではアレを固定するには心もとない。


1本でなく10本なら?これも不可能。術式を10組み上げる中での回避は難しい。


俺が思考の海に没しようとしているときに、先ほどよりも強力なブレスによって現実に引き戻される。


とっさに闇の盾を展開するが、とても防ぎきれるものでなくすぐさま離脱。


気がつくことが遅れた結果として左腕が炭化して落ちてしまった。


「~~~~~~ッッ!」


言葉にならない悲鳴を上げるが、トカゲもどきは容赦なく接近して50センチにも及ぶ爪を振るう。


魔力を体に通し、自身の運動性能を限界レベルまで上げることで皮1枚で回避する。


「痛てえなこの野郎!」


俺は回避すると同時にカウンターで土の鎧に干渉し、鎧を一部剥ぐことに成功。


痛いじゃ済まないレベルの怪我を負ったが、体に魔力を流す量をさらに上げた時点で左腕の再生が始まる。


(やはりか、以前傷を負ったときに体に魔力が流れた時に回復した。今回は、身体強化の強度を上げることで回復が強まったか。)


ここまで体に魔力を回すと流石に余分が出るのに加え、全体の魔力をかなりもっていかれ、使える魔法の回数は残り少ない。


ポコポコと腕が落ちた面から肉が沸騰する感覚が感じ取れる。昨日狼にボコボコにされたときに起こった似たような感覚。体が再生する感覚は今回で2回目ではあるがやはり慣れない。


このまま10分もすれば腕が元通りになるだろうと評価するが、不気味な感覚に思わず眉をしかめた。



今度はトカゲもどきが突進してくる。


狼と比べれば緩慢な動きだ。


すれ違い様にさらに土の鎧を削るが、緩慢な動作を囮だといわんばかりに尻尾が高速でこちらを貫こうとする。


なんとか先端は避けるが、トカゲもどきの尻尾はそれを見越した上で尻尾の軌道をなぎ払うように変化させた。


闇の盾を受け流すように即座に展開させたが衝撃を殺しきることはなく、俺の体はあっけなく飛ばされ木々を10本程俺の体が叩き割った所で停止した。


吐血する。もしかしたら内臓までイカれたか?身体強化していたため、ダメージは致命1歩手前までに抑えられた。もし強化が出来ていなかったらバラバラになったか、良くて真っ二つかだろう。


痛みになれたのか、再生が始まっているのかわからないが、何とか動けそうだ。


(本格的に倒すのが困難だ。慣れない八つ当たりなんてするもんじゃない。逃げるにしても、この体でトカゲもどきの感知外まで逃げきることができればいいのだがな)


命にかかわる事態になってから、自分のバカさ加減に辟易した。


今更になって逃げることを決心するが、その時、トカゲもどきの行動が目に映る。




トカゲもどき、もといドラゴンは自身の頭上に術式を展開させる。


おそらく術式の複雑さから見ても上級以下である。それを自分に当てるように展開するとは何が意図なのかつかめない。


土属性による鎧の追加?雷属性を纏うような身体強化?それとも自身の強靭さにまかせた自分ごと巻き込む範囲攻撃?


だが、俺の予想は次の瞬間裏切られることになる。


目の前で圧倒的な光量と轟音が鳴り響く。トカゲもどきに雷が落ちる。


自爆?いや、違う。


落雷ならば光は一瞬で消えるはずだが、目の前で起きているはそうでない。表現が難しいがあえて口にするなら、雷がずっと刺さったままの状態。落雷し続けるている。


雷の放電量は平均約900ギガワット(=100W電球90億個分相当)に及ぶ


そして時間にすると千分の一秒でしかない。瞬間的にであるため、エネルギーに換算すると900メガジュールしかない。


しかし、それを1秒も受け続けたのだ。


1秒も受ければそれは莫大なエネルギーとなるだろう。単純計算で900ギガジュール。マグニチュード5の地震が平均で2000ギガジュール。そのエネルギーが砲として飛んでくるならばどれほどの破壊力になるか想像できなくもない。


やがて雷の放電が終わると、帯電した背の突起が回転し、尻尾を地面に突き刺してさらに4つ足の爪もしっかりと強化済みの地面に食い込ませる。


そして口を開き、膨大な魔力とエネルギーが口の中に溜まっていくのが肌で感じ取れる。


(マズイ・・・非常によろしくない。恐らくアレを撃たれれば俺など塵も残らないだろう。いくら再生能力があったとしても塵になったとなれば再生などできないだろう)


うたれる前にしとめるか?無理だ。そもそもヤツの鱗は硬く生半可な攻撃は通さない。


そもそも、術式を展開させたこと自体下策だった。あれの発生を潰していたならば今このような状況にはなっていないだろう。


IFの事を考えても仕方が無い。今のことだ。


考えろ。思考をまわせ。遅れれば、間違えれば、その場で死ぬぞ。


撃つ瞬間に口を逸らし、足場を破壊する。撃つ前ではダメだ。時間が稼げるが、射程圏外に逃れることは出来ない。撃たれた後ならば回避は間に合うかと考えたが、俺の予感が正しければフィクションなどで見る荷電粒子砲と同じような類だ。ただのブレスならば回避は不可能ではない。回避できないならば、撃つ瞬間を狙う。


長く考えたと感じるが、この間には瞬きほどの時間はかかっていない。


発射までの残る時間はどう見ても少なく、自身の限界達する集中力でかつて無い速度と精度で式を組み上げる。


さらに足りないといわんばかりに、合計3つの式を並列で組み上げる。


座標指定――地中1mへ潜行――地面に異なる魔力を確認――無視――術式並列起動


トカゲもどきの右の前足と後ろ足の地下1メートルで俺の闇の魔法が地中を蝕む。強化された地面はおよそ地表50cmだけだったのが幸いし、硬い地表はそのまま陥没した。そして同時に左の頬に杭ではなくただ重さと速度を追求した鉄骨のような魔力塊がトカゲもどきに命中する。


「グルォオオオオオオ!?」


口がさけたようで困惑と苦悶が入り混じったような鳴き声をあげた。


バランスを失ったトカゲもどきは方向を修正できずに膨大なエネルギーを伴ったブレスを発射した。


結果。頭に強力な打撃をうたれ、口が裂けた部分から徐々に自壊がはじまる。




八つ当たり目的で倒そうとした魔物に窮地に追いやられたことにため息がでる。


トカゲもどきは必殺を外され、さらに自身の攻撃に体が耐え切れずにダメージを負った場所から自壊をした。


『自分含めてどいつもこいつもバカばっかりだな』


俺は左半分の頭が崩れかけているトカゲもどきに近づく。


狼を消し飛ばしたときには恐らく初の魔物との対峙で必死すぎたのか、感じられなかった感情。


「すまんな、八つ当たりどうこうで命を奪うことはよくない。だから訂正させてもらう。生き残るために、血を、肉を、魔力を奪う。無駄にはしない」


呟いたのは己を正当化させるだけの言い訳。それも自分の八つ当たりに対する言い訳。


汚い感情に汚い言い訳を重ねる。やっていることは下種で屑だ。


魔物とはいえ生物の命を奪うことに対する謝罪。今更謝罪なんてただの偽善だ。


表面上では心苦しいと思っていても、実際心の底では自分に関係ない生物などどうでもいいと思っているのだろう。我ながら醜い謝罪である。


自分が綺麗な人間でないことは知っているが、ここまでクズだと思うと我ながらへこむ。


いや、へこんだこと自体がそれを否定したいという感情からくるものだろうか?


ああ、駄目だ。これ以上考えると自己嫌悪が止まらない。気分は最悪だ。




俺は死に体となったトカゲもどきの頭に魔力の杭を突き刺す。


断末魔が上がることはなく、半壊した頭に杭を簡単に刺して潰すことができた。


トカゲもどきの魔力が体に流れ込むのを確認し、散らばっている鱗を集め、食欲が無いとは言え何も食べないのは人間のすることではないと思い、魔力の刃を突き立て苦労しながらも肉を少しばかり剥ぎ取った。


横穴に戻る時に死骸に向かってもう一度謝罪をしようとするが、やめた。


今謝罪の言葉を言っても言い訳にしかならなそうだ。


俺は陰鬱とした気分で横穴に戻ることにした。














































※色々と表現がおかしい部分や、違和感を感じる部分を修正いたしました。11/28


ご意見や感想。誤字脱字などの指摘があるとうれしいです。

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