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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.09 遊戯の町
94/122

P.094 力の行方(3)

 赤く腫れた両頬を摩り、涙目のアラーケがベッドの上で正座している中……



「お…おい、リーシェ…」

「や、やり過ぎではありません…?」



アヤメとシャクル、ミネアも表情を引きつらせ見つめる先……そこには見事に逆さにひっくり返ったベッド。



「おはよ♪オジ様」

「お…おはよう…ございます…」



ニコっと微笑むリーシェの前、ベッドの下から聞こえてくるキリの声。


一方リグルは、シャクルとミネア以上に引きつらせた表情。



「ま、まさかこれが毎日行われているのか…!?…恐るべし…」






 アヤメ達が甲板に上がった頃、カラの姿が肉眼ではっきりと捉えられた。首を鳴らしながら肩を摩るキリが1歩出る。



「なんだか何年も留守にしてたみたいに懐かしく感じるモンだぜ」

「あれがサカンドラなの?おじ様」



キリの横を抜け、船から身を乗り出すリーシェ。



「あの島はただの入口だ。ま、裏口だがな」

「ふぅ~ん。島1つをただの裏口扱いだなんて、さすが成金宮殿王ね」

「成金って…お嬢さん?それはブレゴが言ってたのか…?」

「あら?あそこにワンちゃんがいるわ」

「無視かよ…」



苦笑のキリを他所に、リーシェは片手を日射し代わりに当てカラを見据える。



「ワンちゃんって何だよ……って、兄貴か…?」



目を細めたキリの視界に、小さく岸に立つカムラの姿が映った。



「カムラ?どこだよ、全然見えねぇけど…」

「ヒューマ族にはですよ、シャクル」

「は?」

「各種族で五感の能力が違うんですよ。だから人の目には見えないものが、モルハス族やカナフィーリン族には見える場合があるんです」

「ほぉ~」

「いやミネアちゃん、おれも見えてるけど?ハッキリと」

「え…?」

「嘘でしょ…アラーケ…」

「え、ちょっ、何でそんな引いた目してる訳!?」

「いや…別に…」

「何でも…ないです…」

「あん疎外感…」



するといつの間にかアラーケの前まで来ていたリーシェが、その顔をジっと覗き込む。



「新種?」

「違うわーい!」



そうして騒ぐ一行の中、1人黙り込んだままリーシェを見つめるアヤメ。なぜか表情は悲しげ……その表情に気づいたのはシャクル。



「アヤメ、お前どうした?」

「…15歳…」

「は?」

「15歳なんでしょ?リーシェ…」

「あぁ、そう言ってたな。お前の1つ下なんだってな」

「五感だけなのかな?種族の差って…」

「…それに関してはノーコメントでいかせてくれ…絶対泣くから」

「ハハハ…潮風が目にしみるなぁ…」







 約30分後、一行の乗る軍艦はゆっくりとカラの岸に着けられた。すると岸ではキリの言った通りカムラが1人、笑顔で出迎えてくれた。地面に降り立つなり、カムラに駆け寄り抱きつくアヤメ。



「カムラさーん!」

「うわっと」



驚きつつもアヤメの体を抱きとめたカムラは、笑顔でその頭を優しく撫でた。



「…無事でよかったよ、アヤメさん」

「カムラさん…心配かけてごめんなさい」

「ハハ。本当に心配で眠れなかったよ」

「あ…兄貴…」



歩み寄るキリを見、頷き笑うカムラ。



「キリ…おかえり」

「あ、あぁ…ただい…ま…」



少し照れたように視線を泳がせ頬を掻くキリ。



「シャクル君もミネアさんも、アラーケ君も…だいぶ傷だらけみたいだけど、無事なようだね。よかったよ」



カムラの見回す笑顔に、各々笑みを返した。



「しっかしカムラ、よく俺達が来るのわかったな?」

「まさかあれからずっと待ってたってのか、カムラの旦那?」

「…まぁな」

「だよな~旦那。『まぁな』って――…まぁなァ!?」

「言っただろ…心配で眠れなかったんだよ。ただそれだけなんだ」

「カムラさん…ありがと…」

「わたしにお礼など必要ないよ…でも…」



再び笑ったカムラは、突然アヤメの頭をくしゃくしゃに撫でた。



「うひゃ~!カムラさんヤメてぇ~っ!」

「ハっハっハっ!それくらい元気な姿を見せてくれたら、本当に安心できたよ。無事でよかった、本当に」

「…今頭が若干無事じゃないかも…」



…っとボサボサ頭のアヤメが悲しく笑った。すると、



「シャクル!」



軍艦から呼ぶ声がする。振り返ると、軍艦の甲板にリグルの姿があった。



「我々は帝国に戻るが、君達はここでいいのか?もし行く場所があるなら送るが…どうするんだい?」

「あぁ、ありがとな、リグル。行き先を確認したいんだ。ちょっとだけ時間もらってもいいか?」

「それなら構わないよ。じゃあ決まったら教えてくれ」



互いに手で合図を交わしカムラに向くシャクル。



「カムラ、細かい事情は後で話す。今アヤメの霊召士(れいしょうし)の力が0に近いらしい。何とか戻す方法はないか?」

「0だと?…そうだなぁ…」



難しい表情で顎を擦り長考するカムラの姿に、キリがシャクルの肩を叩き並ぶ。



地下(した)のヤツらにも、無事に戻ったってちょっと顔出してくる。すぐ戻るから待っててくれ」

「おぉ、わかった」



了承を得、歩き出すキリ。その後ろ、「ワタシも行ってくる」とリーシェがついて行った。どうやらジっとしていられないタイプなのだろう。何かしら動きのある方について行く性分なようだ。



「それならシャクル君。1度エクシラに戻ろう」

「エクシラにか?」

「ここでは資料も無いから、的確な事をアドバイスが出来ない。それに今なら研究員達も戻っているだろうからね」

「そうですね。それに今後の移動を考えれば、手配の廻ったバルハール以外の大きな大陸に渡っていた方がよさそうですし。サカンドラからではバルハール大陸にしか行けませんから」



2人の意見…特にミネアの意見には「あ、そうなの?」っという感じで数回頷き返し、軍艦に振り返る。するとまだリグルがこちらを見て立っていた。



「待たせて悪い、リグル。エクシラまで頼めるか?」

「エクシラかい?エクシラなら、帝国への通り道だ。全然構わないから大丈夫だ」



するとリグルの後ろからユーネが顔を覗かせる。



「通り道って…私と隊長はエクシラ駐留よ。まさか忘れてたんじゃないでしょうねぇ~?」

「えっ、あ…わっ、忘れる訳ないじゃないですか~!」



わかりやすい程に慌てた様子で笑うリグルに、ユーネはため息を1つ。



「あの反応…忘れてたな…」

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