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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.08 奪還
84/122

P.084 勝利へ(1)


 ガギィィィィンッ!!




 場面は移り…大聖堂ザーバス大階段下のホール。響き渡る音と共に1本の剣が宙を舞う。クルクルと回転し、床に落ちる剣の横…片膝をつき、荒い息遣いのリグルがいた。乱す息遣いに、汗や血と共に膝に置く手まで床にズレ落ちる。


その向かいに立つのはネイサー。だらりと下げた五指より伸びる水の刃を揺らし、一筋の汗を光らせリグルを見下ろしている。



「ふぅ…ここまで粘られるとは、正直予想外ですよ。君は本当に強くなった」



そう言ってリグルに歩み寄り、右手五指の刃を目前に突きつける。



「…やはり貴方には勝てないようですね…」

「この本来の水流刀(すいりゅうとう)を解放した状態で、1分ともった相手はいない。それを10分以上も…それに、けっこう本気だったのですがね…」

「それでも…負けには変わりません…」

「でも、十分評価に値しますよ。君は強い」

「出来ればその台詞…"隊長"としての貴方から聞きたかったですよ」

「それは残念…」



苦笑いで俯くリグルに、人差し指のみになった刃をゆっくりと首筋に当てた。


すると……



「待ちなァ!!」



突然響く声にネイサーの刃が止まり、リグルと共に声の方に向く。その視線の先に立つのはキリ。そして並ぶリーシェの姿。辺りを見渡したネイサーの目が徐々に見開いていく。



「これはこれは…」

「宮殿王…リーシェ…さん…」



2人を囲んでいたはずの信者達が全て地に伏せていた。誰1人立っている者はいない。立っているのはキリとリーシェのみ。



「どうかしら?…このゲーム、ワタシ達の勝ちね」

「さぁ判定は?首領さんよォ」

「………」



しばらく2人を見つめるネイサーは小さく息を吐き、人差し指のみの水の刃を解除した。



「…お見事です。このゲーム、あなた方の勝ちのようですね」

「あらそう。だったら、ね?」



リーシェは頬を伝う血を指で拭い、キリを見上げた。キリもチラっと視線をリーシェに向け、口元に笑みを作りネイサーを見る。



「あぁ…今から勝者のオレらに、景品の贈呈式だな」

「例えば…あなたの首、とかかしら?」



そう言って2人は武器の切っ先をネイサーに向けた。



「ほう……ならばこの敗者復活戦後に贈呈致しますよ。それまでに君達が生きていればね」



待っていましたと言わんばかりの表情で両手を突き出し、再び両手に10の水流刀(すいりゅうとう)を発動させる。



「その怪我です。2人同時で構いません」

「あぁそうかい…なら遠慮なくいかしてもらうか?お嬢さん」

「えぇ。敗者復活戦からの逆転勝利っていうのも、なかなか格好いいわね」



三者が臨戦態勢に入った…その瞬間、突如3人の間にリュカが舞い降りた。



「リュ、リュカ様…?」

「楽しんでる所ごめんよ、ネイサー。もう時は満ちた…行こう」



そう言ってキリ達に背を向けネイサーに並ぶ。



「リュカ様、『満ちた』と言いますと…?」

「もうこの地に用は無くなった。本来の目的は達成したからね」

「本来の目的…だと?」

「いったい何の事かしらね」



するとリュカは一瞬2人に振り返り、再びネイサーに向く。



「目的は達成だ。もうこの戦いに意味は無いからさ」

「達成と言う事は、これでようやく…ですか?」

「いやまだだよ。まだ源珠(げんじゅ)が集まっちゃいない」

「ッ…源珠(げんじゅ)だと…!?」



源珠(げんじゅ)』に反応するキリが1歩踏み出した。するとリュカがキリに視線を向け両手を上げる。



「おっと、お喋りが過ぎたようだね…早く行こうネイサー。もう時期ここも危なくなっちゃうからね」

「な、何だと…」

「危ない、ですって?」




 …―――ズウゥゥゥゥゥン!!!!




すると突然激しい縦揺れが建物を襲う。


「なっ、何だこの揺れは!?」



揺れの衝撃は1度ではない。不定のタイミングで幾度と建物を襲った。ガタガタと揺れる窓を見るリグル。



「これは…まさか砲撃か…?」

「察しがいいね。さすが帝国兵だね。何か邪魔してる2人がいるみたいだけど…下の状況はもう、君達の敗北は必至だよ。わかるだろ?」



リュカの視線に、無言で疑問の眼差しを向けるリグル。するとネイサーが再び仮面をつけながらリグルを見た。



「建物に攻め込み、我々を追いつめたつもりが、背後をとられ逆に追い込まれたという事ですよ」

「どういう事ですか…」

「言ったはずですよ、『この地にもう用はない』と」

「そして邪魔してる2人も教えて上げるよ。緑の軍服の男と女さ」

「緑の…?まさかっ…姉さん…!?」

「おやおや。持つべきものは家族だという事だね、リグル君」



ネイサーは怪しく微笑みリグルを見る。するとリュカがネイサーの肩を叩き、背を向け歩き出す。



「ほら行くよ、ネイサー」

「はい…お供致します」

「まっ、待てネイサー!!」



立ち上がり叫ぶリグルに、一切振り返る事無くリュカとネイサーは共に姿を消した。



「待てネイサー!!」

「よせリグル!相手方から消えてくれんなら、他に優先する事があんだろ」

「…っ……そうですね、すみません」




 ズウゥゥゥゥンッ!!




再び強い衝撃に揺れる建物。



「うおっ、またかよ!」

「このままでは建物ごと崩壊してしまう…!」

「急いだ方が良さそうね」

「チっ…シャクルとミネアも戻ってねぇってのによ…」




 ズウゥゥゥゥゥンッ!!




「くっ…こいつは砲撃を何とかするしかねぇって訳かよ…おい、下に急ぐぞ!!」

「待って下さい!!」



下に向かい駆け出そうとしたキリをリグルが呼び止める。



「下に行くのは自分の役目です!宮殿王、貴方はシャクル=ファイントとミネア=リステナを追って下さい」

「じゃあワタシはどちらに行けばイイのかしら?」

「だったらお嬢さんはリグルと行きな。姫さん共々迎えに行って、オレもすぐに合流する」

「はい、よろしくお願いします」



互いに頷き合い、キリは大階段を駆け上がっていく。リグルとリーシェも視線を合わせ、1階大広間に繋がる廊下を走った。



「姉さん……ありがとう、今行きます!」

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