P.085 勝利へ(2)
「だァァァッ!!」
「ぬんッ!!」
ユーネの拳、カーレンの薙刀がマーズ隊兵士達を次々に吹き飛ばしていく。
「な、何て強さだ…」
「怯むな!!砲撃を続けろ!!」
「弓矢隊前!!」
「おのれ…」
「撃てェェェッ!!」
スドォォォォォンッ!!!!
2隻の軍艦から放たれる砲撃が、大聖堂ザーバスの建物を破壊していく中、その軍艦から兵士が次々と砂浜に降り立ち向かってくる。
「反逆者共はまだ建物の中だ!建物もろとも焼き払え!!」
「ちょっとアンタ達!砲撃をヤメなさい!!まだ中にリグルがいるの――…ってうわぁ!!」
咄嗟に駆け出すユーネの肩を掴み止めるカーレン。
「ならん!!我らが正門を離れ、進入を許す訳にはいかぬ!!」
「でも!」
「隙だらけだァ!!」
向かい合う2人に数人の兵士が斬りかかる。瞬時に構えるカーレンだが、その前に飛び出したのはユーネ。
「どこが隙だらけよォ!!」
滞空のまま一瞬で間合いを詰め、拳を振り切るユーネ。顔面に炸裂の拳は止まらず、残る兵士を巻き込み吹き飛ばす。
「どあぁッ!!」
「邪魔なのよ!アンタらァ!!」
ズドォォォォンッ!!
しかし無情にも放たれていく砲撃。
「ちょっとまたぁ…!!」
「いちいち動揺するなバイスン小隊長!我らに出来る仕事はこの門の死守だ!!」
「は、はい!!」
再び構えるカーレンとユーネ。
「あんたは絶対私が守るからね…リグル」
砲撃の振動はアヤメを救出した後の空間にも伝わっていた。
「何ですか、この揺れは…」
「さぁな…下で何かが起きてやがんのか…」
くすむ金の床が揺れる度、足場が崩れるのでは!?っというような軋む音がする。
「何が起きてんのか知らねぇが、ヤバそうだなこれは」
「確かにそうですね…早くここから脱出しましょう」
「だな。行くぞアヤメ」
「あ、うん」
シャクルの声に頷くアヤメだが、すぐに俯き足を止めた。そんなアヤメに、ミネアと共に動き出していたシャクルが気づき振り返る。
「どうした?アヤメ」
「どこか痛むんですか?」
「…ナックの事…」
俯いたまま口ごもるアヤメ。言いたい事はわかっていた。シャクルはアヤメに歩み寄り、伏せる頭を優しく手を置いた。
「…戦わなきゃいけないの…?」
「あぁ…」
するとシャクルの手を乗せたままのアヤメの頭が上がり、今にも泣き出しそうな視線がシャクルに向けられる。
「そんなのイヤだよ…ナックとなんか、戦いたくないよ…」
「………」
「シャクルだってそうでしょ?シャクルにとって、ナックは家族なんでしょ?だったら…」
「…アヤメ」
名を呼びながらアヤメの体を抱き寄せた。一瞬キョトンとするも、その胸に頬を寄せるアヤメ。
「本音を言えば、俺だって戦いたくはない…でもな、家族だからこそ…俺がやらなきゃいけない事なんだ…」
「………」
「俺がもし、この先道に迷い、倒れそうな時は支えてくれ…」
「シャクル…」
「これからの戦いは、お前の支えが無ければ乗り越えられない…」
今までとは違う、小さな"弱さ"を見せたシャクル。アヤメを抱く腕が、少し強く体を抱き締める。アヤメは目を閉じシャクルの体に腕を回した。
「うん…わかった…」
再びシャクルの手がアヤメの頭を撫で、そして視線はミネアに向いた。合わせた視線に、ミネアは悟ったように頷いてみせる。
「大丈夫です…わたしもいますから」
「頼むわ…ミネア…」
本当の意味での仲間と信頼…そんな気持ちが詰まったシャクルの表情に、ミネアも優しく微笑み返す。
「…はい」
ズウゥゥゥゥゥン!!!!
互いに向き合う中、再び襲う砲撃の振動に3人の立つ広間が大きく揺れ、ゆっくりと傾きはじめた。
「マズいっ…!話してる場合じゃねぇ!走るぞアヤメ!ミネア!」
「う、うん!」
「はい!」
出口のある螺旋の下り坂に向かい走り出す3人だったが、周囲の薄い赤の靄が突如ガラスにヒビが入ったように白い歪な筋を走らせた。
「な、何よこれぇ!?」
「まさか空間が…崩れていくのでは…!?」
「嘘だろオイ!あのバカみたいに長い坂下って行かなきゃなんねぇのに…間に合うのかよコレ!?」
足場は既に10度以上は傾いているであろう。アヤメとの戦いで削れた破片が床をゆっくりではなく、転がり落ちていくようなもの。その破片に逆らうように、傾いた床を駆け上がっていく。
「うわぁ~あ~!もうここが下り坂じゃんかぁ~!」
「上り坂ですってアヤメ!」
「どっちでもいいから走れ2人共!」
ズウゥゥゥゥンッ!!
再び大きな衝撃が空間を襲い――…
…――ビキッ!! バギバギバギッ!!!!
激しい縦揺れと共に広間を支えていた螺旋の坂が割れ、支えを無くした広間が一気に傾き落下する。
「うわぁぁぁぁぁぁッ!!」
「いやぁぁぁぁぁッ!!」
垂直になりゆく足場と共に落下していくアヤメ達。
「くそっ…!」
落下の中、シャクルの下ろした視線の先に映るもの――…
「っ!ミネア下だ!!」
「えっ!?…あっ、あれは!」




