P.093 力の行方(2)
「なるほどね…」
すると突然シャクルの声が聞こえ、アヤメ達の元へと歩み寄ってきた。
「シャクル…まだ寝てなきゃダメだよ」
「そこまで重傷じゃねぇって。それに、ちょっと外の空気吸いに来ただけだ」
そう言ってアラーケの横で、立ったまま縁に寄りかかるシャクル。
「って事はだ、リーシェ。まだアヤメにはマザーの力は残っている訳か?」
「えぇ。辛うじて、っていう所かしらね」
「扱えるくらいか?」
その質問には無言で首を横に振るリーシェ。
「え…じゃあ、私はもう…」
マザーを扱えぬのなら、対冥王としての自分の意味など…っと表情を曇らせ俯くアヤメ。その姿を見るシャクルは、なぜか鼻で1つ笑った。
「何暗くなってんだよ。よかったじゃねぇか」
「よかったって…私がマザーを使えなかったら、冥王とだって――…」
「力が0になった訳じゃねぇんだろ?だったら可能性も0じゃない。終わったみたいな顔すんな」
「…シャクル…」
再び鼻で1つ笑い、リーシェを見るシャクル。
「アヤメのマザー、あとどのくらいなんだ?」
「どのくらいって…どう表現していいのかわからないけど」
リーシェは首を傾げながら片手を上げ、人差し指と親指をつけたOKサインを作る。だがそのつけた指は1~2ミリ程離れていた。
「手を広げた状態が発動レベルなら、彼女のマザー量はこのくらいよ」
「私のマザー、そんなに少ないんですか…?」
「えぇ。消えないのが不思議なくらいよ」
「お前への期待度と同じくらいだな」
「なっ、なにをーっ!」
「0じゃないなら頑張って絞り出せ」
「ど…どうやってよ?」
「俺が知るかバーカ」
「また『バカ』って言ったなーっ」
「アホの方がよかったか?」
「どっちも同じだーっ」
この2人のやり取りに、リーシェはキョトンとした表情でアラーケを見、「いつもこうなの?」っと首を傾げた。アラーケはケラケラと笑って数回頷き返す。
アヤメはシャクルに詰め寄るが、頭を押さえられ、届かぬパンチをブンブンとさせているだけ。当のシャクルは冷静なままに再び口を開く。
「とにかく、アヤメのマザーについては、カムラに会って話しを聞いてからだな。ちょうどサカンドラに向かってる訳だしな」
そう言ってシャクルは押さえたアヤメの頭から手を離し、その手でアヤメの鼻をつねる。悲鳴と共にアヤメのパンチは止まり、そのタイミングで縁から体を離し歩き出すシャクル。
「んじゃ、俺はまた寝るわ。まだ体がダルくてしょうがねぇ…」
するとリーシェも軽く背伸びをしてシャクルに続く。
「ワタシも休むわ。まだ本調子に戻ってないしね」
「お前らも休める時は休んどけよ。特にアヤメはしっかり寝ないと、リーシェに抜かされたまんまだぞー」
「へ?な、何を?抜かされたままって何をよ――…って行っちゃったし」
するとアラーケも立ち上がり「おれらも休もう」っと、ぐ~っと背伸びをする。
「たぶん、スタイル的なやつでしょ?寝る子は育つから♪」
「うっ、うるさいなぁ…私はまだ成長期なのー。どうせリーシェだってミネアくらいのお姉さんなんでしょ。私はこれからなのー」
「大丈夫大丈夫、アヤメちゃんは今のままで十分可愛いからさ」
「いやんアラーケったら♪肩でも揉んで上げようかしらぁ~?」
「あ、大丈夫。こってないから」
「そこだけ真面目かーっ!」
そうして一夜が明け、空に朝日が顔を出しはじめた頃…軍艦の前方には無人島カラの姿が。地底都市サカンドラの第2の入口がある島が見えていたのだ。
コンコン!
するとアヤメ達の休む部屋の扉がノックされた。その音に目を覚ますシャクルにミネア、リーシェの3人。
「――…ん…」
「…誰でしょうか?」
目を擦りながら、ミネアがベッドから降りて扉に向かう。そして扉を開けると、目の前にはリグルの姿が。
「あ、おはようございます、リグル様」
「おはようございます。朝早くにすみません、入っても大丈夫でしょうか?」
「はい、どうぞ」
「失礼します」
ミネアが開く扉を通り、部屋に入るリグル。
「おーリグル。どうかしたのか?」
「あぁ。カラにもうすぐ到着する。そろそろ降りる準備をしてくれ」
「そうか。わかった」
頷き立ち上がるシャクル。追ってリーシェも立ち上がり、グっと背伸びをする。
「アヤメ、起きて下さい。アヤメ」
ミネアは未だ夢の中のアヤメを起こそうと、体を揺するが……
「ん~…むにゃ…むにゃ…」
…案の定起きない。
「アラーケ。キリ」
「んがぁっ…ぐぅ~…」
「ZZZ~…」
「はぁ~…ったくコイツらもかよ…」
「全くもう…寝坊助さんなお姫様ですね、アヤメは」
そう言うミネアはアヤメの鼻をつまむ。するとアヤメは呼吸がままならないのか、時折手足をピクつかせ、「ふがっ!…ふがっ!」っとなって……
「――…っ、ぶはっ!」
起きた。
起きたアヤメは、息を乱しながら辺りをキョロキョロ。
「おはようございます、アヤメ」
「…あ、ミネア。おはよ」
笑顔で挨拶を交わす2人に、リグルはポカーン。
「主君への起し方じゃない…」
「うっし。じゃあアラーケ起すぞー?」
っと言って、アラーケのベッド脇で拳を鳴らすシャクル。するとリーシェはキリのベッドに歩み寄っていく。
「ならワタシはモルハスのおじ様かしらね」
その光景に未だポカーンのリグル。
「お、おい…何をする気な――…」
「せぇ~のっ!」
「おっ、おい!!」
「ッ!?…ふぎゃぁあぁぁぁ~ッ!!!!」
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