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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.08 奪還
91/122

P.92 笑顔の帰還(3)

 砂浜で休むシャクル達の輪に、未だ入れぬアヤメ。そのアヤメにシャクル達の視線が集まる。数メートル離れた位置で俯いたまま立つのアヤメ。



「…何やってんだ?アヤメ。せっかく助かったのに辛気臭い顔しやがって…」



砂浜に寝そべったシャクルは、あくびをしながらアヤメを見上げている。するとその隣に座るミネアが、笑顔でアヤメに向かい手招いてみせた。



「そうですよアヤメ。早くこちらに来ないと、シャクルが寂しがってしまいますよー」

「おいコラ。誰が寂しがるかよ」

「んもォ~シャクル君ったらテレちゃって、きゃわうぃうぃ~♪」

「アラーケ、俺疲れてんだ…スルーでいいか…?」

「それ1番イヤな返しやん!『?』つけちゃダメよ!『いいよ』も『かまってよ』もどっちも悲しいわ!」

「ならオレがやってやろうか?」



なぜか拳を鳴らすキリ。表情もなぜか晴れやかな笑顔。



「まだ生きていたいです、ボクちゃん」

「じゃあワタシが()る?」



そしてなぜか槍を手にするリーシェ。表情もなぜか楽しそうな笑顔。



「そいつぁー『やる』違いよ!何よこのノリノリな新顔ちゃん!文章の力は怖いわねーっ!」

「久しぶりの登場ですから気合い十分ね?アラーケ」

「そーそー、たださえ忘れられてきてたから――…ってオーイ!ちゃんと活躍したでしょーがミネアちゃーん!」



そう言いながら笑い合うシャクル達。皆傷つき、血に染まったボロボロの姿。アヤメは1歩前に踏み出すも、また立ち止まり俯く。



「皆…こんなにまでなって……私の事助けてくれて…」



言葉と共に溢れ出てくる涙。必死に堪え前を向こうとするが、込み上げてくる涙と感情に、頭を上げられぬアヤメ。


するとシャクルは、「いてて」と言いながらゆっくりと立ち上がり、アヤメに歩み寄っていく。そして俯き涙を流すアヤメの顔に手を伸ばし――…



「鼻ちょうちん」




 パンっ!




「ふわぁ!?」



突如目の前で何かが破裂し、驚き顔を上げるアヤメ。すると目の前には人差し指をこちらに向け、ボーっとさせた表情を向けるシャクルがいた。



「シャクル…?」

「泣くならもっとしおらしく泣け。鼻ちょうちんプカプカさせやがって…ガキくせぇ……あ、ガキだったな、お前」

「っ…んなっ!?な、何を~!」



っとシャクルに詰め寄る瞬間、再びアヤメの鼻からプク~っと鼻ちょうちんが生まれ――…




 パンっ!




「ふぎゅ!」



今度は鼻ちょうちんを割って貫通してきたシャクルの指が、アヤメの鼻を小突く。



「汚ねぇよ…」

「………」



するとシャクルの口元が、クスっと笑う。



「…バ~カ」



なぜか優しく聞こえるシャクルの「バ~カ」が、アヤメの涙のスイッチを再び入れた。



「ふ…ふぇ~ん!しゃ~ぐりぅ~(シャクル)!」



一気に溢れ出る涙をそのままに、シャクルに力いっぱい抱きつくアヤメ。だがその回した腕は、見事な程にシャクルの傷を押し潰す。



「ッ、いっ…!!はっ、離れろバカ!」

「いやだ~!離れな~い!」



痛みに思わず声を上げるシャクルだが、アヤメは更に強くその体を抱き締めた。



「だったら腕!腕だけ外せ!傷口に当たってんだバカ!!」

「ほえ?傷口?……っ!ごっ、ごめんシャクル!」



ようやく状況を理解したアヤメは、慌ててシャクルから身を離す。するとアヤメの顔や衣服には、シャクルの血がべっとりと…シャクルの衣服には、アヤメの鼻から伸びたキラキラ輝く鼻水がべったりと。



「きゃーっ!!血ぃーっ!!」

「だぁーっ!!きったねぇなバカ!!」

「きっ、『汚い』って女の子に向かって言うなぁーっ!!そっちこそこの血!どうしてくれるのよ!」

「いやお前が抱きつくからだろ!つうかこの傷!9割お前がやった傷だっつうの!!」

「だったらごめん!!」

「キレながら謝んな!!」

「何よ!!バカシャクル!」

「何だ!!ボンクラアヤメ!」


挿絵(By みてみん)


額同士がブツかる程の距離で睨み合うアヤメとシャクル。すると離れた位置からたくさんの笑い声が聞こえてきた。その笑い声にアヤメとシャクルは、ハっと我に返ったように振り向いた。


振り向いた先…それは2人の姿を見て笑うミネア達。その奥ではリグル達も笑っている。


これにはさすがに恥ずかしくなった2人は、顔を赤らめて互いに背を向けた。



「ふふっ、あいかわらずですね?アヤメとシャクルは」

「そーそー、見せつけてくれんじゃ~ん♪」

「式にはオレも呼べよ」

「ちょっ、キリさん!」

「あら、ワタシもいいかしら?」

「リーシェ、お前まで乗っかんな…ったく…」



そう言いながらアヤメに視線を向けると、同じタイミングでアヤメも振り向いた。合わさる視線に驚き一瞬外すも、またも同時に振り向き合わさる視線。すると少々膨れっ面気味のアヤメが、視線を泳がせながら……



「ありがと…」

「は?」

「ありがと、って言ったの!…ふぎゅ!?」



言い放った直後、突然シャクルに鼻をつままれるアヤメ。



「だったら笑って言え。それに…俺だけに言うな」



そう言ってシャクルはアヤメの鼻をつまんだまま、無理矢理ミネア達の方を向かせ手を離す。


アヤメは引っ張られた鼻を押さえながらミネア達の姿を見回した。するとシャクルが後ろから「ほら」っと頭を小突いてくる。



「あ…あの…皆……怪我までして…私の事助けてくれて…本当にありがとうございました」



そう言ってアヤメは皆に向かい深く頭を下げた。そして顔を上げると、すぐにミネアがクスっと笑い口を開く。



「何を言っているんですかアヤメ」

「え?何って…助けてくれたお礼を――…」

「何だよ姫さん、礼ならオレはアレでいいぞ。バルハール大陸名物、ランティ城産のバラ酒。あ、ただし樽でな」

「名物ならワタシは食べ物がいいわ。例えばブタフグ鍋とか。父も好きなのよ」

「お、いいねぇ!バラ酒に合ういいチョイスだ、お嬢さん」

「でしたらわたしがお作り致しますよ。材料があればですが」



アヤメを他所に盛り上がるミネア達。戸惑う表情のアヤメはシャクルに向いた。するとシャクルもミネアのようにクスっと笑い、アヤメの頭に手を置いた。



「俺らは仲間として当たり前の事しただけだ。礼なんて要らねぇって」

「シャクル、でも…」

「俺らが聞きたいのは礼じゃねぇ。帰ってきた挨拶しろってちゃんと……笑って、な?」

「…うん…わかった…」



そう言うと、瞳と頬に残る涙を拭い、笑みを見せるアヤメ。



「おっ、イイね~!やっぱアヤメちゃんは笑顔が似合うよ」

「アラーケ…へへっ、ありがとう…」

「『ありがとう』じゃなくてよ、ほらアヤメ」

「うん…」



1度シャクルを見て頷き、再び皆に向く。そしてニッコリと満面の笑みでVサイン。



「皆、ただいま!」

「おっかえりーっ!アヤメちゃ~ん!」

「おかえりなさい、アヤメ」



笑顔で同じVサインを返すミネアとアラーケ。リーシェも微笑みながらVサイン。キリも親指を立てたGoodサインで笑みを返す。


するとミネアが何かを思い出したように手を叩く。



「あ、そうだシャクル」

「ん?俺?」

「シャクルからもアヤメに、『おかえりなさい』の"アレ"…またして上げたらいいんじゃないですか?」

「っ!?ちょっとミネア!」

「なっ、何言ってんだよ!?お前!!」

「あらぁ~?何を慌ててるんです?だってあの時ぃ~…」



何やらニヤついた表情を浮かべて空を見上げるミネア。



「あの時って、ちょっと待て!!アレはコイツが勝手に――…!」

「かっ、勝手じゃないわよ!!シャクルの方から来たんじゃないの!!」

「えっ?わたしからはアヤメが――…」

「あぁ~!!これ以上喋っちゃダメーっ!!」

「え?何なに?ミネアちゃん、何?」

「あの慌てぶり、気になるわね」

「コイツら何かしたのか?」

「実はですね――…」



「「言うなぁぁ~~っ!!!!」」

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