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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.08 奪還
90/122

P.090 笑顔の帰還(2)

 全てが終わり、静かな波の音がだけが響き渡る大聖堂ザーバス前の砂浜。アヤメ達一行とリグル、そしてカーレンにユーネ。ブレゴと生き残った味方の軍が立つ。



「ふぅ~…姫様も助け出した事だ…ひとまず一件落着ってかぁ…」



そう言いながら砂浜に大の字に寝そべるキリ。



「さすがに30越えたオッサンにはしんどいモンだぜ、こりゃ~…」



すると、落ち着き合流していたミネアも続くように座り込む。



「何だか急に気が抜けちゃいましたね…」



追うようにシャクル、リーシェも共に腰を降ろす。



「だな…俺もさすがにバテたぜ」

「ホントね。今すぐベッドに入りたい気分だわ」



その光景に、一定の距離をおいていたアヤメが俯きながら呟く。



「本当に…ありがとう……皆…」






 そのアヤメ達より少し離れた位置に立つリグル、ユーネ、カーレンの3人。



「カーレン隊長、姉さん。本当に何とお礼を言っていいのか…本当にありがとうございました」

「礼はよい、リグル副隊長。マーズ隊長の事は、我々も個人的に追っていてな、これで確証となった」

「知っていたんですか?マーズ隊長の事…」



カーレンはリグルを見ながら1度頷き、その視線をユーネに向けた。



「今回の一件については、帝国本部へとの報告する。書類を任せられるか?バイスン小隊長」

「はい、任せて下さ――…」

「いえ、それは待って下さい」



言葉を切られ、意気揚々と敬礼をしようとしたままコケるユーネ。



「何言ってんのよ?マーズ隊長の謀反は本部に報告しないといけない事実でしょ!?」

「確かに……ですが、今現にマーズ=クレイサーとしての立場は…」

「団長閣下、っという訳か」

「はい。報告した所で、結果報告先は団長閣下です」

「意味無しか……じゃあ私達の立場も…?」

「そこは相手の出方を待ちましょう。しかし…」



2人に向かい深々と頭を下げるリグル。



「何よ?また…」

「立場上、我々の行為こそ謀反ととられるでしょう。それを知った上で御助力を頂けた事……感謝と共に、申し訳ない気持ちにあり――…」

「リグル副隊長」

「は、はい?」

「よい」

「しっ、しかし…」

「よいと言っておる。このカーレン、ただ要請に応え動いたまで…己の道だ」



そう言い背を向け歩き出すカーレン。



「カーレン隊長!!」

「待った!」



追おうとするリグルの腕を掴むユーネ。



「…いいのよ」



振り返る先、微笑みを浮かべたユーネがいた。



「『よい』って言ってんだから、よいのよ、リグル。それに私だってよい!ってもんよ」

「ですが姉さん…」

「何を言いたいかくらいわかってるわよ。でもさ、アンタは私の弟…それ以上の理由は要らないでしょ?」

「姉さん…」

「書状を見てから慌てて隊長に知らせたわ。そしたらヒドいんだよ!隊長ったらさ~…」




……………………………




………………………




『隊長!すぐにでも救援部隊の派遣をお願いします!!もちろん私もその隊に――…』

『焦るな、バイスン小隊長』

『しかし!この書状はおと――…あ、いや…リグル副隊長からの緊急を要する救援内容で、ランティ王家の姫君までもが――…』

『バイスン小隊長!!』

『ッ!?』

『お主は帝国兵を、己の私情で動かすつもりなのか?』

『私情って…私はただ!』

『弟だから、が第一の理由であろう?』

『…はい。リグル副隊長は決して嘘は言いません。ましてや信頼するマーズ隊長を疑うような書状…仮に偽装であっても、私を巻き込むような事は…』

『信頼は、時に大きな落とし穴を生み出す』

『…?』

『ランティ国の件は確認を取り動く。それでもその書状を信じ、行くと言うのなら。帝国兵の名を捨てる覚悟はあるのか?』

『………』

『覚悟があるなら行け……そして2度と姿を見せるでない』

『…わかりました。行きます』

『………』

『行かぬ道…これが帝国兵として答えなら、私は兵を捨てます。でも弟が助けを求めてる。それ以外に(わたし)というものが行く事への理由はありませんから…これが私の答えです』

『そうか、わかった。ならば…』

『?』

『未熟な部下の指導は、上司の役目』

『隊…長…?』

『良いように言ったつもりだろうが、ただの理想バカの言葉だな…これでは戦場は生き抜けぬ』

『っ…!』

『さぁ行くぞ。汚名を背負うのは我らだけで十分だ……足りるか?』

『えっ…?』

『足りるのかと聞いておる』

『は、はい!ありがとうございます!!』




……………………………




………………………




「マーズ隊長の事知ってたのに、私にカマかけたんだからぁーっ!知ってるならビビらせる事言わないでよね、って感じよ」



そう言って頬を膨らませ腕を組み、遠ざかっていくカーレンの背中を見るユーネ。



「それはカーレン隊長が、姉さんをこの一件に関わらせない為だったのかもしれませんね…」

「ん~…そうなのかなぁ…」

「それなのに僕は…何も考えないで姉さんを巻き込んでしまった…」

「………」

「僕はやっぱりまだ子供なんですね…姉離れが出来てない…」



するとユーネはリグルの目の前に3本の指を立てて見せる。



「ならやっぱりケーキ…」



そう言いながら指を1本追加させ、4本にしてニッコリ笑う。



「4ホールで勘弁して上げるわよ~♪」

「えっ…?」

「私はリグルのお姉ちゃんなんだから、頼ってくれた方が嬉しいんだからね」

「な、なら何で追加に…?」

「『姉離れ』とか言い出すからよ」

「はい?」

「家族は私とあんたしかいないのよ?離れちゃダメ。なのに離れようとしたからよー」

「ハハっ…了解です、姉さん」

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